表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
週末は異世界で~俺的伝説の作り方~  作者: 三毛猫
第四話「勇者と書いてょぅι゛ょと読む」
120/246

 1、「ばーじょんあっぷのおしらせっ!」

 下ネタ注意報発令!

 見たくない方は★☆★あたりまで読み飛ばしてください。

 トイレの前で、膝までぱんつをずり下ろしたまま。

 ぱんぱんと股間を叩いて、再度そこに何もついていないことを確認し、さらには自分の股間を見つめて、やっぱり何もついていないことを目で確認した俺は思わず叫んだ。

「……タ……タマがねえ…!? チ……チンも……」

 ど、どこに落としたんだろう。

 あたふたと下衣とぱんつを脱ぎ捨て逆さにして振ってみたが、何も出てきはしなかった。

 困った。非常に困った。見た目が子供になったところで、ちょっと驚きはしたもののそこまで困りはしなかったのだが。男として大事な物が無くなってしまっていると言うのは、とんでもない喪失感だ。アイデンティティの崩壊と言ってもいい。自分が自分であるという根底が失われてしまったように感じられる。ぐらぐらと自分という物があやふやになる。

 身体の中心で一本、常に在り続けていたものが失われているというこの状態が、ひどく恐ろしく心細い。尿意を我慢していることもあって、自然と内股になって膝をすり合わせてしまう。

 なにより! これだけ小便がしたくてたまらないのに、アレがないと出しようがねぇっ!

 ……どっからだせばいいんだよっ!

 下半身丸出しで、頭を抱えて思い悩む。

「……って、え?」

 まてよ、と、そっと股間に手を伸ばして確認する。

 単純に、男の大事な物が無くなってしまったのだと思っていたが、もしかして。

「んあっ……」

 つぷり、と指先が――あるはずがないものの中に沈み込んだ。未知の感覚に、背筋がぞくりとする。

「って、まさか、俺、女になってんのか……?」



 ……何秒か思考停止していたらしい。

 胸でもあれば、起きた時に気がついてたのかもしれないが、どうやら第二次性徴もまだらしいこの身体では、男女の区別もつかないほどぺったんで、おまけにつるつるだ(何がだ)。

 顔も割と中性的な感じだったから今まで気がつかなかったのも仕方ないといえば仕方ないのだろう。

 ――しかし。

 女になってる、ってことは、俺、座って小便しなきゃいかんのか? 女ってどうやって小便するんだっけか。

 半ば茫然としたまま、俺は便座を下ろし、そこに腰を下ろそうとした。

「――ひゃ!」

 しかし、子供の小さな尻はすっぽりと便座の穴にはまってしまい、危うく尻が濡れてしまう所だった。しょうがないので脚をがばりと開いてやや前よりに腰掛けるようにすると、今度はうまく腰掛けることが出来た。

 ルラやレラもこんな苦労してるんだろうか。というより、俺、もしかしてルラレラより幼い姿になってる気もするな。

 ……それにしても。

 がばりと脚を開いて座ると、否が応でも気になってしまう。学生時代に付き合っていた女性もいるし、ネットを漁れば無修正の画像がゴロゴロしているような世の中で、女性のそこを見るのがまったくの初めてだなんてことは言わないわけなのだが。

 ううー。違和感がすごすぎる。これほんとに俺かよ。

 特に女性願望があったわけでもなし、さらに言えば幼児性愛の気もない俺にとって、自分が女になってしまっていると言うのは、なんというか「何か違う」としか言い様が無かった。

 しかし。どうやって小便すりゃいいんだろ。

 下腹に力を入れてみるものの、男であったときと違って、ここをこう、というその「ここ」にあたる部分がよくわからない。というか今の俺には存在しない。

 女は構造上、男より尿を溜めて置けないという話を聞いたことがある。ゴム風船を膨らませて、その根元を押さえるのと、先っぽを押さえるのとではどちらが楽かという話。

 つまり、さきっぽが無くなった俺は、根元の方をなんとかすればいいのだろうが。

「んーっ」

 尿意は耐え切れないほどなのに、いくら踏ん張っても出るものが出ない。

 いや。

 ……ぷす、とかわいい音がしてオナラがでた。力を入れるところを間違っているのだろうか。

 その時、入り口のドアの外からレラの声がした。

「おにいちゃーん、スマホあったの! ディエが巣に持ち込んで、抱きしめて寝てたの」

「お、そうか。すまんがテーブルの上にでも置いといてくれ」

 よかった。家にはあったんだな。

 ディエの巣というのは、迷宮で初めてディエンテッタを紹介されたときに入っていた木製の箱のことだろう。あれ中に低反発素材っぽいのが詰まってて寝心地よさそうだったし、サイズ的にそこら辺で寝られるとうっかり踏んじゃいそうだから、ああいうので寝てもらったほうが都合がよいのだった。

 ってか俺のスマホ抱きしめて寝てたって、もしかして電気アンカ代わりにでもしてたんじゃなかろうな?

「でもって、おにいちゃん! 後がつかえてるのではやくおトイレすましてほしいのー」

「はやくしてほしいのー!」

「あ、ルラももう起きて来たのか」

 ルラレラの二人にせかされて、俺はもう一度「んんー!」と下腹に力を入れてみたが、どうしても出るものがでなかった。

 これだけ尿意を覚えているのに、なんで出ないんだろう。

「……なぁ、変なこと聞くが、女ってどうやっておしっこするんだ?」

 思わずドアの外に問いかけてしまった。

「……女の子の放尿シーンを想像して自家発電でもしてるのかしら?」

 やや呆れたような、レラの声が聞こえた。

「おにいちゃん変態さんなのー」

「いや、自家発電とか違うし」

 慌てて否定をしたものの、からかうようなレラのくすくす笑いが止まらない。

「あら、興味があるなら、見せてあげてもいいわよ?」

「いや、結構ですっ!」

 ますますもってあせるものの、あせればあせるほど訳がわからなくなる。

「……」

 不意に、がちゃりとドアが開いた。

「あ」

「あら」

 がばりと開いた俺の股間を見つめてレラが目を丸くした。

「女の子の放尿シーンを想像して自家発電とか……変態さんね、おねえちゃん?」

「言い直さなくて良いからっ!! ……女が女の痴態想像してとか変態のグレードあがってるしっ! ってか自家発電という発想から離れろって、ああもうドア閉めてくれよっ!」

「……」

 叫ぶ俺にかまわず、無言でレラが入ってきた。

「あ、こら」

 そして、にやぁ、と嫌な笑みを浮かべると、そっと俺の両頬に手を当てて。

 あ、と思う間もなく。

 レラの唇が、俺の口を塞いでいた。

「ん……っ!?」

 ちろり、とその小さな舌が俺の口腔に押し入ってきて。

 訳がわからず、息も出来ず、頭が真っ白になったその瞬間。下半身の緊張が緩んだ。

 トイレに腰掛けていたから問題なかったけれど、気分的にはお漏らしだ。いきなりキスされてお漏らしとか、どんな変態だ俺!?

「んふっ」

 俺から顔を離したレラは、口の端からよだれをたらしつつ、その唇を小さな舌でぺろりと舐め回した。

「悪いわね、わたしは女の子を落ち着かせる方法をこれしか知らないのよ」

「お前はどこの洋画の主人公だっ!」

 無駄にダンディだなっ!

 ……っていうか、現在進行形で他人に見られながら放尿中というこの羞恥プレイをどうにかしてください。オネガイシマス。

「レラだけずるいの! わたしもおねえちゃんにキスするのー!」

「うわ」

 突然飛び込んできたルラも、俺の首の後ろに手を回すようにして。

 むちゅう、とされてしまった。

 いや、だから、俺、まだ終わってないんですけど……。いい加減、泣きたくなってきた。

「大体、おしっこするのに力入れる方が間違ってるの!」

「普通はゆるめるものなの!」

「はい、理解しました……」

 ため息を吐く。がちがちに緊張していたら、出るものも出ない。レラのキスで力が抜けて、出すことに成功したのだろう。

「だから、ほら、いったん出てくれよ恥ずかしいだろう」

「ちゃんとお股拭くのよ? おちっこくちゃいおねえちゃんはイヤよ?」

「きれいにするの!」

「分かったからっ!」

 ……まだしたしたと雫が垂れている。確かに構造上、男と違ってさきっちょをぶるんとやるわけにもいかない。

 ルラレラを追い出した俺は、非常にやるせない気分で丁寧に下半身を拭った。ぐにゃりと柔らかい。

 ――なんか、涙がでてきた。



 ……なんかもう、何もかもどーでもよくなった気が。

 入れ替わりに入ったレラが、「わたしのおしっこするとこ、見てもいいのよ」とか言ってたが無視して部屋に戻った。

 買い置きの女児用ぱんつはまだあっただろうか。シルヴィとりあちゃんに何枚か提供したが、まだもう少しあったとは思うのだが。

 以前の俺のぱんつでは今の体格にあっておらず、手で引っ張りあげていないとずり落ちてしまう。不本意ながら最低着る物はルラレラのものを借りないと、外にも出られない。

 適当に借りて、着替えると、またため息が出た。

 子供用の色気のないぱんつで、まだマシだったかもしれない。これがもう少し大きくなると、妙に布面積の少ない、ちっちゃい布切れ穿く様になるんだろうなー。

 ……現在の外見はともかく、中身は二十四歳の男だから、それは流石に抵抗が大きい。

「あ、おねえちゃん、朝ごはんはわたし達が作るから、のんびりしてていいのー」

 トイレからでてきたルラが、顔だけのぞかせて言ったのでお言葉に甘えることにする。

「ああ、すまない。今朝は頼むな」

 気を取り直してスマホを起動すると、メールが一通着ていた。

 寧子さんからだ。

 掲題は……ばーじょんあっぷのおしらせ。



 ★☆★


   件名:ばーじょんあっぷのおしらせっ!

   To:たろー君

   From:ねいこちゃん


   やっはろーっ! たろーくん、あいらっびゅーん! ねいこちゃんどえーっす。

   このメール届いた時はまだメンテ中だとおもうけどっ、

   ばーじょんあっぷのおしらせでぃーっす!


   ■システム関係

   ・個人でのログイン/ログアウトのシステムを実装しました!

    今までうちの子達と一緒じゃないと異世界いけなかったけど、

    たろーくんだけでも行けるようになりまっす!

    まぁこれは、まおちゃんが一緒だとたろーくんが日帰りになっちゃって

    自由に冒険できないから、という面もあって実装したよっ!

    まおちゃんも一人で異世界に行き来できるよ!

    ロラちゃんたちもたろーくんたちと別れて行動することになりそうだしね。

    ログインは今まで同様電車で、ログアウトは各街の神殿でしてくださいっ!


   ・ログイン用のプライベートエリアを実装しました。

    先月のレポートでたろーくんが言っていたログイン画面みたいなものを作りました!

    今までのように直接異世界にも行けますが、

    いったんログイン用のプライベートエリアを経由できるようになりますっ!

    このプライベートエリアには不要なアイテムを置いておける、倉庫のような機能があります。

    破魔の剣ソディアちゃんとか、布で包んで持ち歩いてたけど

    こっちの世界じゃ銃刀法違反だからね(笑)。

    異世界の行き来の際にぜひご利用くださいっ!

    今後、プライベートエリアを経由すると好きな神殿からスタートできる機能も実装するカモ?


    また、これにあわせて簡易的なマジックポーチ機能をテスト実装しましたっ!

    いわゆるアイテムボックスってやつだねー。

    ほら、迷宮で結局ディエちゃんと交換しちゃったから手に入らなかったでしょう?

    便利そうなのでちょっと実験的に実装してみましたっ!

    前述のプライベートエリアに置いたものをある程度自由に入れたり出したり出来ます。

    テスト実装なので色々制限ありだけど、あわせてご利用くださいねっ!


   ・こちらの世界と、異世界の時間の流れが一致するように修正されました。

    散々つっこまれていた時間の流れに関して、

    暫定的にこちらの時間と基本的に一致するように修正しました。

    もっとも色々例外はあるけどね。

    たろーくんがスマホ渡しちゃったからー、

    向こうとこっちで時間がずれるのは今後の冒険に支障があるかなって仕様変更しました。

    週末に異世界行ったら、時間がずれてて前に話したこと知らないとかってイヤでしょう?

    ……べ、べつに、辻褄あわせるのが面倒になったせいじゃないんだからねっ!?


   ■バトル関係

   ・街周辺のモンスターの種類、強さを調整しました。

    たろーくんのご意見を反映して、一部モンスターの強さを修正しましたっ!

    どっちの方向にかは、ナイショ。


   ■???

   ・???を実装しましたっ!

    うふふー、次回ログインしたときのお楽しみだよっ!

    初回は強制なので、テストにご協力くださいっ!



   以上、簡易的なものですがばーじょんあっぷのおしらせでしたっ!

   なお、あたしはしばらく違う時間軸にいますので、

   このメールに返信してもしばらくはお返事できまっせん!

   たろーくんの主観で一週間くらい留守にすることになると思います。

   次回のログイン後、レポート出せとまでは言わないけど

   感想とか教えてくれるとうれしーです。


   でわでは、ばっはは~いっ!


 ★☆★



「……」

 相変わらず無駄にテンションたけぇな、寧子さんは。

 それにしても、今の俺の状況に関する説明がないようだけど、寧子さん関わってないんかな?

 ……いや、???ってゆーのが気になるな。

 ルラレラ世界いじろうとして、もしかしてこっちの世界にも影響とかでたんじゃね?

 要するに、バグでてるんじゃないかと思うのだが。

 しかし、一週間ほど留守にする、か。電話してもつながらないんだろうか。

 時間軸が違うとか意味不明なこといってるから、無理かもな。


 ……明日からはまたお仕事に行かなきゃいかんわけなんだが。

 このままだったらどうしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ