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週末は異世界で~俺的伝説の作り方~  作者: 三毛猫
第五話「俺的伝説の作り方」
171/246

【魔王フェーズ】とつぜん異世界に召喚されたオンナノコたちのお話 その5

 舞子さん視点です。


【魔王フェーズ】


 『人魚たちが あらわれた!』

 『舞子は こうふんしている!』

 手分けしてワープポータルを設置するために、あたしたちは三方に分かれることになった。

 本当は四方に分かれようとしたのだけれど、少しばかり考えの足りないタカシくんを一人にするのをみっちーが不安がったため、北の方にみっちーとタカシくん、東の方にゆーり、西の方にあたしとイコたちが進むことになったのだった。

 頂点が最低みっつあれば面ができる。まずは三角形を作って領域を確保し、少しづつ広げていこう。




「……しかし、草ばっかりなんだねっ」

 ケット・シーの二人が「にゃにゃ」「にゃにゃにゃー!」と小さな体で細身の剣を振り回して草を切り開き、道を作ってくれているが、そうでもなければ歩くことさえ困難なくらいに草が生い茂っている。

「もう少し行くと、街道に出るです。そしたら、少し楽になるです!」

 ねこみみ幼女スズちゃんが、ぴこんとおみみを立てて言った。ねこかわいい。

「そうなんだ?」

 何の目印もない草原なのに、迷いなく進んでいるなーと思っていたら、ちゃんと道はわかっていたらしい。

 前回とやらも、同じようなことをしたから、道を覚えているってことなのかな? それとも周辺マップを見るような、特殊なアビリティでも持ってるんだろうか。

 何にしても心強いことだった。

 そんなことを話しているうちに、少し開けた場所に出た。特に舗装されている様子もないのだけれど、これが街道というやつなのだろうか。やや北よりに向かって土で踏み固められた道が続いているようだ。

「……ところで、なんだけど」

 歩きやすい街道に出たところで、あたしはふとこれまでなんとなく疑問に思っていたことをイコに聞いてみることにした。

「なあに、あたし?」

 隣を歩くイコが、少し困ったような顔をして首を斜めにした。

「いくつか聞きたいことがあるんだけど。まず、こうしてアビリティ研究会の他のメンバーがいない状況を作ったのって、やっぱりイコが意図的にやったことだよね?」

 まずはストレートに。

 モンスターがいる、なんて言っておきながらみんなをバラバラの方向に行かせるのはとても不自然だった。なんでもできちゃう素敵に無敵なゆーりは置いとくとして、いくら魔法が使えるようになったからって、みっちーとタカシくんを二人だけにしたのは少しばかり不安が大きい。

 イコに大丈夫だから、と押し切られてその時はあまり深く考えはしなかったが、魔法という強力な武器を手に入れたのだとしても、その使い方はまだ素人のはずだ。知識を持っているのはイコだけなのだから、イコがあたしの召喚獣扱いで、彼女がいないとあたしに何もできないのだとしても、少なくとも最初のうちは全員で固まって行動するべきではなかったのか、と今さらのように思う。

「……ああ、やっぱりあたしだもの、そういうの、わかっちゃうか」

 イコは苦笑しながら、不意にあたしに顔を寄せてきた。

 そのまま、こつんとおでこをくっつけてくる。

「……え、なに?」

 自分と同じ顔とはいえ、流石にいきなりこんなに近づかれるとちょっと恥ずかしい。身を離そうとしたら、さらに両手をつかまれて引き寄せられた。

「この距離だと、まだゆーりに知られちゃう」

『……だから、こうして話すよっ?』

 続いたイコの言葉は、あたしの頭の中で響いた。てれぱしーってやつだろうか。

『頭の中で考えて? それだけで伝わるから』

『……こう?』

 テレパシーだなんて、超能力じみている。しかし、双子のシンパシーとでもいうのか。両方とも「あたし」である以上、言葉を交わさなくとも互いに分かり合えるというのはなんとなくわからないでもなかった。

『うん、これはアビリティじゃなくて、あたしとあたしだからできることだよ』

『わ、そんな思考すらも伝わっちゃうんだ?』

『さっきの質問に答えておくね。もちろん、あたしたちだけになったのは、こうやって情報を交換しておくのが目的。特にゆーりは情報を認識できる領域がけた違いに広いから、見えないくらいに離れたくらいじゃ安心できないしね。まだゆーりには知られたくないこともあるんだよ』

『情報を交換って……?』

 イコはすべてが終わった後から来たといった。彼女が一方的に情報をくれるものと思っていたけれど、交換するような何かがこちらにもあるってこと?

『うん、そうだよ。いきなり前言を翻す様で悪いんだけどね、正確に言うなら”あたしはあなたじゃない”。新ヶ瀬舞子であることは確かだけれど、あたしとあなたはつながっていない』

 ふ、と吐かれたイコの息が、あたしの唇をくすぐった。

『そして、あたしがこの妖精大戦とよばれるゲームをやり直すのは、これが初めてじゃない』

 タカシくんも、みっちーも、ゆーりでさえも、召喚した何かが一体だけだったことを少し疑問に思っていた。あたし自身も、直接召喚できたのは目の前のイコ一人だけだった。

 なのに。

 イコは、ケットちゃんとシーちゃんと、スズちゃんの三人も呼んでいる。召喚の制約とか聞いていないけれど、仮に一人が一つしか呼べないのであれば。それはつまり、もしかしたらイコが最低三回ループを繰り返して、そのたびに召喚獣を増やしたのだとは考えられないだろうか。

『さすがあたしだ、理解がはやいっ!』

『ちょっとまって、でもそれって、今回みたいな召喚獣として呼ばれるって形じゃなくって、あたし自身が繰り返してたってことだよね?』

 イコが今回新たに召喚獣を追加した様子はなかった。つまり、今回の周回ではイコの召喚獣は増えていない。しかし、あたしの視点から見るとイコを含めて四人に増えている、と考えることも可能だ。

 だとするならば。今の状況は、イコにとってもイレギュラー。

『うん、だけどあたしがやることは変わらない。今度こそ、救ってみせる』

『誰が帰らなかったのかは、教えてくれないの?』

『……』

 テレパシーで沈黙が伝わるとは思わなかった。何か言いづらそうな、ためらう様な感情が伝わってきて、ああやっぱりあたしって隠すの苦手なんだなーと我ながら苦笑した。

『そっか、言いたくないのは”誰が帰らなかったか”じゃなくて、イコがやり直しを続ける本当の理由の方なんだ?』

 向こうの考えることはあまりはっきりと伝わってこないけれど、こうして心と心がつながっているとわかることもある。

 全員が元の世界に帰らなかった、というのは事実なのだとしても、イコがやり直しを繰り返しているのは、おそらく全員が元の世界に帰ることを至上の目的としたものではない。たぶん、まだあたしの知らない何かがあって、今のあたしでは考えもしないようなことを目的としているんだと思う。あたしにも、みんなにも、本当の目的を告げようとしないのは、きっとそれがまだ何も知らない今のあたしたちにとって受け入れがたい、あるいは信じられないものだからなのだろう。

 ――それに、さらにいうならば。

『イコがやろうとしていることは、今のあたしたちにとっての最善ではないってことなのかなっ?』

 なんとなく想像がついた。今のあたしたちにとっての最善は、変なゲームに勝利することではなく、今すぐに元の世界に戻ること。そして、イコはその手段をおそらく知った上で、自分の目的を果たすためにあえてあたしたちをゲームに巻き込んでいる。意図的に誘導している。

 それが誰かはわからないけれど、救うために。

『……ああ、我ながら、うん、いやあたしだから、なのかな? 委員長くんがときどきあたしのことを、ちょっと特別なオンナノコだってゆーの、こうして客観的に自分を見る少しとわかる気がするよ』

 普段はアレなのになんで時々こう察しがよすぎるんだろうねー、と深いため息が聞こえた気がした。

『そこまでわかっているなら、言えない、言わないってわかるよねっ?』

『うん、その上で聞くよ? 教えてくれる気はないのかな?』

『ごめん、あたしってほら、顔に出やすいから……ね?』

 イコが何かを隠してるっていうのは、多分既にみんなわかってると思うけれど。あたしまで隠し事を抱えてしまったら。そして、イコほどそれにこだわる必要性を感じないのであれば。

 あたしからみんなにばれてしまうってことだよね……。

『……ん、わかった。あたしは、あたしがみんなを巻き込んでまでやりたいことってゆーの、想像もつかないけれど、あたしだしね、それが悪いことじゃないんだって信じることにする』

『ありがと、あたし』

『どういたしまして、あたし』

 顔を見合わせて、お互いに苦笑した。

「ちゅーはまだなのです?」

「「え?」」

 突然のスズちゃんの声に、二人して我に返った。気が付いたら、両拳を頬にあてて、期待の眼差しでスズちゃんがあたしたちを見上げていた。

 急に黙って見つめ合って、顔を近づけたら……それは勘違いされるかもだけれどっ!?

「ちがうから、そうゆうのじゃないからね!?」

「……えー、あたしは別に気にしないけどっ? やってみる?」

 なぜかイコは乗り気のようだったっ!?

 ちょっとまてあたし、あたしはノーマルなはずでしょうっ?

 ああでも、みっちーとかゆーりと、変な意味じゃなくてキスしたことがあるし、実はあたし、百合な下地があったりするんだろうかっ?

 ……流石に自分自身とキスするような変態ではないと思いたい。




「もう少し行くと、川があるのです」

 スズちゃんが、ちらりとこちらを振り向いてぴこん、とおみみを立てた。

「そうなんだ?」

 お水、飲めるといいんだけど。まぁ、最悪でも顔と手足くらいは洗えるよね。

 そういやお水とかご飯とかどうするんだろう。だいぶお腹もへってきてるんですけどっ?

 結構歩いた気がするのに、全然変わり映えのしない草原を歩くことに大分飽きてきていたところだし、お水が調達できるようなら川のそばにワープポータルを設置していったん戻ってもいいかもしれない。

「あ、見えてきたよっ?」

 ちょっと背伸びをして遠くを伺っていたイコが、ぴょん、と飛び上がった。

「競争なのです!」

 スズちゃんが、たーっと駆け出した。

「にゃー!」

「まつにゃー!」

 その後をケットちゃんとシーちゃんが追いかける。

「元気だねーこねこちゃん達」

 あたしはもう、そんな元気はないよぅ……。



「…………?」

 川には大きな石で出来た橋が架かっていた。欄干から、ひょいと川を覗き込んだら。

「……ああん?」

 川の中ほどの洲にごろりと横たわっていた、はだかんぼうの女の子と目が合ってしまった。

 完全に素っ裸だ。首飾りと、何か腰の周りに飾りのようなものを付けているけれど、まったく隠れておらず、人に見せてはいけないところが全部見えてしまっている。少し膨らみかけの胸も、まだ何も生えていない足の付け根も、全てをお日様の下にさらけ出している。

 あたしたちより、少し年下くらいだろうか。日向ぼっこでもするように、砂の上に仰向けでごろりと横たわっている。

「……ここはヌーディストビーチですかっ?」

「ああん? ぬーでぃすとびーちってなんだよォ?」

 転がっていた裸のオンナノコが、もっそりと起き上がって砂の上で胡坐をかいた。

 よかった、タカシくんとか委員長くんが一緒でなくて本当によかった。これは絶対、オトコノコには見せられない。

 ……ってゆーか、なんで裸なんだ? 泳ぐにしたって、流石に全裸はないだろう全裸はっ!

「にゃーなのです!」

 いつの間にか河原に降りていたスズちゃんが、裸のオンナノコに向かって両手を上げた。

「あん? こないだ来たちびねこじゃねーか。ひさしびりじゃねーかっ! 今日はあんときのにーちゃんとかねーちゃんは一緒じゃねーのかぁ?」

 ずいぶんと仲が良さげってゆーか、裸のオンナノコとスズちゃんは知り合いなんだろうか……?

 あたしが首を傾げると、イコも首を傾げていた。

「……あれ、イコも知らないの?」

 向こうがあたしの顔、つまりイコの顔を知らないようなのに、召喚獣のスズちゃんだけと知り合いだなんて……それって、まさか、スズちゃんがこの世界から呼び出されたってことだろうか。

「うん、でもこれはいい機会かも。直接交渉して仲間になってもらえば、マナを消費しないし」

 あたしとイコも、すぐに河原に降りることにした。



「……というわけなのです!」

「ふーん? いいぜー」

 あたし達が河原に降りたときには、すでにスズちゃんによって交渉が終わってしまっていた。スズちゃん、何者だー。

「んじゃ、呼んでくる」

 ぽしゃん、と水音をさせて、裸のオンナノコが川に潜った。

 その、下半身が。

「……人魚?」

 イルカのような、海生哺乳類っぽい、なめらかなしっぽが、ぱしゃんと川面を叩いた。なるほど、人魚さんなので素っ裸だったということらしい。ぱんつ穿いてたりしたら変身できなさそうだし。

「とりあえず、あたしたちはワープポータル設置しちゃおう」

 イコに言われて、河原から少し離れたところに木の棒を突き刺した。




「フレスリュエラだぜ」

「フレスレイリア……」

「フレストリシアでっす」

 河原に戻ってきたら、人魚さんが三人に増えていた。

「いやあたしらもよぅ、オトナになったことだしそろそろどこか行ってみようかって思ってたんだ」

 一番小さい、さっき会った素っ裸のオンナコ、リュエラちゃんが、ニカッっとした笑みを浮かべてスズちゃんの小さな肩をばんばんと叩いた。

「じゃあ、みんなでお出かけするです! 街に行けばきっとダロウカちゃんたちにも会えるです」

「そうかもなぁ。つーわけで、あんたら、世話になるぜぃ」

 小さいのに、とても鋭い目つきで、こちらを見つめてきたのでちょっと心臓がどきんとした。

「……ええと、よろしくお願いします?」

 わけがわからないながらも、とりあえず挨拶をする。

「前のイベントフラグが残ったままだったのです。人数条件を満たしたので、人魚さんたち仲間になるです!」

 スズちゃんがむふーと息を吐いて、よくわからないことを言った。撫でて欲しそうにぴこんとおみみをはねさせたので、「さすがだねー」ってなでなでしてあげた。

 ふと、もしかして、イコががいろいろ知っていたのって、スズちゃんが原因なのかも、と頭に浮かんだ。




 あたし達の世界とこの異世界で時間がどうなっているのかはわからないけれど、こちらの世界でもだいぶ日も傾いてきていたので、ワープポータルも設置したことだしいったん帰ることにした。

 人魚さんたちと一緒にスズちゃんのどこへでもドアをくぐって白い空間に戻ると、そこは白い空間ではなくなっていた。

「ああ、おかえり、新ヶ瀬さんたち」

 こちらに気が付いた委員長くんが、声をかけてくる。

「いい、委員長くん? これ、どうゆうこと?」

 見渡す限りの真っ白な空間だったはずの場所に、いろんな建物が建っていた。正面に見えるプレハブは、あたしたちアビリティ研究会の部室そのものだし、その脇にあるのは給食センターっぽい。トイレっぽいのや、居住施設と思われるものまで、ずらりと立ち並んでいた。

「ここが僕たちの拠点になるわけだからね、快適になるようにいろいろと……って」

 そこではだかんぼうの人魚さんたち三人に気が付いたらしい。周りの状況を常に把握している委員長くんも、流石に何もないところから現れた素っ裸のオンナノコは予想だにしなかっただろう。

「……君たちも連れてきたのか」

「うぃーす、世話になるぜぃ」

 軽く手を上げて挨拶する人魚さんから、そっと、視線を外して委員長くんがため息を吐いた。

 あれ、君たちもってことは、まさか。

「うん、神原さんと、高橋は、羽の生えたオンナノコと、角の生えたオトコノコを連れてきたよ……。ああ、また居住区を建て増ししなきゃ」


 ……どうやら、順調に戦力は整いつつある、んだろうか?

「女神側の勇者たちって、二十人近くいるから、まだまだ集めなきゃだよっ?」

 何も言っていないのに、イコがあたしの顔を見て、そんなことを言った。


 ……ってことはゆーりもなんか、とんでもないのを連れてきちゃうんだろうか。

 なんて考えていたら。

『はぐれ女神、げっとした。きっと経験値たくさん』

 ゆーりが、知らない女性と一緒に帰ってきた。肩当ての付いた白い鎧を着た、剣士風の人だ。


 ……はぐれ女神っていったいなにっ?

 なんかぐちゃぐちゃになってきました……。ちょっと書き殴りすぎなので後日いろいろ修正するかもです。しかしなんてゆーか、魔王フェーズの面々は勝手に伏線張りまくりでどう収拾したものやら……って書いてるの私じゃないですかー。

 掲示板入れたいとこですけど、次は多分、太郎くんの方に戻ります。

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