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週末は異世界で~俺的伝説の作り方~  作者: 三毛猫
第五話「俺的伝説の作り方」
198/246

21、「にゃん、にゃん、にゃん?」

 ……いろいろ直してたら遅くなりました。すみません。

 2016/01/10 既存部分にいくつかおかしな箇所があったので変更を加えています。既存部分を読み直す必要はありませんが以降ご承知おきください。


・セラ世界のレイルの迷宮組がルラレラ世界にやった来た方法があいまいでしたが、洋風女神フィラと和服女神ティラが連れてきたことに変更しました。帰りも同様に洋風女神フィラが連れて帰ったことにしています。

・ゆーりの迷宮攻略後に、自動人形キィと妖精あーちゃんのセリフを追加しました(←この二人がいることすっかり忘れてました)。

・レイルの迷宮組が帰った際に、勇者候補生の仲間のニャアとヴァルナが残ったことにしました(←この二人のこともすっかりわすれてました)。上の変更に合わせてフィラとティラも残っています。幼女女神ズは、セラ世界に魔王が攻めてきたときに備えて情報収集に来た感じです。

 ……で、なんでこうなったんだろう?


 俺の膝の上には、中学生の女の子が二人仲良く並んで座っていた。一人だけでも結構きつかったのに、二人ともなると正直ちょっと苦しい。

 右ひざと左ひざにひとりづつ、俺の大腿をまたがるようにしてちょこんと腰かけている。そのままだと落っこちそうなので、俺が両側から手で抱きかかえるような状態だ。落ち着かないのか時折もぞもぞと動くので、股間を押し付けられているようですごく恥ずかしい。

『もっとしっかり抱きかかえてほしい、かな? おっこちそう』

「中学生二人は定員オーバーだよ……」

 うちのちみっこ二人くらいならともかく、小柄とはいえ中学生二人はさすがにきつい。

「えっと、重くてごめんなさいっ!」

 ぺこぺこと頭を下げるマイちゃん。ごちん、とゆーりの狐面におでこをぶつけてしまって「あひゃあ」と声を上げる。忙しい子だ。

『わたしたちは、捕虜。だから、いつでも抑えられるようにしておくのは当然、かな』

「いや、その気になったらゆーりは止められないでしょ?」

 不本意ながら現状で一番の戦力は俺になってしまっているが、その俺でもゆーりを押さえるだけの力はない。確かにゆーりやマイちゃんがおかしなことをしないように、最大戦力である俺が二人を常に抑えられるように抱きかかえている、というのはそれほどおかしなことではないけれど。

 ……これは逆に言うと最大戦力である俺が自由に動けないということでもある。

 ゆーりが何かよからぬことを考えている、とは思いたくないが結果的に敵側の利になることも確かだ。さらにいうなら、どうやらマイちゃんがゆーりのフラグっぽいので、仮にマイちゃんがレラの転がっている御坐に座ろうものなら、それだけで闇神神殿が敵側に占拠されたことになってしまう。だからこそ、ゆーりとマイちゃんを俺が常に抑えているというのは実際正しいのだけれど……それでもやっぱりなんかおかしい気がする。

「おにい……おねえちゃんのおひざは、わたしとわたしのものなのー!」

「でも、しょうがないから少しだけかしてあげるのー!」

 ルラとレラは少し不満げな顔で、御坐の上でごろごろしている。最初ルラは一週間ぶりに会った俺のお膝を占領しようとしていたのだが、ゆーりに先に言ったようなことを言われてしぶしぶと引き下がったのだ。ルラは「オニイチャニウムほじゅうするのー」と俺の背中にしばらく抱きついていたが、しばらくしたらレラのところに戻ってごろ寝を始めた。

 なんともだらしない女神様たちだ。




「ねこみみ女神ちゃん、両手に花とかええご身分やなー」

 サボリさんがスマホを片手にニヤニヤ顔でやってきた。

「……代われるものなら代わってあげたいくらいなんですが」

「ワイがお膝に乗っけたら警察沙汰になるやん?」

「……ソウデスネ」

 いや俺も中身は男なんだけどなー。

「ところで、掲示板でも少し話題になっとったけど、その状態の勇者ちゃんてついとるのん? ついとらんのん?」

「……サボリさん、そういうこと聞くのは無神経だと思いませんか? ってふひゃ!」

 何かが足の間にするりと入り込んで来た感触に、思わず変な声を上げてしまう。

『ん、ついてない、かな?』

「おおー。お胸はあるみたいやったけど、下はどうなってんのやろなって疑問がとけたわー。ありがとなー」

 イヤな笑みを浮かべてサボリさんが去って行った。

 くそう、なんか悔しい。

 って、それより。俺の胸に背中こすり付けてくるゆーりが。

「ゆーり!」

 思わずにらみつけると。

「……」

 狐面を取ったゆーりが、ぺろりと小さく舌を出した。なんとも気が抜ける。

「(おねえさんがさっきからわたしのおっぱいさわってるから、ちょっと興奮してた、かな)」

 ささやく様な声でゆーりが言って。ようやく俺は落ちないように抱きかえた際に、ちょっとまずいところに触れてしまっていたことに気が付いた。

「……あ、ごめんね」

 少しばかり手を下の方にずらして謝る。

 って、ゆーりだけじゃなくてマイちゃんの方もか。

「……」

 慌てて手をずらすと、マイちゃんが赤い顔で何かぶつぶつつぶやいていた。

 しょくしゅ、とかにゅるにゅる、とか何の話だろう……?




「……相変わらず鈴里さんは幼女に好かれてますね!」

 真白さんがため息を吐いて言った。

 真白さんたち勇者候補生組は、和服女神ティラちゃんと洋風女神フィラちゃんがこちらに来たこともあり、少し前に真人くんと一緒にいったん現実世界の方に帰っていろいろ準備やら裏ワザの仕込みなどをしていたのだが、どうやら戻ってきたようだ。

「中学生は幼女じゃないでしょう?」

 反論するものの、そう揶揄されても仕方がない状態であることは確かだった。

「まあ、それは置いといて、勇者候補生チームは動けるようになりましたよ。ニャアとヴァルナさんも少し休んで元気になったみたいだし、いつでも行けます」

「そっか。じゃあ、掲示板組とか、戦闘力あまり無い人達と組んで領域奪い返しに行ってもらえますか?」

「了解です」

「ちょっと待ってね、場所を指定して送るから。掲示板組と三つか四つか、別れて組んどいてくれる?」

 マナを消費するけれど、今の俺ならこちらの領域であればどこにでもユニット配置を行うことができる。すでにシルヴィが動いているが、だいぶ疲労していたようだしいったん戻して休ませるべきだろう。そろそろみぃちゃんとりあちゃんも起きてくるだろうし。

 っと、丁度シルヴィから連絡が。テーブルの上でぶるぶると震えだしたスマホを手に取って、ゆーりとマイちゃんが転がり落ちないようにもう一度抱え直す。

『……タロウか? 三つほどポータルとやらを排除することができた。が、どうも狐面の言う位置とは違っておるようだぞ? 飛ばされた位置からだいぶ探す必要があった』

「え、そうなの?」

『さらに言えば、地中深くに埋めてあったり、巧妙に隠されているようだ。聞いた話と違うようだが、本当に狐面の言うことは当てになるのか?』

「うーん、ちょっと待って」

 いったん電話を保留にしてゆーりを見つめると。どうやら近くなので会話の内容が聞こえていたらしい。

『ん、どうもイコがポータルの配置ずらしてるぽい、かな』

「あ、そういえばルラちゃんの助言で、今みんなワープポータルの位置変更しに散らばってるはずですよっ」

 ゆーりとマイちゃんが、そろって声を上げた。なるほど、敵も考えているということか。

「じゃあ、シルヴィはいったん戻ってきて。疲れてるでしょ?」

『了解した』

「こっちに戻すから、メッセージ来たら”はい”を選択してね」

 言いながら通話を終了し、ナビを呼び出して「シルヴィをこっちに戻して」と指示をする。

「了解なのですよ!」

 ぴょこんと飛び出したナビが、光るウィンドウを呼び出してカタカタと何か操作する。

 少しすると、疲れた顔のシルヴィが、長さ1メートルくらいの木の棒を何本か持って祭壇の間に現れた。

「おかえり」

「うむ、ただいまだ、タロウ。狐面よ、ワープポータルとはこの棒のことで間違いないな?」

『ん、それであってる、かな』

「じゃ、シルヴィは部屋で休んでて。りあちゃんとみぃちゃん起きてたらこっちに来るように言って欲しい」

「了解した」

「次は真白さんたちだね。組み分けはできた?」

「私とサボリーマンさんマジゲロさん、真人・ニャアとにゃるきりーさん、ヴァルナさんとクッコロさん、クマさんって感じです」

「あー、サボリさんとマジゲロさんは実戦経験あるから、どっちかはヴァルナさんとこと入れ替えた方がいいかも? ヴァルナさん一人で初陣二人とか大変でしょう?」

「あ、了解です」

 あとニャアちゃんとにゃるきりさんの組み合わせもちょっと怖いんだけど。こっちはそれほど気にしなくてもいいかな。モフられるのは俺じゃないしー。

「なんやねこみみ女神ちゃん、司令官が板についてきたんと違うのん?」

「さすが両手に花だにゃー」

「それは関係ないでしょー」

『次はここと、ここと、ここ、かな』

 ゆーりが、ナビが空中に表示させた大草原のマップを指でさす。暫定で敵側のポータルの配置とそれによる領域の変化まで色付きで表示されている。ゆーりの指示はかなり的確で、一気に領域が減るポイントを選んでいる。

「了解、ナビお願いね」

「らじゃーなのですよ!」

「あ、それと敵側も動いてるみたいなのでもしかしたら接敵するかも? なるだけ手荒なことは避けてね」

 ゆーりの話では、もう敵側には大した戦力は無いらしいけれど。それでも草原で活動できるだけの戦力、スライムやイモムシと戦えるだけの力はあるわけだから警戒は必要だ。

「了解」

「じゃ、ぽちっとな」

 ナビが表示させた画面のボタンを押すと、探索組の姿が次々消えた。

 ふと気が付いたら、洋風女神フィラちゃんと和風女神ティラちゃんが俺の手元の画面を見ながら何やらメモを取っていた。

 そういや組み分けに入ってなかったな。うちのちみっこ達と同様に戦力に数えられてないのかも。

 ふと目が合うと、二人そろってにこっ、っと微笑んだ。かわいい。

 セラ世界には、創世神が現在いない。だからもしあの白い魔王みたいなやつが攻め込んで来たら、対応できる神がいない。実際、過去にはよそのセカイから紛れ込んだ存在によってセカイが滅びかけたこともあったらしい。……そのときはどうも、ロアさんがやっつけたっぽいんだけど今はそのロアさんもセラ世界にはいない。

 だからフィラちゃんとティラちゃんは対応方法なんかをこっちの世界で学ぼうとしているのだそうだ。

 レイルさんたちがやってきたのも、もともとはまおちゃんの要請らしかったけれど、最終的にセラ世界を行き来できるのは女神だけだ。向こうの女神たちの思惑もあってあの助っ人が派遣されたということらしい。

 ……シェイラさん、礼はいらないとか言ってたし実際何ももらわずに帰っちゃったけど。あれはたぶん、向こうの女神からなんか報酬もらってるなきっと。




 すっかり司令部になってしまった祭壇の間で、お膝に女子中学生二人を乗せたままぼんやりしていると。

「たろー」

「タロウ様」

 みぃちゃんとりあちゃんが部屋に入ってきた。どうやら目が覚めたらしい。シルヴィが呼んでくれたのだろう。

「……なんでソイツをお膝に乗せてるです?」

「それに、もうひとりは誰なのですか?」

 みぃちゃんとりあちゃんが、俺のお膝の上の二人を見て、冷たい声で言った。

「……ゆーりをどこかに閉じ込めるなんてことは不可能だから。こうしていつでも対処できるように押さえてるんだ。それにゆーりの知識も必要だしね」

 まああくまで建前だ。本当のところはゆーりがそう言って俺の膝を占領しているからそれを受け入れているだけに過ぎない。本気だしたゆーりを抑えるなんて俺には不可能だから。

「みぃちゃんには拠点防衛のために残ってもらうとして、りあちゃんはワープポータルの排除に行ってもらえないかな? 空を飛んで移動できるりあちゃんなら広範囲をカバーできそうだし」

 作戦会議に参加していない二人に、簡単に現状を説明する。

「……了解しました、タロウ様。しかし、守りがみぃ殿だけで大丈夫なのですか?」

 りあちゃんがジロリとゆーりをねめつけながら言った。

 まあ、実際今ゆーりが暴れだしたらどうしようもない。それに敵が破れかぶれで特攻かけてきたら流石に人数的に不安ではある。キィさんとあーちゃんにも、協力してもらえるように声をかけておくかな。たぶんまだ光神神殿には帰っていないはずだ。

「ん、今はまだ敵も攻めてくる余裕はないはず。それよりは敵の力をそぐために行動しておきたいかな」

「……了解しました」

 少し不満そうだったけれど、りあちゃんがうなずいてくれた。

『ん、空を飛べるユニットなら、こことここがいい、かな。こっちにも羽っこがいたから、歩いて行きにくい場所にも配置されている』

 ゆーりが飛び飛びの点を指示したので、ナビに命じて「じゃあ、お願いね」とりあちゃんを飛ばす。

「……」

 残ったみぃちゃんは、不満げに俺の背中から抱きついてきて。

「ひゃ」

 おもむろに俺のねこみみを甘噛みしてきた。

「ちょ、みぃちゃん!?」

 お膝の上にお荷物があるので逃げ出すこともできない。

「……あむ」

「ちょ、みぃちゃんやめ……あ、にゃー」



 マイちゃんが真っ赤な顔で「ふへへ、いい声で鳴かせてやるぜーとかイヤラシイですっハァハァ」とかなんとか小声でつぶやいていたような気がするが、聞こえなかったことにした。

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