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週末は異世界で~俺的伝説の作り方~  作者: 三毛猫
閑話「勇者たちのオフ会」
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ゆうしゃかんさつにっき

 短めです。ちみっこ女神たちの視点になります。割と意味不明な感じです。幼女女神ちゃんprprな方は、読まない方がいいかも。見方がだいぶ変わると思います……。

 ×月×日 金曜日 晴れときどきブタ


 今日突然、ままが「勇者を選んできてねっ!」と言った。この間完成したわたしとわたしのセカイを遊んでもらうのだそうだ。

 可能性を詰め込んだ箱の中に、条件を設定してがらがらぽん。くじを引くように選ぶのだ。

 基本的な条件は、「異世界に順応できる人物」。必然的に、年齢はあまり幼すぎず、あまり年老いても居らず、積極的に行動し自分で考えて行動できる、といった人物になる。

 わたしはこれに加えて「わたしたちを好きになってくれる人」という条件を付け加えた。

 わたしはこれに加えて「わたしたちが好きになれる人」という条件を付け加えた。

 そうして、わたしとわたしは目をつぶって箱の中に手を入れた。

 箱の中には、たくさんの人間がいる。何十万という人間がいる。

 だから、わたしとわたしがえい、と引っ張りあげたとき。

 それが同じ人間の服の裾をつかんでいるとわかったとき。

 とても、とても驚いた。

 このひとは「わたしたちを好きになってくれる人」で。

 このひとは「わたしたちが好きになれる人」なのだから。

 わたしとわたしがそれぞれ選ぶはずだった、勇者は、たったひとりだったのだから。

 それなのに。

 勇者はわたしとわたしの前からあっさり去ってしまった。

 彼のいた世界じゃない、どこでもないセカイだというのに。そんなところから彼は自分の意思だけで自分の世界に帰ってしまった。

 わたしはとてもわくわくした。

 わたしもとてもわくわくした。

 だって、わたしの頭をなでてくれたその手がとても暖かかったから。

 だって、わたしの頭をなでてくれたその手がとても優しかったから。

 ぜったいににがさないの。

 ぜったいににがさないわ。

 だって、めがみからはにげられない。

 だって、めがみはぜったいににがさない。


 すぐにままに連絡して、彼のことを調べてもらった。

「んー、会話ログ検索すればすぐだよっ! ちょっとまっててねっ!」

 ママはすぐに彼の名前と住所を調べ上げ、ドアを開けてくれた。

 彼の部屋で、わたしとわたしはじっと彼が帰ってくるのを待った。

 ここがおにいちゃんのお部屋。

 ここがおにいちゃんの暮らしている場所。

 わたしとわたしは、ベッドの上を転げてまわった。

 帰って来たおにいちゃんを、わたしとわたしはがっしりとつかまえた。

 ……おかえりおにいちゃん、もう逃がさない。


 その日の夜、わたしとわたしはおにいちゃんの腕に抱きついて、肩を枕にして眠った。

 とくんとくんと心臓の音が聞こえる。

 わたしはそっと寝ているおにいちゃんの頬に口付けをした。

 わたしもそっと寝ているおにいちゃんの頬に口付けをした。

 ……ぱぱって、こんなかんじ?

 こいびとって、こんなかんじ?

 心地よい暖かさに包まれて、わたしとわたしは眠りについた。





 ×月×日 土曜日 晴れときどき血の雨


 おにいちゃんの朝ごはんはおいしかった。

 とってもおいしかった。

 おにいちゃんにいろいろ聞かれて答えた。

 おにいちゃんは知りたがりだ。


 おにいちゃんとわたしとわたしのセカイに初めて入った。

 おにいちゃんが死んだ。

 ねこみみさんが、おにいちゃんを殺した。

 血の雨が、ぼたぼたとふりそそいだ。

 わたしの服が真っ赤に染まった。

 わたしの服も真っ赤に染まった。

 ねこみみさんは、泣いていた。

 おにいちゃんの胸をつらぬいた腕を見つめて泣いていた。

 自分で殺したくせに。

 自分が殺したくせに。

 「だいじょうぶ」とわたしはねこみみさんに言った。

 「だいじょうぶじゃないけど」とわたしはねこみみさんに言った。

 わたしはセカイを止めて巻き戻した。

 巻き戻す前に、わたしはねこみみさんを一回だけ殺した。

 おにいちゃんを殺した罰だから、おにいちゃんと同じように胸をつらぬいて殺した。

 わたしはねこみみさんをすぐに生き返らせた。

 「あなたの罪は無くなるけれど、失われないから」

 おにいちゃんも悪いけど、それは殺されるほどの罪ではなかったはずだった。


 わたしとわたしはおにいちゃんの体を一生懸命に直した。

 中身をきちんとつめこんで、穴をふさいでふたをした。

 死の瞬間の記憶が残っていると危険なので、ままに頼んでちょっとだけいじってもらった。

 綺麗に直ったら、おにいちゃんのお部屋のベッドに寝かせた。

 わたしとわたしはおにいちゃんに抱きついて一緒に眠った。

 ちゃんと暖かかったので安心した。






 ×月×日 日曜日 ねこ晴れ


 おにいちゃんとお買い物。

 いろんなものを買ってもらった。

 いろんなものをねだった。


 わたしとわたしのセカイにでかけて。

 またおにいちゃんが死んだ。

 またあのねこみみに殺された。

 でも今回はおにいちゃんが悪い。

 今回はおにいちゃんが悪い。

 ……だから今回ねこみみさんは半殺しで勘弁してあげた。


 二回目だったから、お兄ちゃんを直すのはちょっと早くなった。

 あんまり何度も壊れるようだと、身体を複製しておいたほうがいいかもしれない。

 元に戻ったおにいちゃんに説教する。

 自分の罪を自覚しないで、わたしとわたしが創ったセカイを「クソゲー」呼ばわりはひどい。

 懇切丁寧にわたしはおにいちゃんの罪を語った。

 具体的な例をあげてわたしはおにいちゃんの罪を語った。

 おにいちゃんは理解が早かった。


 三度目のセカイ旅行。おにいちゃんは今度こそねこみみちゃんと仲良くなるんだって張り切っていた。

 わたしはあまりあのねこみみさんにこだわって欲しくはなかったけれど、おにいちゃんを応援することにした。

 さすがに三回もねこみみさんにおにいちゃんを殺されるのは嫌だったから、わたしもおにいちゃんを応援することにした。

 だからわたしは聖なる木の枝をおにいちゃんに渡した。

 だからわたしは事象改変の円盤をおにいちゃんに渡した。


 事象改変の円盤が、おにいちゃんの死の運命を改変した。

 さすがに三回もねこみみさんにおにいちゃんを殺されるのは嫌だったから。

 おにいちゃんはねこみみさんをげっとしたのだけれど。

 まさか他の世界の女神が来ているだなんて思いもしなかった。

 女神ロラは、従姉のセラおねえちゃんの世界から来たと言ったけれど。

 たぶんままと同じかもっと上の世界の人に違いなかった。

 きっとママよりずっと上の世界の人であるに違いなかった。

 わたしとわたしが創ったセカイにおいて、わたしとわたしはなんでも出来るし出来ないことなんかないけれど、それでも女神ロラに対して何かすることはできなかった。

 女神ロラは勝手にわたしとわたしのセカイに入ってきていた。

 アカウントを削除してやれば二度と入ってこられないはずだけれど、そもそも許可した覚えのないアカウントで入ってきている輩にアカバンが通じるはずも無い。

 女神ロラは、わたしとわたしがねこみみさんを何度かいじめたことをちょっと怒っていたので交換条件を出すことで今後いじめたりしないことを誓った。

 おにいちゃんを鍛えてもらおう。

 ままに禁止されたからおにいちゃんを直接改造することはしないけれど。

 ママに禁止されたからおにいちゃんに特殊な力を与えたりはしないけれど。

 自分で強くなるのは悪くないはず。


 がんばって強くなってね、おにいちゃん。



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