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週末は異世界で~俺的伝説の作り方~  作者: 三毛猫
第五話「俺的伝説の作り方」
177/246

 8、「現状把握」

 説明回です。


【女神フェーズ】

 『――女神レラは インテリメガネを装備した!


  かしこさが 3あがった気がした!』

「……おにいちゃんが状況をはあくしたところで、もう少し詳しいせつめいをするの」

 レラが俺から身を離し、御坐の上に戻ってちょこんと分厚いクッションの上に正座をした。

「まずはこの戦争、妖精大戦のルールを説明するわ」

 レラがそう言うと、空中に光るウィンドウが現れた。


■妖精大戦の基本ルール

・勝敗はフラグの奪い合いによって決定される。

・敗北条件1:フラグをすべて破壊された場合は即時に敗北となる。

・敗北条件2:フラグをすべて失った状態で24時間経過すると敗北となる。

・敗北条件3:既定の期間が過ぎたあと、相手よりフラグの少ない方が敗北となる。


 ウィンドウにはそんな文章が浮かび上がっていて、いつの間にかメガネをかけたレラがくいっと人差し指でメガネを押さえながら、指示棒で空中のウィンドウを指示した。

「これが基本的なルールなの。ここテストに出すからよーく覚えておくといいわ」

「……なんでそんな学校の先生みたいなノリなんだ。ルラが捕まってるんだろう? 真面目にやってくれよ!」

「せっかちなおにいちゃんね? つまり、殺し合いじゃないからまずは安心してと言ってるのよ」

 レラが少しあきれたような顔でため息を吐いた。

「……ルラはひどい目に会ってないってことか?」

「少なくとも、命の心配はないわね」

「そうか」

 ほっと息を吐く。「少なくとも」という言い方が微妙に気にならないではなかったが、レラに焦る様子がないところから、今すぐになんらかの危険があるというわけではないらしい。何にしても現状の把握に努める必要がある。

 改めて光るウィンドウを見上げる。

 勝敗はフラグの奪い合いによって決定される。

 フラグの奪い合いって、そもそもフラグって何を意味するんだろうな? それに敗北条件の1と2の違いはなんだ? 破壊と失われるというのは同義ではないのか?

 疑問を口にすると、レラが指示棒で光るウィンドウを叩いた。すると別の画面が空中に現れた。


■フラグとは……?

・フラグとは形のないものであり、何にでも設定できる。

・フラグを設定したものがその状態を維持できなくなったとき、破壊されたとみなされる。

・フラグを奪うには、前もって設定された条件をクリアする必要がある。


「順番に説明するわね。フラグっていうのは、ゲームでいうフラグに近いものと思ってくれていいわ。仲間になるフラグとか、死亡フラグとか、そういう言い方をされるモノ。明確な形のある物体というわけではなくて、何かに設定することによりフラグとなるの。あるいは条件そのもの、と言ってもいいわね」

 レラが新たなウィンドウを指示しながら説明を続ける。指示棒で画面をもう一度叩くと、ポップアップで吹き出しが表示された。

 ……なんかパワーポインタとかそれ系のアプリっぽいな。


◆フラグの設定例

・武器や防具、アクセサリやアイテムなどに設定する場合。そのアイテムを使用できない状態にまで破壊すると、フラグも破壊されたとみなされる。

例)伝説の勇者の剣にフラグを設定。剣が折れたらフラグ破壊。

・生命あるものに設定する場合。生命活動が停止するとフラグが破壊されたとみなされる。

例)魔王が自分の心臓にフラグを設定。魔王の心臓を貫くことでフラグ破壊。


「フラグの設定例はこんな感じね。フラグは明確に物理的な、あるいは魔法的な何かがそんざいするわけじゃなくて、状態に対して設定するものよ。わりといいけげんだからニュアンスで理解してほしいわね」

「……魔王の例がすごく気になるんだが」

 殺し合いじゃないと言ったくせに、それだと命の奪い合いになるんじゃ。

「自分のセカイを持たない魔王が侵略戦を行う場合、多くの場合は自分の身一つしか持っていないから、フラグを自身に設定することが多いの。それに、破壊するだけが勝利条件ではないのよ?」

 レラが再び画面を指示棒で叩くと、先のポップアップが消えて新たなポップアップが現れた。


◆フラグ奪取条件の設定例

・武器や防具、アクセサリやアイテムなどに設定されている場合、そのアイテムを使用できる条件を満たした上で所持すればフラグを奪うことができる。

例)純潔の乙女しか使用できない剣であれば、条件を満たせば手にするだけでフラグを奪取したとみなされる。

・生命あるものに設定されている場合、服従あるいは敗北を認めさせるとフラグを奪取することができる。

例)魔王「ふ、なかなかやるではないか、勇者よ……」などと負けを認めさせることでフラグを奪取できる。


「道具に設定するほうは、かなりいろいろ条件を設定可能だけれど。それを所持するためにはこちら側もその条件を満たし続ける必要があるの。奪われないようにと無駄に厳しい条件を設定すると、こちら側もフラグを維持できなくなるわ」

 レラがくいっとメガネを人差し指で持ち上げた。

「……例が少し、気になるんだが」

 純潔の乙女しか持てない剣って。条件を満たさなくなった場合所持できなくなるって。

 それもしかして無理やり……したら。

「単純に相手のフラグを奪うだけでなく、相手がフラグを所持できなくなるようにするのも立派な戦術のひとつだわ。もっともそんなめんどくさいことをするくらいなら、とっとと破壊した方が早いとはおもうけれど」

「……」

 ルラに命の危険はないとレラは言ったけれど。命以外の危険はあるってことなのか……?

「説明を続けるわ。ここまではいい?」

 俺の返事を待たずに、レラが画面を指示棒で叩く。するとフラグ関係の画面が閉じて再び基本ルールの画面が正面に広がった。さらに叩くと新たなポッポアップが表示される。


◆基本ルール補足

・フラグを奪取される、あるいはフラグ所持条件を満たさなくなったことにより、フラグを所持できない状態を差して「フラグを失った」と定義する。全てのフラグを失った場合、24時間経過すると敗北となる(敗北条件2)。

・あらかじめ設定したいずれかの拠点に、最低一つのフラグを配置しておく必要がある。どの拠点にもフラグが配置されていない状態で24時間経過すると、敗北条件2を満たすものとする。


「これが最初に聞かれた、フラグの破壊と消失の違いね。二つ目の条件があるから、わたしとルラはゲーム開始直後からずっとセカイにこもりきりってわけ」

「お互いにフラグを隠したままだといつまでたっても勝負がつかないから、最低一つは動かさないで配置しておく必要があるってことか」

 となると、こちらの拠点はルラがこもっていた光神神殿とレラがこもっている闇神神殿ってことか。

「そういうことね。拠点に関して補足するわ」


◆拠点について

・拠点の数はフラグの数と同数である必要はないが、ゲーム開始後に新たに拠点を設定することはできない。

・フラグが配置されていない相手の拠点に、自軍が所持するフラグを配置することで拠点を奪取することができる。


「こちらが前もって設定しておいた拠点は、フラグの数と同じ三つ。光神神殿、闇神神殿、そして出来立てのダンジョンね。……そして、現在、残るこちらの拠点はここ闇神神殿だけ。光神神殿はまだ奪取されてないみたいだけれど、のこのこフラグを持って再占拠に行くのは自殺行為でしょう。つい先ほどダンジョンは占拠されて、わたしたちは喉元に剣を突き付けられた状態ってわけね」

 レラが肩をすくめてため息を吐いた。

 ダンジョンって、シルヴィの作ったあれだよな? 闇神神殿のすぐそばじゃねーか。

「……基本ルールの敗北条件に、拠点をすべて失う、というのは無かったよな?」

「ええ。拠点は事前であれば常識の範囲内でいくつでも設定可能だから、全て奪われたところで負けにはならないわ。ただし……」

 レラが画面を叩くと新たな画面が表示された。


■女神と魔王の力の制限について

・フラグを拠点に配置することにより、時間経過でマナと呼ばれる行動ポイントを取得できる。ゲームのおける女神と魔王の力の行使には、このマナを消費して行う必要がある。マナを使用しないで直接力を行使した場合、反則負けとなる。

・フラグの配置された拠点を含む領域が広くなるほど、単位時間当たりに獲得できるマナの量は増加する。

・また重要施設が多くなる、人口が多くなる、など領域の価値が増えるほど単位時間当たりに獲得できるマナの量は増加する。


「端的に言うと、拠点をすべて失うとマナが獲得できなくなり、継戦能力を失うわ」

「……つまり、現状としてはかなりピンチなわけか」

「だいじょーぶなの。奪われたのなら、奪い返せばいいの!」

「……なんか、負けたら勝つまでやればいいってズブズブ賭け事にはまるダメ人間のセリフっぽいな」

 深く考えない一言だった。

「……」

 レラが不意に押し黙った。

「……レラ?」

 声をかけると、レラが泣きそうな顔で俺を見つめてきた。

「……最後の説明」

 画面を指示棒でレラが叩く。


■勝負の結果

・勝敗が確定した時点で、奪った領域・奪われた領域は各陣営のものとなる。


「つまり、奪われた領域は取り返さない限り、こちらが勝ったとしても失われたままなの。さらに言えば、敗北条件の3による判定負け以外、つまりフラグを全て破壊される、あるいは全て失って負けた場合はすべての領域を失うことになるわ」

「……それって」

「わたしとわたしのセカイが、魔王のものになるということなの」

「……」

 この度は俺が押し黙る番だった。この戦いを深く考えないで受けてしまったのは俺であって、ルラやレラじゃない。

「だから、わたしたちは負けちゃいけないのよ。奪われたものは全て奪い返して、完膚なきまでに叩きつぶすしかないの」

「……すまん」

「おにいちゃんのせいじゃないわ。防衛戦の場合、ほぼ全域を防衛側が占拠した状態から始まるの。その有利に胡坐をかいて、相手を甘く見過ぎていたわたしとルラにも責任があるの」

 レラがため息を吐いた。

「まさか、一週間もたたずにこちらを占拠できるほどの戦力とマナを整えてくるとは思いもしなかったわ……」

 いや、レラはそう言うが、俺のしでかした不始末だ。俺がなんとかしなければ。

 ルラを取り返し、シルヴィのダンジョンを取り返し、そして逆に魔王の領域に攻め込む。

 しかし。

 ここまで押し込まれた状態からどうやって切り返す?

 敵の情報はほとんどない上に、こちらは既に喉元に刃を突き付けられた状態だ。

 考え込んでいると、サボリーマンさんが口を開いた。

「……で、女神ちゃん? そういう話わいらに聞かせるってことは、わいらにもその戦争に参加してくれちゅーことなん?」

「そういうことね。強制ではないけれど、手伝ってくれるといろいろ特典がつくわ」

「具体的には、どんな?」

「わたしたちのセカイへのフリーパス、その他は相談に応じるわよ?」

「ねこみみ天国ほしいにゃー」

「【猫】【耳】【興味があります】」

「欲望たれながしやな、お前らー」

 どうやら、サボリーマンさんたちは乗り気のようだ。

「私たちは当然協力させてもらいます」

 真白さんたちも、協力してくれるらしい。

「……んー。とっても面白そうなイベントではあるんだけど、なんか時間かかりそうなイベントよね? お姉ちゃんはお仕事あるし、不参加かな」

 りる姉は、残念そうに首を横に振った。

「俺は、責任上、参加しないとまずいんだ。こないだに引き続きで悪いんだけど、りる姉、俺仕事休む」

「んー、しばらくはドキュメント整理だから、大丈夫よぅ。まあ、客先での情報収集ってことで出張あつかいにしてあげるわ」

「助かる!」




 最終的に、学校があるまおちゃん、ダロウカちゃん、それにりる姉を除いた全員が参加することになった。まおちゃんはなるだけ来てくれるそうだが、ダロウカちゃんは家が名古屋方面なので流石に日帰りは無理だということだった。

 力になれなくてすまない、と非常に残念そうな顔で、帰って行った。



「じゃ、具体的に作戦たてんとなー?」

 サボリーマンさんが中心になって、今後の話し合いをしようとしていた時。

「……うーわんわん! なんだかすっごい話を聞いてしまった気がしますよっ? これは、特ダネってやつじゃないでしょーかっ!?」


 なぜかわん子さんが、ひどく興奮した様子で手帳を片手に飛び込んできた。

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