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週末は異世界で~俺的伝説の作り方~  作者: 三毛猫
第五話「俺的伝説の作り方」
185/246

13、「狐面の魔王」

【女神フェーズ】

 『魔王ゆーりが あらわれた!』

 『勇者は おどろきとまどっている』

 ――とりあえず、行けるところまで行ってからその後どうするか考えるか。


 ……そういや、真白さんたちの方はどうなってるんだろうな?

 ふと思い出したのは、迷宮に入る前に二手に分かれた勇者候補生パーティのことだった。

 入る前にはまさか、ゲームブックのようなダンジョンになっているとは思いもしなかったから、離れたところから二手に分かれて入れば敵が分散されて楽になるだろう、と考えてのことだったが、この状況ではナビのいるこちらと合流してもらった方がいいかもしれない。

 そう考えて、真白さんに電話をかけたのだが。

 ……あれ? 呼び出し音すら鳴らないぞ?

 これまで、時間がずれたことはあっても電話やメールがつながらなかったことなんてなかったんだが、いったいどういうことだ?

 そう思ってから、真人君が言っていた裏ワザのことを思い出した。

 セラ世界を経由してルラレラ世界に来ると、ルラレラ世界で過ごした時間がほとんど無視できる、という様な事を言ってたよな。俺の方は普通に時間経過するので、今の俺と同じ時間帯に真白さんが電波の届くところに存在しないってことか? 電波が届かない、ってメッセージ帰って来ないのは気になるところだが。

 あるいは。

 まだ未来が確定していないから、俺の電話が通じないのかもしれない。

 いずれにせよ、今この迷宮に居る真白さんたちには連絡がつかない、ということは確からしかった。念のため真人くんにも電話してみるが、同じように呼び出し音すら鳴らなかった。

 ……俺のスマホ、壊れたわけじゃねーよな?

 念のために神殿にいるサボリさんにも電話してみようとして、サボリさんたちは真人くんが連れてきたということを思い出した。これはまさか、せっかく神殿に残ってもらったのに連絡方法がないっていうオチか?

 しょうがないので、りあちゃんに電話する。

 すぐそばで呼び出し音が鳴って、りあちゃんが画面をみて不思議そうな顔で俺を見た。

「あの、太郎さま?」

「ああ、ごめん、ちょっと俺のスマホ壊れてないか確認してたんだ」

 さて、向こうと連絡を取るにはどうしたものだろうか。

 向こうのメンバーは、真白さん、真人くん、ヴァルナさん、ニャアちゃん、レイルさん・・・・・にランさんの六人だったっけ。シェイラさんたちになんか連絡方法とかないか聞いてみようかな。

「あの、向こうのパーティと何か連絡を取る手段はないですか?」

 レイルさんに問いかけてから、何かおかしいことに気が付いた。

 ……あれ?

 レイルさん、真白さん側のパーティに行ったんじゃなかったっけ?

 さっきからずっとこっち居るような? って、あれ? 階段下りてる時には確かにいなかったはずなのに、迷宮に入った時から居るよな?

 誰も疑問に思ってなかったし、俺自身、今思い出すまでまったく疑問に思ってなかったんだが。これってどういうことだ? まさか、ドッペルゲンガーとかの罠かっ!?

「向こうとの連絡か? 少し待ちたまえ」

 レイルさんが、額に指を当てて何か瞑想でもするように目をつぶった。

「いや、その前にちょっと聞きたいんですけど。レイルさん、向こうのパーティに加わってもらいませんでしたっけ?」

 念のため、破魔の剣ソディアの柄に手をかけたままで問いかける。

「その通り。この場にいる私は二重存在ダブルである。今、本体側と連絡を付けるので少し待ちたまえ」

「ダブル?」

 なにそれ。

「む? 勇者よ、貴様はシェイラと戦闘したのだろう? シェイラから報告は受けているが」

「シェイラさんとの戦闘? ああ、あれですか」

 あれか、シェイラさん扮する狂乱戦士との戦いで、寧子さんが盾で受け止めたら分裂して飛び上がって俺に襲い掛かってきたんだったっけ。あれはびっくりした。

 つまり、レイルさんも分裂して片方こっちに来たってことか。吸血鬼的なスキルとかなんだろうか?

「二重存在っていうのはですねー、実体を伴った分身なのですよー。あたしは両方に複雑な動きをさせることは無理ですけどね、師匠のレイルくらいになると完全に別々に動かせるんですよー」

 シェイラさんが、にやにや笑いながらその場で分身してみせる。嫌味が二倍だ。

 ってゆーか、レイルさんってシェイラさんの師匠でもあるのか。レイルさんって魔法使いかと思ってたけど体術とか剣術も得意なんだろうか。

「そういうことやるなら、早めに言ってくださいよ……なんかの罠かと思ったじゃないですか」

「今頃何を言ってるのだー。あははー、気が付くの遅いぞー?」

 ミルトティアさんが腕組みして笑うが、その額にちょっと汗が浮かんでいる。実は彼女も今気が付いたんじゃないだろうか。

「いえね、こっち側に魔法使いと回復役が足りないからって、あたしがお願いしたんですよー」

 迷宮探索の心得そのいち、パーティの構成と隊列は重要ですよーとシェイラさんがにっかり笑いながら首をかくんと傾けた。久々に聞いたな迷宮探索の心得。いちしか聞いたことないけど。

 つまり、レイルさんは回復魔法もやれるのか。万能だな、さすが吸血鬼。

 言われてみれば、みぃちゃんは魔法を組み合わせた体術で格闘戦やる感じだし、純粋な魔法職と回復役がこちらにはいなかった。向こうはヴァルナさんが賢者っぽい感じだったし、むしろシェイラさんたちを向こうでレイルさんたちをこっちに入れた方がよかったのかもしれない。




「……どうやら向こうは、経路外のようだな。迷宮に入ったはいいものの、通路を全て透明な壁に阻まれて、一歩も進めないらしい。何とか解除できないかと今まで試していたらしいが、無理だったそうだ。いったん戻ってこちらに合流すると言っている。私たちもこの場で待つとしよう」

 連絡がついたらしく、レイルさんが目を開いて言った。

 経路外、つまり光るウィンドウが設置されてない場所だったってことか。そりゃ確かにどの入り口でもスタートできるようにすると、さらに必要なテキストとシナリオの数が膨れ上がるからなー。

 いや、何もなくて透明な壁だけってことは後で設置するつもりだったんだろうか。

 とりあえず、ナビに解析してもらった選択肢を眺めながら、今後の方針を考えることにする。

 流石のナビで、わかりやすくフローチャートにしてあった。上から下に流れでどの選択肢を選ぶとどうなるかが線でつながっている。ざっと眺めたところ、思ったよりBAD ENDが少なかった。

 ……これ、シナリオ形式じゃなくてシステマティックに場面をつなげてるタイプか。

 シナリオ形式と言っているのは、映画のような一本、あるいは複数のストーリがあって、その途中で選択肢を選んで進めていくタイプだ。理不尽なバッドエンドが多いのはこちらのタイプで、基本的にどんどん進むだけで戻れないモノが多い。いわゆるノベルタイプのアドベンチャーゲームといえば想像がつくだろうか。

 これに対して場面をつなげるタイプというのは、イベントだけ要所に用意しておいて、単純に北に進む、東に進むといった感じで行ったり来たり自由に探索できるタイプのものだ。コマンド選択式のアドベンチャーゲームに近いといえばわかるだろうか。このタイプは各所でイベントを発生させないと先に進めないものが多いが、あまり理不尽なBAD ENDはない。

 ……ええと、こうなって、こうだから。

 イベントアイテムをいくつか集めると地下二階への階段が解放される感じか。

 ゲームブック的なシステム上、手分けしてアイテムを集められないのは面倒だが、それほど複雑な仕掛けではないようだ。

 危険なイベントがいくつかあるが、前もって知っておけばどうにかなるように思える。階段の途中にあった即死級の罠が嘘みたいだ。

 ……この迷宮自体が巨大な罠である可能性を考えていたが、意外と普通に遊べる迷宮になっているようにも思える。なんだかちぐはぐだな。

「鈴里さん」

 真白さんの声に気が付いて顔を上げと、少し疲れた顔をした勇者候補生たちが立っていた。

「ん、じゃあ行こうか……」

 先に立って歩こうとして、違和感を覚えて振り返ると。

 ランさんが、なぜかものすごく大きなマスクをしていた。大きくばってんがついている。

「……どうしたんですか、ランさん」

「……(……)」

 無言でじたばた手を振るランさん。あの、奇妙な念話は聞こえてこない。というか念話も無言だ。

「ああ、気にするな、あまりうるさいので少しばかりな」

 レイルさんがなんでもない、と手を振って、それからこちら側にいたレイルさんと重なり合うように一つになった。




 ナビの案内に従って、どんどん選択肢を選んでイベントを進めていく。

 何度か戦闘も発生したが、こちらは総勢十二人パーティの上、超ベテランがごろごろしてる状態だ。蹴散らすのは簡単だった。配置されていたのは全て魔法生物タイプで、どうやらスタッフを配置しているわけではないようだった。

 ほとんどは先ほど迷宮探検した時に一度見た、あの気持ちの悪いヒトガタで、不気味なことに一つとして同じ姿をしていなかった。何体かはヒトガタになり損ねたのか、四足歩行だったが、やはりとてもまともな生物とは思えない造形だった。

 シルヴィがああいったものを配置する趣味があるとは思えなかったので、もしかしたら敵側が用意した魔法生物なのかもしれない。とすると、俺たちが先の迷宮探索で出会ったのは敵側の攻撃だったんだろうか。そういやHPゲージが見えなかったとか、ダロウカちゃんが言ってたよな。

「……よし、全部のイベントアイテム集まったかな」

「これで地下二階への階段が開かれるんですね!」

 真白さんも、意外とこのゲームブック風のダンジョンを楽しんでいるようだった。

 データ解析して最短でいったから、それほど時間はかからなかったが、いくつか嫌らしい仕掛けはあった。特定の方向からしか侵入できないエリアや、特定の場所でスイッチを入れないと開かない扉など、迷宮らしいギミックがてんこ盛りで、なかなか俺も楽しむことができた。

 しかし、くまの置物とかえるの置物、ブルーリボンとかどっかで見たようなアイテムばっかり揃えさせるとか、なかなかこの迷宮の主とはうまい酒が飲めそうだ。

「……よし、これで地下二階へ行けるはずだ」

 二階以降はまだほとんどできてないっぽいんだけどなー。

 地下一階を存分に楽しんだ身としては、どうせなら完成したダンジョンを一から探検してみたかった気もする。


『――君たちが台座に置物を設置すると、どこからか不思議な声が響き渡った。

 ”下へまいりまーす”』


「――え? ナビの解析と文章が違うぞ?」

 ここは確か、微細な振動とともに床から階段が現れるイベントのはずだったのに!?

「あー! まさか、プレイしてる間に書き換えられた可能性ありですよっ! こちらの様子をうかがっていて、回避不可能なタイミングで変更したのかもですっ!」

 ナビが慌てて再度解析をかけようと。


『 驚き、慌てふためく君たちの脳裏に、謎の声が響き渡った。

 ”なかなかやるではないかぼうけんしゃどもよー”

 どこか君たちをからかう様な口調で、謎の声は告げた。

 ”だがその幸運もここまでなのだー。

  ゆーり自ら、きさまらの力と運をためしてやろう。

  もはや後もどりはできないと知るがよいのだー”

 謎の声は一方的に告げると、嘲笑するような笑い声を残して消え失せた。”


 この先はラストバトルです。

 覚悟はよろしいいですか?


 コマンド

 ニア 覚悟完了! なら65535へ

    やっぱりやめる! ならその場で腹をかっさばいて死ね→DEAD END


 ――制限時間は3秒です。


「制限時間つきかよっ!」

 しかも片方が即死選択とか!

「考えるまでもあるまいよ、勇者!」

 レイルさんの声に、「ああ」と答えて俺は迷わず「覚悟完了!」を選択した。


『――君たちを浮遊感が襲った。

 次の瞬間、君たちは広い空間に居た。地下777階、という言葉がなぜか頭に浮かぶ』


 シルヴィの迷宮は地下三階までだろっ!?

 地下777階とか、どんだけ掘り進んだっていうんだよっ!?


『暗闇の中、静かに青い炎が灯りはじめる』


 ウィンドウの言葉と同時に、壁際だろうか、青い炎が順に奥へ向かって灯って行った。


『――そして、部屋の最奥には……』


 スポットライトのように、天井から細い明かりが部屋の奥を照らしていた。

 そこにはまるで玉座のような、豪奢な彫刻の施された椅子があり、学校の制服らしいセーラー服を着た少女が一人、ぽつんと腰かけていた。


 ――なぜか、その顔には狐のお面を被って。

 ……実は前回、大ポカやらかしてました。11を書き直して最初からレイルが一緒にいたことにするか、12を書き直して全部シェイラのセリフにするか迷って、結局こういうつじつま合わせに。

 最近思いつきで投げっぱなしなこと多いのでそのうち直したいところ……。

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