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週末は異世界で~俺的伝説の作り方~  作者: 三毛猫
第五話「俺的伝説の作り方」
205/246

26、「ううん、今来たところ」

短めデス。

『おねえちゃん、あと十分くらいで見えてくるのー』

『まだしゅうへんには敵影なしなのー』

「ん、了解」

 わん子さんの襲撃のせいで少しばかり予定より遅くなってしまったが、私たちは予定通りに最初のポイントへ到着していた。

 最悪、いきなり戦闘になることも覚悟していたが敵はまだ現れていないようだ。

 自分が司令室代わりの祭壇の間から指示を出していたときには気が付かなかったが、実際にルラレラからこうして指示を受ける立場になるといろいろわかることがあった。

 向こうからの声は頭の中に直接響いてくる。同時に、視界の端に文字としてログが残るようになっていた。なんかネトゲっぽい。

 祭壇の間からはウィンドウで様子を見ることができたが、こちら側からは祭壇の間の様子を見ることはできないようだった。代わりになんか光る銀色の珠みたいなものがぷかぷか空中に浮かんでいた。これがカメラ兼通信装置といったところなのだろう。

「よし、じゃあ、そろそろ準備しとこうかな?」

「たろー、どうするのです?」

 みぃちゃんが、俺の袖を引いた。

「ちょっといろいろ試してみたいから、私にまかせてもらえるかな? まずはイモムシの対応を優先するから、みぃちゃんとりあちゃんは魔王の奇襲にそなえてて」

「わかったのです」

「了解です、タロウ様」

 みぃちゃんとりあちゃんが、私から少し離れて周辺の警戒を始めた。

「んー、まずはっと」

 浮遊を使って、空中に浮かぶ。なんかエレベータに乗ってるみたいにすーっと身体が移動する。とりあえず2メートルほど浮かんでみて、上昇下降を繰り返してみる。

 んー、重力いじってるとかじゃなくて、これ単純に基準座標をずらしてる感じ?

 以前に魔法で浮遊しようとした時と違って、何かに吊られているような感じもなく、ほんとにエレベータに乗ったまま移動してる感じだった。何も触れるもののない空中であるのに、足の下には固い床のようなものが感じられて普通に空中を歩くことまでできる。

「た、タロウ様、はしたないです!」

 下からりあちゃんの声がして、ああ、下からだと丸見えかって今頃気が付いた。袴の裾って結構広いからスカート穿いてる感覚に近いんだよね……。

 まぁ、みぃちゃんとりあちゃんだから別に見られてもかまわないしー。

 んしょ、と意識してさらに上昇する。

 遠方を凝視すると、赤黒い波のようなものが見えた。

「あれかー」

『さすがに全部をつぶすのはむずかしいとおもうの』

『最低でも流れを南の方にかえてほしいのー』

「りょうかーい」

 私の見ているものがルラレラにも見えたのだろう。地図と進路予想図が視界に転送されてくる。

 ふむ、まずは一撃、ためしてみようかな。

 離れているうちにやらないと、みぃちゃんたち巻き込んじゃうからね。

 すぅ、と息を吸って、ゆっくりと吐き出す。

 悪いね、イモムシさん達。恨みがないわけじゃないけど、君たちに罪はない。

 けど。

 スキル一覧からぱんつ魔法を表示させて、選択する。

「くりえいと・ふぁいあー・ぱんつ」

 無数の女性用下着が空中に生み出された。そのすべてが白い炎に包まれている。

 ……んー、とりあえずノーコメント。

 あまりのバカバカしい光景にちょっと引きながら、視界に映るイモムシの全てにロックオン。赤い丸がずらりと視界に並ぶ。

 破魔の剣ソディアを使った時も、こんな感じだったっけなー。

 気分は新人類なロボットアニメの主人公。

「ぱんつ・ふぉーる・れいん」

 指先をイモムシの波に向ける。

 と。

 しゅん、と音速を超えて無数のぱんつがイモムシの波を目がけて降り注いだ。

 ごごごごご、と轟音を立てて地面がえぐれ、爆発音と土煙があがる。

 戦車の主砲くらいの威力はありそうかなー。かなりオーバーキル気味とはいえ、固い外皮を持つイモムシを一撃で粉々に吹き飛ばせる感じ。軽めにやったけど、数千匹は片付いたと思う。

 ロックオンとかせずに範囲攻撃で薙ぎ払った方が効率がいいのかな? うーん、でも地形を変えちゃうとルラレラに怒られそうだしなー。

 とりあえず、イモムシさん、成仏してください……。




「……今のは、なんです?」

 地面に降り立つと、みぃちゃんが目を丸くしてねこみみをぴこぴことさせた。

「ルラレラにもらったアーティファクトの力だよ」

 とりあえずひと当てして、大腿の感じはつかめた。女性用下着を超音速でぶつけるという、ふざけた仕様ではあるものの、仕組みはいろいろ参考になった。ナビに私の作った流星の魔法を改造してもらおう。

「神の力、です?」

「んー、創世魔法というよりはまだ神代魔法の範疇に収まってる感じ」

「……」

 答えると、無言でぎゅうと腕をつかまれた。

「たろー、大丈夫、なのです?」

「だいじょーぶ、だよ」

 そっとみぃちゃんの頭をなでる。言いたいことはわかっていた。そして、おそらく今の私の心はみぃちゃんであっても読み取ることは出来なくなっている。

「……大丈夫、だから」

 もう一度言って、みぃちゃんのねこみみに頬ずりするようにして抱きしめた。

「タロウさま、まだ敵の流れが変わっていないようです」

 りあちゃんが、はねを広げて少し上空から周りを見回した。

「ん、もう二、三回ぶちこむかなー」

 もう一度だけみぃちゃんの小さな肩をそっとだいて、それからするりと抜けだすようにして浮遊で宙に浮いた。

「たろー……」

 つぶやくようなみぃちゃんの声が聞こえた。

 ああ、たぶん、ばれちゃったなこれは。

 流石はみぃちゃん、ということか。心を読めなくても、わかってしまう。そのくらいに深く互いに分かり合っているということが、嬉しいと同時に寂しい。

「たぶん、そろそろ隙をねらってくると思う。警戒してて」

 ごまかすように指示を出す。

 周辺にまだ敵影はないけれど、偽装をかけている可能性は十分にあった。こちらがイモムシの対応に追われている隙に攻撃を仕掛けてくる可能性は高い。

 まあ、向こうだってずっとこの場で待ち伏せているわけでもないだろう。こっちと同じように転移を使えるんだろうし。転移ならある程度、勘でわかる。

 さて、じゃあ次は何を試してみようかな。

 ぱんつ魔法は試してみたし、他の凶悪そうなスキルを試してみるか。

 えーっと、「恋心すぱーく」? 恋する乙女のドキドキハートはハジケて飛んで意中のオトコノコをしびれさせちゃうのだ! ってなんだこの説明文。ノリがルラレラとなんか違うような。

「……まあ、使ってみるかな。恋心すぱーく」

 トクン、と心臓が高鳴った。誰かを想う気持ちが、膨らんでいく。

 ナニコレ。

 んーっと思わず手を伸ばすと、その手のひらから幾条もの紫電が飛んだ。地面に伝って放射状にはじけ飛び、イモムシの群れを薙ぎ払っていく。某ロボットアニメの電撃兵器みたいだ。

 女神コレダー!って感じかな。

 でも、ん、ん、ん、これ、ちょっと、恥ずかしすぎる!?

 顔が赤くなるのを感じながら、強引にスキルを中断した。直前にみぃちゃんのお耳をなでなでしたせいもあったのだろうか、頭の中がみぃちゃん一色になって、その気持ちが膨らんで、一気に放出って。

 ……なんかイケナイことをしたみたいですごく恥ずかしい。

 ちょっと気持ちよかったのがまたアブナイ。このスキルは封印するべきだね……。

 しかし、どうもやっぱりルラレラとノリが違うよね。このアーティファクト作ったのってルラレラじゃないのかな。

 ほかのも全部こんなノリなんだろうか。

 えーっと、「いちご爆弾」? 一本でも人参、五つでもいちご爆弾なのだ!だって、良くわからない説明だよね。

「んー、いちご爆弾っ!」

 群れの上あたりを目がけてスキルを発動する。

 すると。拳くらいの大きさのイチゴの形をした手榴弾のようなものがバラバラといくつも現れた。落下しつつ、ひとつがさらに十五個に分解して敵に降り注ぐ。

「うわー」

 時間差で爆発したいちご爆弾が次々にイモムシを吹き飛ばしてゆく。

 ターゲット指定しなくて済む分だけ、ぱんつ・ふぉーるより楽かなー。



 さらにいくつかの魔法やスキルを試してみたが、しかしいくら威力があっても一人で出来ることには限界があった。次から次にあふれてくるイモムシの群れは止まらない。今のところモグラたたきのように突出してくる波を叩き潰してはいるが、大勢としてイモムシの流れは全く変わっていない。まだ遠距離で対応できているが、じりじりと前線が上がってきている気もするし、このままだとあまりよろしくない。

「……ロアさんクラスの、凶悪な魔法使わないとだめかなー」

 それこそ真面目に地形が変わるし、何よりどれだけの規模にすればいいのかも検討がつかない。下手なことをして大陸ごと消し飛ばしたりしたら元も子もない。

「んー……ん?」

 不意に感じた違和感。

 慌てて地上に下りる。

「タロウ様っ?」

「たろーっ!」

「ふたりとも、来るよっ! 気を付けてっ!?」

 ”世界を切り裂く剣”を虚空から取り出す。抜きざまに、振り下ろす。

「……ん、待たせたか?」

 空間を切り裂いて、現れた白い魔王は、私の振るった剣を軽く片手でつまんで止めた。

「ううん、今来たところ♪」

 ぱちんとウィンクして。

 さらに呼び出した”世界を切り裂く剣”を持ったティア・ローが私からするりと抜けだして白い魔王に斬りかかった。

「にゃーなのです!」

「ははっ、考えるようになったじゃないか」

 ティア・ローの奇襲をあっさりかわして距離をとると、白い魔王は楽しげに口の端をゆがめた。元より一撃で決まるとは思っていなかったが、一太刀くらいは浴びせられると思っていたのに。やはり、私と違ってコイツは戦い慣れている。

「ふん、じゃあ、始めようか」

 不敵に嗤う魔王が、素手のまま、かかってこいとばかりに手のひらを上に向けて指をくいくいっと曲げた。


 バトルに入っちゃうと逆に長くなっちゃいそうなので短めでごめんなさい。

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