えぴろーぐ
すみません、遅くなりました。帰省前にあげるつもりだったんですが金曜までに半分しかかけなかったのデス。
――勝利の宴の翌日。朝食を済ました皆は、それぞれ帰ることになった。
「みなさん、いろいろありがとうございました」
ぺこりと頭を下げる。
「あんまたいしたこともできんかったけどなー」
サボリさんは小さく頭をかいた。
「なんかあったらまた呼ぶにゃー」
「フリーパス?だとかももっらたしな」
にゃるきりーさんとマジゲロが、小さく手を振った。
「次こそは俺の秘められた特殊能力が開花してだな、大活躍を……っ!」
クッコロ。あんたはマジでたいしたことしてないでしょーが。
一応、協力してくれたことは確かなので口に出しては言わないけど。
「あまりお役に立てず……すみません」
クマさんは謙虚にぺこりとお辞儀をした。
掲示板だと変な口調でわりとマニアックなことを言うクマさんだが、本人は普通の常識人でクッコロはちょっとクマさんを見習えと言いたい。
「ほんじゃなー」
「またにゃー」
「帰って掲示板にカキコしなきゃ」
神殿に設置された電車扉をくぐって、皆が車内に消えてゆく。
「なー、にーちゃんにねーちゃんたち、また来てくれるんだろォ?」
ちび人魚さんが、サボリさんに声をかけた。
「おう、リュエラちゃんたちもまたなー。今度はもうちっと落ち着いた感じで会えるとええなー」
サボリさんがにっかり笑って手を振ると。
「おぅ、またなっ!」
ぶんぶんと千切れそうなくらいにちび人魚さんが手を振り返した。
「ああ、ほんじゃなー」
手を振り替えしたサボリさんの背後で。
「事案発生の予感がするにゃー」
「サボリはロリコンだからな」
にゃるきりーさんとマジゲロがひそひそ話していたが、みんな無視したようだ。
「みなさん、ありがとうございました」
もう一度頭を下げて、掲示板組を見送った。
「いろいろ勉強になったの!」
「これで魔王が攻めてきても大丈夫なの!」
セラ世界の幼女女神、ティラちゃんとフィラちゃんは今回の私たちのゲームからいろいろ学んだようだ。メモ帳を片手に、ふんすーと鼻息荒く両手を上げてバンザイしていた。
「まあ、うちの方は閉じられた世界なんですよね? 魔王が攻めてくるとかないんじゃないの?」
真白さんが、あごに人差し指を当てて首をかしげる。
「……実際これまでに何度かヤバイのが来てるの」
「……ロラさんいなかったら3回くらいは確実にセカイが滅びてるの」
ティラちゃんとフィラちゃんが深くため息を吐いた。
「だから、ましろとまさとには、頑張って欲しいのっ!」
「お願い勇者さまなの!」
「んー、面倒そうですね。善処はしますよ?」
「もう、姉さんはまたそうやってからかうんだから」
真白さんが、おざなりに答えて、真人君が苦笑しながらなだめるように幼女女神の頭をなでた。
そういやロアさん、どこ行っちゃったんだろうな……。
「今回協力してもらいましたし、次そちらに何かあれば、今度は私が力を貸しますよ。だから
フィラちゃんとティラちゃんも安心してね」
私も手を伸ばして幼女女神ズの頭をなでる。うちのちみっこたちとはまた違った感じだ。
「あ、太郎さんはうちの子たちなでちゃダメですってばっ! うちのティラとフィラまで毒牙にかけるつもりですかっ!?」
真白さんに幼女女神たちをかっさらわれて、置き所のなくなった手が空中をさまよう。
「……毒牙はひどくないですか?」
「しかし少年。いや、今は女神殿か。自身の身の回りを見回してみて、胸に手を当ててよく考えてみたまえ。あなたのまわりは、幼女だらけだろう? 真白が警戒するのも当然というものだ」
ヴァルナさんが、そういう自分も幼女な格好のままちいさく肩をゆすって苦笑した。
「……ヴァルナさんも、ありがとうございました」
言わずもがななことにはあえて答えず、礼だけを言う。
「いやこちらにもいろいろ益はあった。シルヴィ殿との協力体制もうまくいきそうだしな」
「そうなんですか?」
何かやっていたのだろうか。ヴァラ族同士の情報交換みたいなことをやっていたのは知っているけれど。
ちょっと首をひねると、シルヴィが小さく手を振りながらやってきた。
「うむ。ルラ様レラ様の協力も必要だが、向こうとこちらに直通の回線を引いて直接やり取りをする計画があるのだ」
「へー」
シルヴィはいろいろやってるんだな。
「これは土産だ、面倒でなければレイルの迷宮の皆にも届けてやって欲しい」
「わんころもち……にゃ!?」
真白さんの肩に乗っていたニャアちゃんが、シルヴィの差し出した包みを見て声を上げた。
「試作品だ。こちらの迷宮で、みやげ物として売り出すつもりだ」
「ああ、ありがたくいただいていこう」
ヴァルナさんが受け取る。
「じゃあ、そろそろ私たちも帰りますね」
真白さんがそう言って、なぜか私にずいっと身を寄せてきた。
「……どうかしたの? ましろさん」
ちょっと近すぎるんだけど。なんで匂いでもかぐように顔寄せてくるんだろ。
「んー、勇者もいいけれど、女神っていうのもどうかなって、ちょっと思っただけです」
「寧子さんに言えば、セカイツクールを融通してくれるんじゃないかなと思うけど……」
「……たぶん、私は、向いてないかなー」
真白さんは小さく笑って、なぜか私の胸をつん、とつついた。
「ちょっと、あの、そう気安く触られると困るんですがっ!?」
「あはは、太郎さんは、女神も頑張ってくださいね?」
そう言って、真白さんたちはティラちゃんとフィラちゃんが創った電車扉の向こうに消えた。
「じゃ、こっちも帰ろっか☆キラッ」
光神ミラさんが、相変わらずウザい星を撒き散らしながら言った。
「キィさんはいろいろ巻き込んじゃってすみませんでした」
なんだかボーっとしているメイド姿のキィさんに声をかけると、キィさんはちょっと首を斜めにして「いえ」と首を横に振った。
シルヴィのダンジョンを手伝いに光神神殿から来ていて、今回のゲームに巻き込まれたわけだからこちらが悪いのだけれど。
「……いろいろあったおかげで、何かを、思い出したような気がします」
「そうですか」
「きぃちゃんは、忘れんぼうなのだー」
偽妖精さんなディエが、キィさんの頭の上にちょこんと腰掛けた。
「あ、そういやディエはどうするの? キィさんと一緒に行く?」
「うん。これまでお世話になりましたー。おねーさんありがとね!」
ディエが、ぶーんと飛んできて、私の頬にちゅ、と小さくキスをした。
「ん、ディエも元気でね」
「……ねー、はやくかえろー?」
あーちゃんはお疲れなようで、ミラさんの肩にぐったりと乗っていた。
「あーちゃんも、それじゃあね」
「ちびねこ勇者ちゃんによろしくいっといてー」
「じゃ、帰るよっ☆」
キラっと、無駄に星を振りまいて、ミラさんが西の街リグレットへと続く転移装置を起動した。
「……これで大体みんな帰っちゃったかな? 私たちもそろそろ帰りたいとこだけど」
ぐるりと周りを見回すと。
「にゃーですにゃー」
「にゃんくるにゃいさー」
直立歩行する猫が二匹、くるくると回りながら踊っていた。
「……あれ? えーっと、確かケットちゃんとシーちゃんだっけ?」
確かイコの召喚ユニットで。
あー。イコやマイちゃんたちが帰ったときには、猫妖精さんたちには移動係としてイモムシバスターズの方についてもらってたんだった。
……どうしよう?
ルラレラ世界にいてもらっても別にかまわないんだけれど。
妖精大戦のゲームは終了したわけだから、元の世界に自動で戻ったりはしないのかな?
んー、と考え込んでいると。
「えーっと、突然ごめんなさいっ!」
どこからか、声が聞こえて来て。
足元に、奇妙な魔方陣のようなものが浮かび上がった。
「……え、何?」
あわてて魔方陣から飛びのくと、魔方陣の描かれた床から人影が浮かび上がってきた。
「……って、マイちゃん? と、それに羽子さんと山伏くん、だっけ?」
「お久しぶりです、太郎さんっ! いろいろごめんなさいっ!」
マイちゃんが、ぺこり、と頭を下げた。
「……久しぶりってほどでもないけど。あー、もしかして時間ずれちゃってるのかな?」
それに、最後バタバタしていてすっかり意識から抜け落ちていたけれど、羽子さんと山伏くんはゆーりの魔方陣で一緒にマイちゃんの世界に行っちゃってたのか。
「あ、そうなんですか? こっちでは一週間ほど経ってるんですけど。本当はイコのこととか、つれてきちゃった羽子さんたちのこともあってすぐ戻ってるつもりだったんだけど、なんかいろいろあったみたいで……今日になっちゃいました」
「よくわからないけど、こっちじゃ昨日の話だよ」
それにイコの話?
あと、ゆーりは居ないみたいだけどマイちゃんが単独で異世界移動してきたんだろうか。
「猫のお面を被ったゆーりに、全部聞きました。あたし、魔方陣で帰ったときにてっきりイコも自分の世界に戻ったんだとばかりおもってて、でもそうじゃなかったって聞いて、あの、だから、ごめんなさい」
ぱたぱたと小鳥のように両手を動かしながら、マイちゃんがもう一度ぺこりと頭を下げた。
「そのことなら、もう大丈夫だから」
手を伸ばして、マイちゃんの頭をなでなでする。
「ところで、猫妖精さんたちはどうするの?」
「あ、ケットちゃんとシーちゃんですか?」
「うん」
「イコは、連れて行かなかったんですか?」
マイちゃんが首をかしげた。
どうやら、イコのことはあまり詳しく聞かされていないっぽい。
「んー、いろいろあってね」
イコは、マイちゃんでもある。猫ゆーりが詳しく話さなかったのなら、私も言うべきではないだろう。
しかし、変な白いケモノとか日本刀なんかも向こうに持って行ったんだよね。マイちゃんたちの世界ってああいうのありなんだろうか。
「一応、ゲーム中に手に入れた力はもとの世界でも有効なはずだよっ!」
幼女な寧子さんが、私の腰にぎゅうと抱きつきながら言った。
「けど、イコちゃんはたぶん、ゲームの記憶を猫ゆーりちゃんに消されちゃってるから、猫妖精さんのこと覚えてないかもねっ? マイちゃんが連れてったら?」
「え……? あ、はい。ケットちゃんたちがそれでいいなら、ですけど」
「にゃーですにゃー」
「おともしますにゃー」
猫妖精二人が、マイちゃんに駆け寄ってきてごろごろと喉を鳴らしながら頬をこすりつけた。
マイちゃんがひょいと両脇に猫妖精を抱えあげる。
「それじゃ、羽子さんもマモルくんも元気でね。みんなまたこっちにも遊びに来るから」
マイちゃんが、猫妖精を抱いたまま連れて来た二人に小さく手を振った。
「それじゃ太郎さんも。また遊びに来ますねっ! ゆーりが向こうから魔方陣つなぎっぱなしにしてるんで、ちょっと慌しいけどこれで帰りますっ!」
「うん、それじゃあ」
手を振り返すと、マイちゃんがもう一度手(というかぶら下げた猫妖精)をふって、魔方陣とともに消えた。
羽子さんと山伏くんはちょとだけ寂しそうに息を吐いた後、一礼して闇神神殿を出て行った。
「……それじゃこっちも落ち着いたみたいだし、私たちもいったん帰りましょうか」
マイちゃんたちを見送った後、帰るみんなに声をかける。
戻る予定なのは、私、ルラレラ、りーあにみぃちゃん、ユマ・ユラ・ユイだっけ?
結構、大所帯だよね。
「タロウ様、私もよろしいでしょうか」
りあちゃんが、私の袖を引いた。
「あ、うん。だいじょぶ。寧子さん、空間拡張の許可だしてくれますよね?」
腰にくっついたままの幼女な寧子さんの頭をなでなですると、「くふふ」と不気味な声を上げて寧子さんが頷いた。これまでは物理的な部屋の狭さという条件もあって何人もは住めなかったけれど、今後は何人でもおっけーなのだー。
あ、すらちゃんとかにも声かけてみようかな。
まおちゃんと一緒に暮らすのが難しいからってこっちにいるけど、うちに呼ぶのも悪くないかな?
すらちゃんの姿を探すと、シルヴィとなにやら話をしているようだった。
声をかけようとしたら。
「お帰りですか、わんわん!」
手帳を片手に、興奮気味にむふーと鼻から息を吐くわん子さんが立っていた。
「おや、わん子さん」
見送りにでも来てくれたのかな?
「おかげさまで、弊紙の売り上げ倍増ですよっ!」
「ああ、良かったですね」
神話の伝説を捏造してるっぽいのはどうかなーと思わないでもないけれど。
「ってわけで、密着取材を敢行させてもらえないでしょーかっ!? ぜひ、女神様の住む世界へおじゃまをっ!? きゃいん」
「ええかげんしろやーなの」
「まだしめたりなかったの」
何か言いかけたわん子さんを、ルラとレラがずりずりと引きずって行く。
「……ほどほどにねー」
「報道の自由っ! 報道の自由はどこにーっ!? きゃうんっ!?」
――とりあえず、合掌。
「……で、すらちゃんはどうする? 太郎の家を空間拡張するから、その気があるならすらちゃんの部屋も作っちゃうけど」
「ありがたいお言葉ですが、私はもともとスライムで、この世界の存在です。シルヴィの迷宮にも関わっていますし。まおちゃん様にはスマホで連絡できますから」
すらちゃんに声をかけると、そんな風に首を横に振って答えた。
「んー、そっか。いつでも部屋は拡張できるから、その気になったら言ってね」
まあ、無理強いはよくないしね。
「……あと、自分のハーレムに入れって、そんな適当に誘うものじゃないですよ?」
「ハーレムってなにっ!? そんなつもりなかったんだけど」
「太郎さんは、胸にを当ててよーっく考えるべきだと思います」
「んー……。思ったよりやわらかいかも」
ボリューム不足ではあるけれど、太郎の好みはこのくらいだよね。女神化したけれど、女体化したかったわけじゃないので性癖はわりとノーマルだったりする。自分で触って自分で喜ぶほど倒錯してはいないけれど。
「んー? 私そんな変なこと言ったかな? もみもみ」
「太郎さん……はぁ」
ボケたつもりはなかったのだけれど、すらちゃんが深くため息を吐いた。
「わたしは誘ってくれぬのか?」
シルヴィが、ちょっと苦笑気味に私を見つめながら言った。
「シルヴィは領主様のお仕事もあるし、あっちに住むわけには行かないでしょー? お部屋は作ってもいいけど、シルヴィ単独じゃセカイの行き来は出来ないよね」
「つれないの。まあ、たまには太郎の方を屋敷の方に寄越して欲しい」
シルヴィはそう言って、にやりと妖艶な笑みを浮かべた。
「……神の力を得た太郎であれば、多少本気で搾り取っても平気であろ?」
「何を搾り取る気ですかー」
まあ、約束だから定期的に太郎が添い寝するのくらいはかまわないけどね。
闇神メラさんや、シルヴィ、すらちゃんに見送られてルラレラ世界を後にした。
「よっし、ちょちょいのちょいっと」
部屋に帰り着いてすぐ、空間拡張をして押入れに入り口をつなぐ。とりあえず自分用に、太郎の部屋をコピペして作る。
「ユラも自分のセカイをつなげちゃいなよ」
「うん、そうさせてもらうね」
「ユイとユマは、ユラとおんなじ部屋でいい?」
「もとはおんなじユイだしね。ユラがイヤじゃなければ」
「僕にも依存はない」
よし。あとはー。
よいしょ、と身体から太郎を引っ張り出す。
「あん? おい。わざわざ俺と分かれて生活するのか? ひとつのままのほうがひとり分スペースとらなくてすむんじゃないか?」
「俺」がきょとん、とした顔で、私に分割した意図を尋ねてきた。
「俺」も「私」なくせに、なんでわからないんだろうね?
「だって、太郎には働いてお金かせいで来てもらわなきゃー」
「あ、お前、まさか引きこもる気かっ!?」
「えーだって私が太郎でございって職場に行って誰が認めてくれるのさ。モロッコ行って性転換してきましたとでもいうの?」
「あー、そりゃそうか。なんか納得いかないけど、状況としちゃしょうがないのか……?」
「あと、みぃちゃん、りあちゃん、りーあ。あなた達はどっちに住むー?」
太郎の部屋に全員はちょっと狭いだろうし、何人かは私の部屋の方に住んでもらった方がいい。個人的にはみぃちゃんを抱き枕にして寝たい。太郎の時には事案発生になっちゃうからそんなこと出来なかったけど、今は体は女の子だからね。一緒に寝ても問題ないないなのだー。
「私は、こっちのタローの方がいいのです」
みぃちゃんが、太郎の腕を取ってぎゅうと抱きしめた。
「えーっと私は……やはり、こっちで!」
りあちゃんは何度か「私」と「俺」を交互に見ていたが、最終的には太郎の腕に抱きついた。
「私フラれたーっ!?」
思わず頭を抱えて床にうずくまってしまう。
「なんでっ!?」
「えっと……どっちも同じたろーなら、子作りできるほうがいいです」
と、みぃちゃん。
「わ、私はその、あの、やはり……もにゃもにゃ」
と、りあちゃん。こっちもおんなじっぽい。
「ちょ、二人とも。俺、そういうことしないからねっ!? ロリコンちゃうしっ!」
ヘタレな「俺」がそう簡単に手を出すとは思えないけど、やっぱり付いてる方がいいのかっ!?
実際、女神化した私の方が手を出しちゃいそうだからなぁ……女の子同士の気安さで。
キスとかいっぱいしちゃったし。
ううう。一応、私の方が本体なんだけどなー。ちょっと悲しい。
「~~♪」
うなだれる私の肩に、りーあがぽんと手を乗せてきた。
「りーあ! りーあは私のほうに来てくれる?」
「~~♪」
「んあ」
むちゅう、とお口を塞がれてしまった。りーあは積極的。
「すぷらっしゅ。くちづけ。ふうふがすること」
小声で、りーあが喋った。
「あー、おねえちゃん。ちなみにー」
「飛沫族は、キスするとスイッチが入るのー」
「……え?」
そういや、なんか最初はすごく暴れてたりーあが、2回目からは自分から私にぶちゅーってしてくるようになったけど。
「ん、つまり、キスすることで受胎可能な状態になり、発情するということだねっ!」
いつもの姿に戻った寧子さんが、にやにやした顔で腕を組んで仁王立ちしていた。
「キスしたのは女神なたろーくんだから、ちゃんと責任とることーっ!」
「えーっ!?」
というかりーあは女の子同士でもいいのっ!?
……問題ないそうです。
あとルラレラは気分で私と太郎のどっちかのベッドで寝るそうです。
もひとつおまけに、いつの間にか寧子さんが自分の部屋を勝手に作ってました。
部屋割りが終わって、一息ついたところで。
「……ねえ、太郎。手、出して」
「なんだよ?」
「よし、ほら、ばとんたーっち」
ぱん、と「私」は太郎の手を叩く。
「え、なんだよ?」
「俺」は、戸惑いながらも、突然、へんな事をしてきた「私」を見つめ返す。
そういやちびねこティア・ローのときもバトンタッチとかやったよな?
「……今のに、なんか意味あったのか?」
改めて女神の「私」を見つめると、外見はまるで俺には似ていない。いや、雰囲気は似ているだろうか。俺である、鈴里太郎がベースになっているくせに。びっくりするほど美少女だ。
もしかしたら、外見的なものは、俺の願望とか好みみたいなものが反映されているのだろうか。自分自身であるという認識がなかったら、惚れていたかもしれないくらいに好みの容姿では合った。
「んー、気分的なもの? で、どう?」
「どうって何が?」
「私含めて、十人ちかい美少女ハーレム作っちゃったご感想はってこと」
「ぶはっ」
「つば飛ばさないの」
「いや、ユイとユラのナビのクロとか、ユマのナビのシロとかも居るだろ?」
「ユイちゃんの妄想により生み出されたユマちゃんが女の子な時点で、クロもシロも男の子なわけないでしょー? たぶんこの部屋で付いてるのは太郎だけよ?」
なんちゅーこというんだ、「私」のやつは。
ふふん、と薄い胸をそらして俺にぴしりと指を突きつけてくるのがなんか小憎らしい。
「だから、ちょっと……」
手招きされたので顔を寄せると、おでこにおでこをこつんとぶつけられた。
(「私」と「俺」と「わたし」にしか入れない部屋を作っておいたから、有効活用しなさいね?)
「変な気を回すなっ!」
でもたぶん、有効活用すると思いますっ! 男にはプライベートな時間も必要なのですっ!
いろんなことがあった。
結局、最初にルラレラにお願いされた、世界を冒険して勇者の伝説を創るというのは結局達成できたのか出来なかったのか。
女神伝説作っちまうとは我ながら想定外だよね。
「んー、なの」
「うふー、なの」
両側から、ルラとレラが身を寄せてきた。その頭をなでながら、ひとつ息を吐く。
今後もまだ俺は、週末になるごとにルラレラ世界を冒険するつもりではあるけれど。
とりあえず、こうして俺の異世界勇者生活は幕を閉じたのだった。
以上で第五話終了です。最後ぐでぐでですが、とりあえず本編としては以上で終了となります。
第五話はかなりな見切り発車だったせいか、全体としてかなり穴だらけですね……。長編3本分くらいのネタをぶち込んでるせいか第五話単品で40万文字近かったり。
最終話なんだしこれまでに出てきたキャラ総出演的に次から次にキャラ再登場とかしたせいで割りと収拾がつかなくなってたり。
当初は、魔王が攻めてくる。それに対抗して陣取り合戦というか、スパロボ的な戦術SLGっぽいお話をやろうとだけ考えていたんですがどうしてこうなった。
今のところ、いくつか閑話を挟んで、登場人物紹介、最終的な後書き、で〆たいと思っています。
「ぐーたら女神生活」 引きこもりな女神の日常。後日談的な。
「未定」 りーあの話
「未定」 掲示板を1回入れるかも
「登場人物紹介」
「後書き」
あともうしばらくお付き合いいただければと思います。
補足(2018/09/17追記)
ルラレラ世界に向かって電車に乗っていたダロウカちゃんとまおちゃんは、一度寧子さんの”三毛猫の実験室”にたどり着いた後、勝利の宴に参加するために寧子さんと移動中にまおちゃんの迷子スキル発動によりえぴろーぐ中にたどり着けませんでした。設定的にはマイちゃんたちの世界に迷い込んでちょっとドタバタした末に、全員が帰ったあとの闇神神殿にたどり着いてはわわ、という感じです。その後、二人のことを思い出した寧子さんによって現実世界に戻りました。
当初は掲示板回のえぴろーぐでそのあたり内容を語ろうと思っていましたが、閑話は「それぞれのエンディング」ということで掲示板回を入れる隙間が無くなってすっかり忘れちゃってたのですね。えぴろーぐに何とか間に合った様子をねじ込もうかと思ったのですが、うまく出来なかったのでここに記述して補足としておきます。