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週末は異世界で~俺的伝説の作り方~  作者: 三毛猫
第四話「勇者と書いてょぅι゛ょと読む」
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23、「みぃちゃんの告白」

ちょっと少な目。あとで増量するかもデス。

 何が起こったのか、何が起こっているのか、俺には、まったく、これっぽっちもわからなかった。

 ゲートから突然現れた謎の少年。

 明日の昼頃には到着するという話だった、みぃちゃんがなぜいきなりこの場に現れたのか。

 そして。

 なんで、目の前で。

 首を、はねられてしまったのか。



「――みぃ、ちゃん?」

 俺の呼びかけに答えはなく。崩れ落ちた小さな身体と、わかたれたねこみみの生えたその小さな首からは、ただの沈黙しか帰ってきはしなかった。

「……トカゲのしっぽか。なかなか面白い駒を使う」

 謎の少年は、薙ぎ払った自らの右腕を不思議そうにしばらく見つめていたが、不意に顔を上げて俺を見つめてきた。

「なにがッ、面白いっていうんだッ!」

 謎の少年をにらみつける。

「貴様の駒が面白いといった。ふむ、この場で終わらすのが惜しい気もしてきたな……」

 少年は小さく口の端を吊り上げ、初めて俺のことを意識したかのように見つめてきた。

「まだ何かあるなら、出し惜しみしないで見せてみろ。少しはセカイが終わるまでの時間が伸びるかもしれないぞ?」

 その言葉に、目の前が、真っ赤になった。

 言葉にならない。

 思考にならない。

 感情が、ただ俺の中をぐるぐると渦を巻いて、頭の先から、両の掌から、にらみつける両の眼差しから、あふれ出るようにして視界を紅く染めてゆく。

「――何様の、つもりだ、お前」

「見方によって変わる在り方に意味などはないが。貴様からみれば、セカイを滅ぼす魔王様といったところだろう」

 少年がマントを翻すと、どこかの学校の制服のようであったブレザーが、重厚な雰囲気をもつ黒い長衣に変わった。

「抗ってみろよ」

 挑発するかのように、両腕を広げて顎をあげた少年を見て。

「にゃあああああっ!」

 俺は、感情のままに飛び掛かった。




 精一杯に爪を伸ばして、殴りかかる。避けるしぐさすらなく、まるで俺自身が見当違いの場所を狙ったかのように爪は空をかいた。ぴこん、と耳を立てる。

 後ろ!

 かすかな足音を感じて、ふり向きざまに殴りかかる。しかし気配だけで少年の姿はなく、また爪は空をかいた。

 武器は。

 木の棒では、だめだ。あんなことをした相手を、棒で殴るだけでは気が済まない。

 剣が欲しい。ソディアは。

 ダメだ。今の俺の体格では、ポケットから引っ張り出すことすらできない。

「……バカだろう、お前」

 少年の声が、目の前からした。

 その声に、はじめて少年が一歩も動いていないことに気が付いた。その足元にはまだ崩れ落ちたみぃちゃんの身体が横たわっていて。

 俺は、動いていない相手にすら。

「まさかお前、自分が少年漫画か何かの主人公だとでも勘違いしてるんじゃなかろうな? 怒りのままに、ただ我武者羅に殴りかかれば、秘められた力が覚醒して奇跡が起きるとでも?」

 両腕を広げてガードを開けた体勢のまま、少年はつまらなそうにため息を吐いた。

「……とんだ時間の無駄だった」

 少年が、足元に横たわっているみぃちゃんの身体を無造作に持ち上げた。

「この駒は戦利品としてもらっていくことにしよう」

 脇の下に腕をさしこみ、胸をもみしだくかのように抱え上げ。その無残な断面をこちらに向ける。

「――ッ!」

 それを見た瞬間。

 真っ赤に染まった視界が、色を無くした。

 無造作に、セカイに手を突っ込んで、そこから引っ張り出す。

 俺はそれを見たことがある。触ったことがある。あれは世界の一部で、だからどこにでも存在するもので、だからここにだって存在する。

 ”世界を切り裂くつるぎ”。

 武器は手に入れた。あとはそれをふるう俺自身だけ。

 ねこみみも悪くはないが、やはりこの体は幼すぎて戦うには向いていない。

 だから「書き換える」。俺自身を作りかえる。

 この剣を振るうにふさわしいモノへと創りかえる。

 腕を伸ばし、脚を伸ばし、力と体力と、そして覚悟を。

「――お前を殺す」

 全力で振り下ろした一撃は。

「やれるものなら、やってみろ」

 少年の腕に阻まれた。




 つるぎを振るうたびに、世界が切り裂かれてゆく。ぼろぼろと崩れ落ちてゆく。

 それなのに。

 薄ら笑いを浮かべる、魔王を名乗る少年ただひとりが壊せない。

「自らをひ弱な仮想体におしこめているなど、ずいぶん悪趣味な輩だと思っていたが。本気をだしてもそんなものか?」

「……」

「セカイで最強の剣など、そのセカイでしか通用しないものだろうに、そんなこともわからんシロウトかお前は」

 少年は嗤うが、俺の剣は確かにアイツを削り取っている。あいつのセカイを切り取り、滅ぼしている。だが、俺が操る程度の力では、削りきれない。

 ――みぃちゃんを、取り返せない!

「……いやー、盛り上がってるとこ悪いんだけどさ、ちょーっとすとっぷね」

 不意に聞こえてきたのは。

「……寧子さん?」

「……なんだ今のは」

 少年ともども、まるで時間が止まったかのように身動きが取れなくなる。

「イベント終わったから開発サーバーいったん落そうとしたのに、どっかからログインしてる人がいます、って警告出てさー。んで調べてみたらなんかあんたらがバトルしてたわけだなんだけど……」

 姿は見えず、寧子さんの声だけが響く。

「そもそもあんたらどっから入ってきたわけ? 強制排出しちゃうけどいいよね? ってゆーかウチの子のセカイってまだ一般には非公開だし、それ以前にここ開発用のサーバーだしほんとどうやって入ってきたんだか」

「……開発用、だと?」

 少年が怪訝そうな顔で虚空を見つめた。

「この声の主、お前が本当の管理者か?」

「いやこのセカイはうちの子が創ったセカイで、あたしは監督というか監修というかそういう立場なわけなんだけど。まぁ何でもいいからとりあえず出てってくれるかな?」

「いや、お前が管理者であるというなら、勝負を受けてもらおうか」

「やだぷー。開発サーバーとはいえ、勝手に人のセカイに潜り込んでおいて好き勝手するようなマナー違反と遊ぶ気はないよ。遊んでほしければ、正規の手続き踏んできなさい。ってわけでさようなら、っと」

「――待てッ! お……」

 目の前の少年が、をこつ然と姿を消した。

「で、次はそっちのお嬢ちゃんかな。どこの女神かしらないし、なんでこんなとこでバトルなんかやってたのか知らないけど、とっとと帰ってくれる?」

 ……あれ、寧子さん、俺のこと認識してない?

「いや、俺ですよ、寧子さん」

「今時オレオレ詐欺かな?」

「太郎ですよ。鈴里太郎です」

「……えー?」

 寧子さんの驚いたような、疑うような声がホールに響き渡った。

「うちのたろーくんは、そんな美少女じゃありまっせんっ!」

「いや女体化したの寧子さんのせいでしょうが……」

「えーっ? あたし心当たりないよっ?」

 ……寧子さんのせいじゃない?

 それに、これまで大抵の俺の知り合いは一目見て俺のことを鈴里太郎だと認識してくれたのに、なんで寧子さんは俺のことがわからないんだろう?

「いや、ルラレラ世界に来たらいきなりねこみみ幼女になったんですが」

「あなた、ねこみみ生えてないよ? 幼女ってほど幼くもないみたいだし」

 言われて初めて気が付いた。鏡などがないから自分の姿を確認できないが、手足がすらりと伸びていて、ずいぶんと視線が高くなっている。

「まぁ、なんでもいいや。とにかく一回サーバー落とすから。半端に本サーバーと同期してるせいでこのままだと悪影響がでかねないのよ」

「そういえば……」

 開発サーバー?とか言ってたようだけど。ここは、ルラレラ世界とは違うのか?

 それじゃあ。

 目の前で死んでしまった。みぃちゃんは。

 ほんものじゃ、ない?

「……あれー、もう一人いるなー。って、みぃちゃんか」

「……え」

「いいや、まとめて引っこ抜くよ」

「え、あ」

 ふわりと宙に浮かぶような、そんな感覚とともに。

 気が付くと俺は、どこかで見たような部屋の中に居た。ぐるりとまわり見回すと、なんとなく見覚えのあるカプセル型のベッドに、白衣を着た寧子さんが腰かけていた。

「やっはろー! ようこそあたしの実験室へ」

 小さく手をあげて、寧子さんがにやりと笑う。

 そうか、ここは俺がルラレラ世界に行くときに何度か訪れたことのある、寧子さんの実験室か。

「……って、あれ、みぃちゃん首ちょんぱしちゃってるけど、だいじょぶなの?」

「そうだっ! 寧子さんなら、治せますよね? みぃちゃん、助けられますよねっ?」

 俺と一緒に、みいちゃんの身体も転送されてきていたらしい。そっとその小さな身体を抱き抱えて、それから無残に切り離された首を抱き上げる。

「いや、ちょっと待って。あなた、ほんとにたろーくんなわけ?」

 無残なみぃちゃんの姿には目もくれず、俺を見つめて寧子さんが眉をひそめる。

「だから、太郎ですってば。そんなことより、みぃちゃんを助けてあげてください!」

「いや、そんなことってゆーけど、割と重要だから。あなたがたろーくんだとすると、あまりに変異が大きすぎる。そもそもの在り方が違っちゃってるし……」

「だから、俺よりみぃちゃんを」

「あー、それ無理。あたしは神様だけどね、できないことはなくても、やらないことってゆーのは結構あるんだよね」

「……死者の蘇生は、対象外だとでも? 俺が死んだときには生き返らせてくれたのにッ」

「いや、そーじゃなくって」

「じゃあ、どういうことなんですかっ!」

「助けるも何も、みぃちゃん死んでないしー? どこも悪くない人間の身体をいじるようなこと、あたしはやらないのでーす」

「は……?」

 思わず、抱きかかえたみぃちゃんの首を見つめると。

 しっかりと、目が合った。

 ぱち、ぱちと瞬きをして、小さく口を開けるみぃちゃん。

 こんな姿で生きているって。

 驚いて茫然としていた俺の指が、不意にずきりと痛んだ。

「いたっ」

 見ると、みぃちゃんが俺の親指に噛みついていた。


「(……私は、飛頭族(デュラ)の血を引いているのです)」

 脳裏に、みぃちゃんの声が響いた。

 ノートン先生のせいでIEがいかれたのをきっかけにPCをXPからwin7の予備機にとっかえたせいで、どうにもキーボード打つのがなれなかったりとか、体調がよくなかったりとか、お仕事忙しくて書く時間取れなかったりとかいろいろあって遅くなりました……。へぼいですが完結させる気はあるのでもうしばらくおつきあいくださいませ。

 掲示板2つはさんでえぴろーぐの予定です。

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