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週末は異世界で~俺的伝説の作り方~  作者: 三毛猫
閑話「それぞれのエンディング」
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はじめての音 その2

 全員の準備が終わって、いざ出発というところで気が付いた。今日はルラレラ一緒じゃないんだよな。

「……ええっと、ルラレラが一緒じゃないから、駅から電車かな?」

「あ、やり方教えてもらったから、私が電車扉つくるよー」

 そう言ってティアが俺の部屋のベランダへ続くガラス戸にぺたりと手を当てると、向こう側が謎の異空間になった。

「おおう。なんかお前、ほんとに神様じみてきたなー」

 元「俺」なのにね。こういう非常識なことを当たり前にやるようになるとは思わなかったなー。

「んふー。まあね? 寧子さんにもいろいろ教えてもらったしー」

「……あんま余計なことは教えてもらうなよ? あのひと、初心者だからって面白がってなんかやらかしそうだし」

 あれだ、女神はぱんつ穿かないとかってあの人の趣味押し付けてくるとかな。

「いいやー? 寧子さん、教師役としてはすっごい真面目で厳しいよ? いつものおちゃらけたノリじゃなくって、神様の心構えみたいなのから講義してくれた」

「ふーん」

 あの寧子さんがねぇ。

 まあ、俺の方にはあんま関係なさそうだし。ティアに任せておくとしよう。

「じゃ、行こうか。みぃちゃん、留守はお願いね? ごはんとかはルラにお願いしたから」

「んー、わかったのです」

 みぃちゃんは相変わらずゲームに張り付いたままだった。

「じゃ、ルラレラもたのむなー」

「ひゃっはー! まかされたのー!」

「だいじょうぶなのー」

 両手をあげて返事をするルラレラの頭をなでて、俺たちはティアの創った電車扉をくぐってルラレラ世界に向かった。



 ――道中は特に何もなく、ガタゴトといつものように電車に揺られてルラレラ世界に着いた。

「んー、珍しいな」

 いつもは、冒険日和のよく晴れた天気なのに。今日は少しばかり空模様が荒れていて、ぱらぱらと雨が降っていた。まだそこまで雨足は強くないが雨粒が結構大きい。さらには上空の雲の流れが速く、遠くには厚い雨雲の姿が見える。これは大雨になりそうだ。

 ……これはちょっと、外に出かけるのはやめた方がいいかもな。

 雨具の用意はしていなくてどうしようかと思っていたら、闇神メラさんがちょっと和風の紙で出来た傘を差して俺たちを出迎えてくれた。

「いらっしゃいませ、勇者様に女神様」

「ああ、どうも」

 代表して頭を下げると、控えていた巫女さんたちが傘を渡してくれたのでありがたく受け取る。神殿はすぐそこなんだが、雨粒が大きいのでびしょぬれになりそうだったから傘はありがたかった。

 全員に傘を手渡しして、電車から降りる。

「勇者様たちにお客様がお見えですよ」

 歩きながらメラさんが言った。

「ああ、リーアのご両親のことですよね?」

「いえ、トリストリーアちゃんのご両親もですが、光神神殿からキィさんとディエンテッタさんがお見えですよ。トリストリーアちゃんのご両親の方は、今街の宿に使いを出していますから、もうしばらくかかります」

「あ、了解です」

 メイドのキィさんに、偽妖精のディエか。何かあったのかな?。



「――帰る方法が見つかったんですかっ!?」

「ええ、それで自分の世界に帰る前に、お世話になった方たちにご挨拶をしてまわっています」

 闇神神殿で待っていたキィさんは、再会の挨拶もそこそこにお別れの挨拶を告げて来た。

 何があったのかと思っていたら、なんと自分の世界に戻る方法がわかったらしい。

 確か以前聞いた話では、何かの爆発に巻き込まれて気が付いたらこの世界に居た、ということだったが。寧子さんにもディエやキィさんの世界に関する知識は無かったようだし、そんなあっさりと帰る手段が見つかるだなんて思いもしなかった。

「えとねー、この世界って、わたしが見ている夢なの。だから、わたしが目を覚ましたら元の世界に戻るはずなんだー!」

 ディエが、真面目な顔で小さな胸を張ってそう言った。

 そんなバカなことあるわけがない、と思って、すぐにその考えを自分で否定する。

 俺自身が、ユイの記憶から生み出された世界からユイとユマをつれてくるなんてムチャクチャをやっている。ディエの見た夢が、たまたまセラ世界やルラレラ世界とつながってしまうことだってあるのかもしれない。

 何しろ、セカイツークールで創られた世界って、妄想とか空想みたいなものでもあるし。夢もきっと似たようなものだろう。

「……でも、大丈夫なの?」

 ティアが心配そうにディエのほっぺをつついた。

「もし、それが本当だとして、前聞いた話だと爆弾の爆発に巻き込まれてこっちに来ちゃったっぽいんでしょ? それって、目を覚ました瞬間にディエやキィちゃんが死ぬってことにならないの?」

 ディエが見ている夢、というのが本当だったとして。それが死ぬ一瞬前の走馬灯のようなものだったりした場合。戻った瞬間にディエたちが死ぬことになる。それとも、俺たちが異世界で過ごした時間が現実世界にもある程度反映されるように、夢から覚めたら時間が過ぎている、なんて感じなんだろうか?

「えっとねー、わたし、きぃちゃんと話してて思い出したんだよ。その後の記憶・・・・・・。だから、たぶんだいじょーぶ」

 ディエがにぱっと笑って、ティアの顔に抱きついた。

 そういや、ディエは何でセラ世界に居たのか覚えてないっていってたっけ。でもってキィさんはおそらく爆発に巻き込まれた、というようなことを言っていた。だから、二人ともキィさんの言う爆発に巻き込まれて異世界転移した、と思っていたのだけれど。もしかして、二人がこっちに来ることになった原因は別々ってことなんだろうか。

「そっか、大丈夫ならいいんだけど。寂しくなるなー」

 空気を読まないというか読めないというか、ディエの脳天気な振る舞いにはいつも明るい気分にさせられた。キィさんのところに行った時にはいつでも会いにいけると思っていたが、寧子さんも把握していない異世界となると流石に気軽に行き来できないだろう。

「えへへー。わたしもちょっと寂しいけど、帰らないとコウさんがかわいそうだから」

「そっか、待ってる人が居るんだね」

「うん」

 コウさん、というのが誰かは知らないけれど、大切な人なんだろう。なら無理に引きとめるわけにも行かない。

「いろいろおいしーもの食べさせてくれてありがとね」

 ディエが、すーっと空中を飛んできて俺の頬に小さく口付けをした。

「ん、元気でな」

「……私もお別れのキスをすべきですか?」

 キィさんが無表情な顔で言ったが、丁重にお断りする。

 しばらく他愛のない話をして。

 ここが最後だったんですよ、というキィさんがディエを肩に乗せた。

「じゃあ、お別れです」

 キィさんが小さく手を振った。

「まったねー! って、また、があるのかな?」

「一応、ワールドパス渡しておくね」

 首をひねるディエに、ティアが定期っぽいカードをキィさんに手渡す。

「ありがとう、でも持ってけないかも? 夢の中から何かを持ち出すってたぶん無理かなー」

 小さく笑って、でも渡されたワールドパスをしっかりと抱えたディエが、こてん、とキィさんに頬を寄せた。

「じゃ、ばいばい」

「おう、じゃあな!」

 手を振った次の瞬間。ぱさり、とキィさんの来ていたメイド服だけが床に崩れ落ちた。

 ひらり、とディエが抱えていたはずのワールドパスが宙を舞って、同じく床に落ちる。

 ルラレラの電車扉や、スズのドア方式なんかと違って。いきなり消えてしまった。

 文字通り、夢から覚めたように。一瞬で二人は消えてしまった。

「……無事に帰れたんだよな?」

「そう信じるしかないでしょ?」

 ティアと顔を見合わせて。俺はディエたちは無事に帰れたのだと、そう祈った。

 しかし、下着まで残ってるみたいだけどキィさん戻ったらすっぱだかかなーとか、余計なことも考えながら。




 ディエとキィさんを見送った後。用事があるというりあちゃんと別れて、俺たちはしばらく神殿に用意されたいつもの部屋で休んでいた。少しばかり、ティアと同じ部屋にいるのは落ちつかなかったが、ティアの方は俺のことなんかまったく気にしていないようでベッドに転がってスマホをいじっていた。

 ……今度から部屋分けてもらった方がいいのかな。

 ティアの女神装束の脇からちらちらのぞくブラの紐っぽいのが微妙に気になる。意識する俺の方が悪いのだろうけど。

 リーアは、久しぶりに会える両親のことを考えているのか、落ち着かない様子でベッドをごろごろ転がっていた。以前、リーアに小船を押してもらって川を下ったときのことをぼんやり思い出す。あのとき、両親のことを語るリーアはとても楽しげで、仲が良いのだろうと思ったことを思い出した。

 リーアのご両親には、きちんと挨拶しとかなきゃなー。勝手に連れ出しちゃったわけだし。

 リーアが手紙を残してきたけど、時期的に読んだとは思えないし、何よりあの「おとなになりました」という簡潔な内容で闇神神殿に問い合わせてくることはないだろう。

 そうすると、この間の妖精大戦のゲームでやってた、わん子さんの番組のせいだろうな。ちび人魚さんたちもいっぱい映っていたし、あれでリーアのことを心配してたずねてきたのかもしれない。安心してもらえるように、ちゃんと説明しなきゃな。

 しかし。……ティアとリーアの関係はどう説明したらいいんだっ!?

 ぼんやりそんなこと考えていると、巫女さんが俺たちを呼びに来た。




 下半身が尾びれに変わるという種族的な特性により、飛沫族(スプラッシュ)というのは男性も女性も陸上ではスカートのような筒状の衣服を着用するせいだろうか。

「トリステッセラと申します」

「トリスエーナと申します」

 そう名乗った二人は、両方ともぱっと見では高校生くらいの美少女・・・にしか見えなかった。名乗った声ですらどちらも女声としか思えず、まるで歌声のように耳に心地よく響いた。

 二人ともリーアによく似た長い緑色の髪を特に手を加えず自然のままに肩の前後に流している。顔立ちもリーアによく似ていて、見た目の若さからご両親というよりは姉妹のようにしか見えなかった。

 ただ、後から名乗ったトリスエーナさんの方は、左腕が二の腕中ほどからなくなっていて、切断面に銀の装飾が施されていた。以前聞いた話では、海の方は強い魔物がでるというし、その生活の厳しさがわずかにうかがい知れた。

 リーアがそうであったように、本来はあまり衣服のようなものは身に着けないのだろう。どちらも布面積は控えめで、代わりに装飾品の類を多く身に着けている。

 薄着なのに男女の区別がつかないというのはまあつまり、どことは言わないが二人とも特定の箇所が控えめであるということでもあるのだが、控えめではあって二人とももないわけではないというのが不思議なところだ。

 ……って。あれ、まさか、リーアのご両親って両方女性だったりするのかな?

「~~♪」

 リーアが楽しげな声をあげ、ぱたぱたと両親に歩み寄って抱きついた。

 そして、先に名乗ったテリステッセラさんを指して、

『こっち、父』

 後に名乗った、隻腕のトリスエーナさんを指して。

『こっち、母』

 とホワイトボードに書いた。

 それから、今度はこっちに来て、ティアを指差し。

『こっちティア、リーアの嫁』

 そして俺を指差し。

『こっちタロウ、リーアの飼い主』

 爆弾発言をかました。


 そういやいろいろあって、リーアのことはペット扱いってことにしたんだっけっ!?

 慌てる俺が何か言おうとしたら。

 その前にリーアの父親が言った。


「――さっそくですが、娘を返していただきましょう」


 俺のせいなのかっ!?

 ディエ・キィEND。残るには好感度が足りなかった感じ。あと設定的にも。

 あとようやくリーアの両親出せました。

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