表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
週末は異世界で~俺的伝説の作り方~  作者: 三毛猫
第五話「俺的伝説の作り方」
180/246

 9、「作戦会議? 会議は踊る、されど進まず」

【女神フェーズ】

 『――女神たちの 作戦会議!?


  会議は踊りだした!?』

「……えーっと、現状を把握したところで今後の方針というか、まず何をするべきかを決めようと思うんだが」

 もう一度頭の中で状況を整理してみる。

 敵方の拠点の数・場所は不明。

 こちらの拠点は、光神神殿、闇神神殿、シルヴィのダンジョンの3つ。

 西の光神神殿は、敵に占領されてはいないものの、ルラがさらわれ拠点としてはほぼ放棄されているに等しい。今後、敵に占領される可能性もゼロではないが、攻められたのに占領されなかたったところをみると、今はまだ、敵側に複数拠点を維持するだけの戦力の余裕は無いということなのだろう。

 今さらこちらが光神神殿に人員を配置してもあまり意味はない。フラグもないのに再度攻めてもこないだろうしな。フラグを持っていったら逆にカモだし。今は放置でいいだろう。

 シルヴィのダンジョンは、敵に占拠され、おそらく敵は今後ここを拠点としてこちらの闇神神殿を攻めてくるつもりなのだと思う。二面作戦をやった直後なのだから、流石に今すぐ闇神神殿に攻めてくるとも思えない。が、それほどの時間の余裕もないだろう。

 離れている光神神殿を占拠して体勢を整えるということをせず、いきなり闇神神殿のすぐそばのダンジョンを占拠した、ということは。敵側は短期決戦を狙っているとも思える。

 俺たちには現在いる、ここ闇神神殿しか残されていない。

 ルール上、レラは24時間しか離れられず、また目の前のダンジョンで敵が準備を整えている今、下手にレラが離れるとその隙に闇神神殿を占拠されて詰みかねない。

 だから、まずは闇神神殿の守りを固めつつ、シルヴィのダンジョンを奪還するのが優先だろう。敵が占拠した、ということは今シルヴィのダンジョンに敵のフラグが配置されているはずだしな。あるいは敵側の戦力も、って。

 ……そういやシルヴィとかどうなってるんだろうな?

 すらちゃんや、リーアとかディエのやつもダンジョンのスタッフとして入ってたみたいだし。キィさんやあーちゃんも中にいたはずだ。

 それに、お互いが持つフラグは3つという話だったが、さらわれたルラと、もうひとつはレラが持ってるとして、残りひとつは誰が持ってるんだ?

 まだいろいろ情報が足りてない気がする。

「……ちょっとちょっと、みなさん! わん子を華麗にスルーしないでくださいよぅ! わんわんっ!」

 わん子さんが吠えた。ちょっとかわいい。

「ごめんなー、わん子ちゃん。悪いけど今、いろいろ忙しいんよ」

 サボリーマンさんが、すまなさそうに小さく手を振った。

「で、なんやけどな、レラちゃん。もう少し、現状整理が必要なんと違う? もう一人のちみっこ女神ちゃんがさらわれたいうんは聞いたけど、このゲームってフラグのやり取りで勝敗決まるんよね? さっきの話やと、なんや奪うのに条件あるっぽいし、まだフラグ奪われたと限った話でもないんちゃう?」

「あ、それにこちら側のフラグってあと一つは誰が持ってるんだ? レラが二つ持ってるのか? それとも闇神メラさんとかが持ってるのか?」

 二人してわん子さんをスルーしてレラに問いかける。

「順番に答えるのー。ルラのフラグはまだ奪われてないの。最後のフラグはてぃあろーちゃんが持ってて、今はおにいちゃんが持ってるの」

「……え、俺が?」

 ぱたぱたと身体に触れて、あちこち探ってみるが何かそれらしきものは持っていないようだった。さっき、ティア・ローが吸い込まれるようにして俺の中に消えたとき、ティア・ローから俺に渡されたのだろうか? いったい、ティア・ローの持っていたフラグってなんだ?

「なるほどなー。そんでちびねこちゃんがダンジョンにおったんやな?」

 サボリーマンさんが、俺をちらりと見た。

「ふむふむ、そういうことにゃー?」

 にゃるきりーさんも俺をちらりと見て、何やら頷いた。

「うん……?」

 微妙に皆の視線が気になるが、ティア・ローがフラグを持っていたというのは確かに納得ではある。流石にフラグをよその世界に持ち出すのは禁止だろうし、だからルラレラはずっとルラレラ世界にこもっていたんだろうし、俺は現実世界の方に居たから、俺の代わりに俺の分身でもあるティア・ローがフラグを持っていて、拠点であるシルヴィのダンジョンに配置されていたということなのだろう。

「……ところで、鈴里さん。ということはやっぱり、その頭の上の物がフラグ、とうことなんですか?」

 真白さんが、つんつん、と小さく指で俺の頭の上を指した。

「頭の上?」

 意識を頭上に向けると、何かがぴこん、と動いた。

 って、これまさか!

「また、ねこみみはえてるー!?」

 手を伸ばすと、懐かしのねこみみが、三角のおみみが、ちょとんと俺の頭の上に鎮座していた。

 なんかみんなの視線を感じると思ってたら、そういうわけだったんかいっ! もっと早く突っ込んでくれよ!

 それともちびねこ状態で出会った面々にとっては、俺がねこみみ生えた状態なのが当たり前だっていうのかっ! うにゃー! 泣くぞ!?

 ティア・ローならともかく、いい歳した男の俺にねこみみ生えてもしょうがねえだろーっ!




「えーっと、色々お話を聞いててですねぇ、ちょっと疑問に思ったことがあるんですが誰かおしえてもらえないでしょーかっ?」

 手帳を片手に、わん子さんがしっぽをフリフリしながら言った。

「悪いけどわん子ちゃん、取材とか、後にしてくれん?」

 サボリーマンさんが手をひらひらと振るが、わん子さんはかまわず、ずずずい、と寄ってくる。

「まず確認なんですが、そちらの御坐にいらっしゃるのは女神レラ様でいらっしゃいます?」

「レラなのー」

 両手を上げて、レラがにっこりほほ笑む。

「おおおー! これは大スクープですよっ! まさか、創世の女神レラ様の御姿が、こんなかわいらしい姿だったなんてーっ!」

 わん子さんが大興奮して、さらさらと手帳に何か書き込んでいる。どうやらルラの姿を絵に描いているようだ。ちらりと手元をのぞきこんでみると、かなりの萌えイラスト風に仕上がっていた。わん子さん、記事だけじゃなくて自分で絵も描くらしい。

 ……そいうや、ルラレラって自分の姿が妙齢の絶世の美女みたいな大嘘を広めてたんだっけ?

 かわいいけど、実物がこんな幼女だと世間に知られたら騒ぎになるんじゃないだろうか。

「……おっと、それは置いといてですね。気になることがいくつか。先の話に、敵側の拠点について何も説明がありませんでしたが、その辺りどうなってるんでしょう?」

「通常の妖精大戦の場合、当然敵の拠点は敵のセカイに存在するわ。でも侵略戦の場合、敵のセカイというものが存在しないから、拠点への入り口だけ戦いの舞台となるエリアのどこかに現れるの。今回の場合、東と西はわたしとルラが押さえていたから、間に広がる草原のどこかにあると思うわ」

 レラが、真面目な顔でわん子さんの質問に答える。小さく首を斜めにして、わん子さんが何を気にしているのかわからないようだ。

「つまり、敵の拠点の数も場所も不明ってことですかー?」

 わん子さんが、念を押すように尋ねると、レラはうなずいた。

「わざわざフラグの位置を相手に教えるような、不利なことは普通しないわね」

「……なあ、レラ、それおかしくないか?」

 わん子さんのおかげで、俺も気が付いた。

「そうですよー! わんわんっ! 絶対に変ですよっ!」

「どういうとなのー?」

 わからないらしく、レラがさらに首を斜めにする。

「だってルール上、お互いに拠点の場所を開示していたならともかく、そうでないなら向こうが一方的にこちらの拠点をピンポイントで攻めてくるなんて、おかしいだろう?」

「あーそれ、わん子のセリフですよぅ!」

「あ……」

 レラも気がついたようだ。

「どういう手段で得たのかは知らないが、ダンジョンを正攻法でクリアしに来てたところから見ても、かなりこちらの情報を持っているとみていい」

「そうやなー。ちょっと不自然なほど手際よすぎやわな。いくら掲示板でいろいろ聞いてたからって、実際に見たわけでもないのにここまであっさりなんは、ちょいとばかしおかしいのと違う?」

 サボリーマンさんの言葉に、前ににゃるきりーさんに教えられた掲示板のスレッドを思い出した。

 なんだっけか? 異世界に召喚されたとかなんとかいうスレ。

「……って、まさか魔王側に現実世界側の人間関わってるのか!?」

「ちょ、週末勇者ちゃん、おまえさんそこから知らんかったんかいっ!」

「いや、なんか最初の方でいろいろあったけど、どうもうちらと違うとこから来た人達みたいだったにゃー?」

「そういや一人一台スカウター持ってるのがあたりまえ、とか、スキルとかアビリテイとか妙なこと言ってたな、スレ主」

 にゃるきりーさんと、マジゲロから補足される。

「スカウター?」

 そういや、ダンジョンで妙な女の子たちに会ったよな? 俺が持ってるスカウターみたいなのを付けた、中学生くらいのぴょんぴょん飛び跳ねる女の子。

 まさか。

 あの子たちが、魔王側の手先だったっていうのか?

「……ん、光神神殿からルラがさらわれたときの映像が届いたの」

 レラが正面に大きな光るウィンドウを表示させと。そこに、どこかで見たような、アニメ調のニ頭身キャラがばばーんと現れた。

『じゃっじゃーん! みんなのアイドルっ! 女神ミラちゃんですっ! キラッ★』

 ……相変わらず、ウザかった。

「おー! 光神神殿で会った、ミラちゃんやー!」

「デフォルメばーじょんにゃー。ねこみみばーじょんはないのかにゃー?」

『あるけど今はだめでーっす。でわでわ、VTRすたーとっ!』




 画面に映ったのは、ベッドの上でうつ伏せになって転がり、マンガを見ながらスナック菓子に手を伸ばしているルラの映像だった。部屋の天井の隅から撮影したのだろうか。だいたい部屋全体を見渡せる。まるでホテルの一室のようだった。光神神殿は地下に風呂があったりなんかホテルっぽい作りだったが、こういった宿泊施設もあるのだろう。

『(足をばたばたさせて、かわいいですねールラ様。ぱんつ見えちゃいそうですよね★)』

 なんだか声を潜めて、覗き見をしているストーカーのような口調でミラがぐふふと声を漏らす。ってゆーかルラレラはぱんつ穿いてないから見えたらマズイ。

 コンコン、とノックの音。

 「今いないのー」と返事をするルラ。

 いや居留守使うなら返事するなよ。

 それでもノックが続き、あきらめた様子でルラがベッドから起き上がり、ドアの方に向かう。

「いないって言ってるのー……?」

 ドアの向こう側に居たのは、狐のお面を顔に付けた、どこかで見たような白い鎧を着た女性のシルエット。

 あれ、これって。ロアさん、だよな? どっか旅に出たとか言ってたけど。

「……」

 無言で、手にしたホワイトボードらしきものをルラに付きつけるロア(?)さん。カメラの角度のせいか、何が書かれているのかまでは見えない。

「ロラさん、なのー?」

 画面のルラが首を傾げたその瞬間。

 画面一瞬ぶれた。と思ったら、ルラの姿が消えていた。代わりにロアさんらしき人物が、肩に大きな麻袋のようなものを背負っている。

 次の瞬間、狐面のロアさんが一瞬カメラの方を見つめた。

 数秒見つめたあと、不意に視線を外し、それからロアさんの背後からやってきた二足歩行する猫が何もない空中に開いたドアを通って、ロアさんと二足歩行の猫が消えた。




「……ロアさん、やったっけかあの女剣士はん」

 サボリーマンさんが、ぽかんと口を開けて俺を見つめてきた。

「ちびねこちゃんの師匠なんやろ、あの人。なんで敵にまわっとるのん?」

「俺の方が知りたいですよ!」

 ってゆーか、あれ、サボリーマンさんってロアさんに会ったことあったっけ? そういやダロウカちゃんもロアさんに会ったことあるようなことを言ってたけど。

「つまり、敵側にこちらの情報を持った人物がいるってことですねっ!?」

 わん子さんが、興奮したようにぶんぶんとしっぽを振りながら手帳にものすごい勢いで何やら書き込んでいる。

「ええっと……」

 見回すと、端っこの方でみぃちゃんが画面を見つめて、目をまんまるにしていた。

「……ロアさんが、そんな、ウソなのですっ!」

「いや、むしろロアさんが向こう側で安心した」

 俺は、みぃちゃんに歩み寄って、その小さな肩に手を乗せた。

「何があって、魔王側に協力してるのかはしらないけれど。ロアさんが向こう側にいるなら、きっとルラがひどい目に会うってことはないはずだ」


 ――ただ、あの人が俺たちの前に立ちふさがることを想像すると、勝利は割と絶望的なようにも思えた。

 太郎くんとか女神側が知らないこと多すぎて話が進まないデス……。部隊編成まで進めたかったのに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ