表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
週末は異世界で~俺的伝説の作り方~  作者: 三毛猫
第五話「俺的伝説の作り方」
166/246

 2、「いろいろ、顔合わせ」

【女神フェーズ】


 『――城ヶ崎(じょうがさき)りるるが あらわれた!


  勇者たろうは おどろきとまどっている!』

「……む? なんだタロウ、知り合いだったのか?」

 シルヴィが、俺とりる姉の顔を交互に見て首を傾げた。

「ええ、俺の会社の上司で、幼馴染でもありますけれど……なんでりる姉がここに?」

 なんていうか、法事で会社休みますって言って夏コミに行ったら、現場でばったり会社の上司に出くわしてしまったような気まずさ。いや、それ以前に、まだこのルラレラ世界は普通の人が気軽に訪れることのできる場所じゃない。いったいどういう関係でりる姉が来ることになったのだろう?

 ……まさか、りる姉、あの掲示板の常連だったとか?

 おおう、俺が週末勇者だなんて言ったら、どんな目で見られるか……。

 何を言っていいものやら混乱していると、りる姉が俺をじーっと見つめてきた。

「太郎、それはこっちのセリフよ? 週末に用事があるって言ったからわたし一人で来たのに。もしかして用事ってここに遊びに来ることだったの?」

「……え?」

 あ、そういえば。りる姉が、仕事の依頼元からプレオープンに誘われているとか言ってたっけ?

 つまり。

 今週半分くらい泊まり込みで突貫作業やってたあの仕事って、シルヴィんとこが依頼元だったのかっ!?

 シェイラさんのところみたいな、木製の武器でやるのかと思っていたけれど、まさかハイテクおもちゃを使う様なダンジョンだったとは。

「……はぁ」

 思わずため息が出た。




「……ってわけで。どうやら俺、知らずに知り合いのところの仕事をやってたみたいです」

「……ああ、そういえば太郎、この間、異世界で勇者やってるとかおバカなこと言ってたけれど、もしかしてこのテーマパークのことだったのかな?」

 俺が状況を説明すると、りる姉は何度かうなずいたあと、腕組みしてなんだかからかう様な笑みを浮かべて俺を見つめてきた。

「でもって、一緒の女の子たちはどういう知り合いなのよー? わたしにも紹介しなさい」

「え、うん」

 ……なんだろう、すごく恥ずかしい。

「えーっと、一緒に冒険とかしてる、みぃちゃん、まおちゃん、真白さん、ダロウカちゃんです。でもって、こっちは俺の会社の上司で、幼馴染でもある城ヶ崎りるるさんです」

 なんと紹介したものやら。口調が微妙だ。

「ああ、どうも。雪風真白です」

 真白さんが最初にお辞儀をした。

「鈴里さんには、いろいろお世話になっています」

「りるるよ、よろしくね?」

 りる姉がにっこりと微笑む。

 真白さんも微笑返して、それから妙に真面目な顔になって俺を見つめた。

「……ところで鈴里さん、リアルの知り合いも幼女だったりするんですね?」

「いや、りる姉は俺より二個上だから。幼女違うし」

「こらー! 太郎! 女性の歳に関してあれこれ言わないのっ!」

 ぴょん、と飛び上がったりる姉に、頭をこつんとやられた。

「ところで……どの子が本命なわけ? 全員未成年なところはお姉ちゃんちょっとどうかと思うけれど」

「ぶはっ! いきなり何言うんだよ、りる姉っ!?」

 いきなりのりる姉の言葉に思わず噴き出した。

 こないだうちに来た時に、恋人でもできたのか疑っていたようだったけれど。

「ぬ? りるるは知らぬのか。タロウの嫁はここにいるだけではないぞ?」

「あら、そうなの?」

「こらこら、シルヴィも誤解を招くようなこと言わないっ!」

「タロウ様!」

 そこへ、りあちゃんとすらちゃん、リーアまでやってきた。

 りあちゃんは、ばさりとはねを広げて地面を滑るように飛んでくると、そのままの勢いで俺に抱き着いてきた。

「ちょ、ちょっとりあちゃん!」

「一週間も会えなかったのですからっ!」

 ちょっと顔を上げて、そう言い放つとまた俺の胸に顔をうずめて頬ずりするりあちゃん。

 ……そういえば、これまでは大概ルラレラ世界の翌日に訪れるようにしていたから、一週間も顔を会わせなかったのは初めてなわけだ。

「……そちらはどらごん殿か」

 ダロウカちゃんが、りあちゃんの角とはねを見つめて、ほう、と息を吐いた。さらには空中を優雅に泳いでくるリーアを見つけて、また目を輝かせてせた。

「太郎、その子がカノジョなの?」

 りる姉が、うーん、と首を斜めにしながら言った。

「ワイヤーアクションなのかしら、今のすごかったわね……?」

「いやだから、そういうのじゃないってりる姉……」

 ……なんかりる姉は微妙に誤解があるような気がする? りあちゃんが空飛んだのとか全部アトラクションか何かと勘違いしてるんだろうか。

「タロウ様っ! 私はちゃんと、お慕い申し上げていますと、告白したはずですが?」

「あー、太郎は悪い子だ。こんなちっちゃい子を袖にしてー」

「いや、だから」

「……」

 無言でみぃちゃんが、俺の服の袖を引いた。みぃちゃんにも告白じみたことされてるんだよな。

「相変わらずの修羅場ですね、太郎さん……。相手が幼女ばかりというのがまたなんとも言えませんが」

「すらちゃんまでそんなこと言う!?」

『たろう、りーあいろいろがんばった。ほめる』

 マイペースなリーアが癒しだ……。

 ホワイトボードをぶんぶんと振っているリーアの頭をなでてやる。

「……しかし、こうしてみると、見事に幼子だらけよの?」

 シルヴィがぐるりとまわりを見回してつぶやいた。

「それ、俺のせいじゃないですからっ!」

 たぶん、ルラとレラの呪いに決まってる!

「……んー、でも、なかなか楽しくやってるみたいじゃない、太郎?」

 りる姉が、ちょっと寂しげに笑った。

「え、うん。まぁ、そうかな?」

 ちょっと戸惑いがちにうなずく。いろいろあったけれど、まぁそれなりに楽しくやっているのは事実だった。

「りるるよ、ちなみにここにいる以外にまだあと4、5人は太郎の嫁がおる」

「だからシルヴィは余計なこと言わないっ!」

「……太郎、ロリコンは犯罪だからね?」

 りる姉があきれたような声を上げた。

 いや、手を出したら犯罪かもだけどロリコン自体は罪じゃないはず……?

 まぁ、病気かもしれないけれど。俺はろりこんちゃうし。




 お互いにいろいろ紹介が終わって少し落ち着いた頃、神殿の方から台車を押してメイドさんがやってきた。

「お昼の用意が出来ました」

 どこかで見たようなメイド姿だな、と思ったら、光神神殿でお世話になったキィさんだった。

「あれ、キィさんどうしてこちらに?」

 キィさんの頭の上には、妖精のあーちゃんがちょこん、と乗っている。さらにはうちの妖精(偽)ディエが肩車するようにキィさんの肩に乗っていた。

「……?」

 キィさんは俺の顔を見て、少し首を傾げた。

 そういや、キィさんとはティア・ローの姿でしか会ったことがなかったんだった。

「私は光神神殿からの応援として派遣されました。自動人形のキィです」

「あー、ひさしぶりーおにーさん! おいしいごはんたべるー?」

 ディエが、楽しげに翅を振るわせた。

「ああ、キィさんと会えたんだ。よかったな、ディエ」

「うん、さすがわたしの夢だよね!」

「……うん?」

 なんか妙なことを言っている気がしたが、とりあえず気にしないことにした。

「しかし、お昼ご飯は食べてきたんだよなぁ……」

 身体を動かす予定だったので、腹いっぱいというほどでもないが、オフ会をやったファミレスで軽くご飯は食べてきたのだった。

「わたしは、異世界の料理というものに興味があるのだが、行ってきてもよいだろうか?」

 ダロウカちゃんが、期待に目を輝かせて、妖精さんズを見つめている。

「ああ、行っておいでよ」

「うん」

 ダロウカちゃんは、ててて、と小走りに走って行ってしまった。

 まぁ、キィさんの料理に限らずこっちの料理ってあんまり現実世界とかわらないんだけどな。

 いつの間にか、神殿の巫女さんたちもやって来ていて、神殿前の広場はなんだか立食パーティじみた感じになって来ていた。俺たち以外にも現実世界からやってきている人達や、それにサークリングスの街の有力者たちなのだろうか。こちらのルラレラ世界らしき人達も割といるようだ。

 ……そっか、シルヴィの創ったダンジョンのお披露目会みたいなもんだしな。

 ちょっと来て、すぐダンジョン潜って遊ぼうと思っていたのだが、シルヴィもあちこで挨拶回りを始めているし、案内を頼むわけにもいかないようだ。

「あー、うん。何か飲み物でももらってくるかな?」

 飲み物を配っている巫女さんの台車の方を目指そうとしたとき、こちらに向かってやってくる人達に気が付いた。

「よう、もしかしておまいさんが週末勇者なん?」

 小太りの中年男。ダロウカちゃんと一緒に冒険した、サボリーマンだった。隣には、革のツナギを着たマジゲロ、それにどういった関係なのか、勇者候補生の真人くんまで一緒だった。

「……あ、ええと。ハジメマシテ?」

 小さく頭を下げると、サボリーマンは何度か瞬きをして、それから「はぁん?」と奇妙な声を上げた。

「……なるほど、あんときおったんは魔王ちゃんやなくておまいさんやったってことかい」

 やべぇ、なんかティア・ロー関係で関わった人たちにぼろぼろ俺の正体がばれてるっポイ。

「なんのことでしょう?」

 とりあえずごまかしてみたが、サボリーマンはあいまいにうなずいて「まぁええわ」と言った。

「あれ、げろりんちゃんの隣にいるのって、げろりんちゃんそっくりじゃん? もしかして魔王ちゃんか」

 マジゲロが、すらちゃんと二人並んで話をしているまおちゃんを見てつぶやいた。

「おー! 魔王ちゃん、ほんまに美少女やん」

 サボリーマンとマジゲロは、ぺこり、と俺に一礼だけして、そそくさとまおちゃんの方に行ってしまった。一人残った真人くんが、ちょっと苦笑しながら話しかけてきた。

「ああ、どうも、鈴里さん」

「ああ、真人くん、こんにちは。午前中何か用事があるって、もしかしてこっちの手伝いでもしてたの?」

「ええ、このダンジョンへ招待する人たちを迎えにね、あっちこっち飛び回ってました」

 真人くんは、すっかり運び屋さんになってしまったようだ。

「そっか、大変だったんだね」

 その時、いつも真人くんと一緒にいるはずの和服女神ティラちゃんの姿が見えないことに気が付いた。

「あれ、ティラちゃんは一緒じゃなかったの?」

 尋ねてから、そういや真白さんも今日は洋風女神フィラちゃんと一緒でなかったことに気が付いた。

「ああ、ティラとフィラはなんか向こうの方で何かあるらしくて、今日はセラ世界の方です」

「ふーん?」

 ……そういや、うちのルラレラも寧子さんに呼ばれてそれっきり戻って来てないな?

 何かあったんだろうか。

「あ、ちょっと聞きたいんやけど?」

 そこへサボリーマンが戻ってきた。

「ちみっこ女神ちゃんって、今日はおらんの? 勇者候補生んとこのも週末はんとこのも、誰一人みかけへんけど?」

 そういや、サボリーマンはまおちゃんと、それからうちのルラレラに会いたいとか言ってたっけ。

「うちのちみっこたちは、こっちに居るはずなんですけどね。今どこにいるのかはちょっと」

 闇神メラさんに聞けばわかるだろうか。いや、あいつらも電話持ってるんだし電話してみるか。そう思ってスマホを取り出したのだが。

 ……いっつも一緒に居たから、ちみっこ達の電話番号とかわからねぇ。

 思い起こせば、ルラレラと電話で話したことはこれまで一度もなかった気がする。

 寧子さん経由で連絡とってもらうかな?

「なあに、太郎。ちみっこ女神ちゃんって。まだ幼女増えるの?」

 取り皿におかずをいっぱい載せたりる姉が、やってきた。

「……ええ、まぁ」

 一番のちみっこったちだしな。りる姉も異世界関係に関わってしまった以上、きちんと紹介しておいた方が良いだろうと思う。

 さて、と電話をかけようとしたら、とたんにスマホがぶるぶると震えだした。

 このタイミングの良さは。

 画面をみると、思った通り、寧子さんからだった。

「はい、太郎です」

『ねいこちゃんです。たろーくん、今うちの子のセカイだよね?』

 あれ、寧子さん、なんかいつもとノリが違う。やっはろー、とか、はろはろー、とかふざけた挨拶が全くない。

「はい、ダロウカちゃんやまおちゃん、真白さんたちと一緒に来たとこですね。闇神神殿前にいます」

『状況はわかってるー?』

「……なんの話ですか?」

『ルラは光神神殿に、レラは闇神神殿に居るよっ。あたしがあんまり深くかかわるとルール違反になっちゃうから、この辺でね』

 ぷつん、と電話が切れた。

 いつものガチャンという音がしないところをみると、三毛猫の実験室にあったあの黒電話ではないのだろうか。

「……」

 何が、起こってるんだ?

 妙な不安が胸に湧き起こる。俺の知らない何かが、裏で進行しているような。


 ――不意に、脳裏に何か感じるものがあった。


「――ッ!?」

 思わず傍らにいたみぃちゃんをかばって、振り向くと。

「にゃはは、意外と勘がいいにゃー?」

 両手をわきわきとさせた、にゃるきりーさんが。お酒でも飲んだのか真っ赤な顔をして、ぷっはーと息を吐いた。

 ……どうやら、みぃちゃんを見かけてねこみみをモフろうとしたらしかった。


 ――ほんとにもう、人騒がせなっ!

 なんかいろいろ消化不良……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ