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週末は異世界で~俺的伝説の作り方~  作者: 三毛猫
第四話「勇者と書いてょぅι゛ょと読む」
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ぷろろーぐ

第四話開始ですっ! ちょっと短め。

 なんだか、ちょっといい気分で目が覚めた。

 良く覚えていないが、何か良い夢でも見ていたのかもしれない。

 ここ数日あった、いろいろなことを夢で見ていたような気もする。

 一昨日の土曜は、勇者候補生達と一緒にセラ世界で迷宮攻略をした。本当のダンジョンアタックというよりは大分テーマパークじみていたけれど、割と楽しめたと思う。まおちゃん達までやってきていて最後はとてもカオスだった。色々あってなんとかクリアしたものの、セラ世界の冒険が俺的伝説にはノーカンだというのはかなりショックだった。

 昨日の日曜日はまおちゃん達と買い物に出かけた。まおちゃんがスラちゃんにスマホを買って上げたいということで、俺もシルヴィにねだられてりあちゃんの分も合わせてスマホを買った。その後はルラレラ世界でちょっとした打ち上げのような宴会をした。またスラちゃんが大暴走したり、底なし胃袋のディエがお代わりしまくりでお金が足りなくなりそうになったり、まあ色々あったけれど概ねいつものドタバタ劇だ。

 そうして、今日は三連休最終日の月曜日。本当なら今日もルラレラ世界の冒険をする予定だったのだが、寧子さんがなにやらルラレラ世界のメンテナンスをするということで異世界行きを止められた。ロアさんとみぃちゃんはこれまで何か調べていたことの手がかりが見つかったらしく、早く西の方に行きたがっていたけれど、メンテじゃしょうがないってこっちに戻ってきてるんだよな。

 何にしても、久しぶりの異世界に赴かない休日だ。


 ――さて、今日は何をするか。


 ふぁあ、とあくびをしながら起き上がろうとして、いつもの重さを感じないことに気がついた。いつもならルラとレラが俺の肩を枕にするようにして両側から抱きついて眠っているのを、起こさないようにそっと頭の下から腕を引き抜くところから俺の朝が始まるわけだが。

 今日は肩が軽い。

 ふと顔を横に向けると、すぐ目の前にレラの寝顔があった。

 うお、近い。

 ちょっとびっくりして、それからすぐに違和感を感じた。

 ……って、あれ? レラってこんなにおおきかったっけ?

 成長した、というわけではないのだが、単純にサイズが一回り大きくなったような。

 反対側を見る、とルラの寝顔があった。やっぱり大きい、気がする。

 んー、と自分の手を目の前で広げてみて、握ったり開いたりして。

「……ってゆーか、俺が縮んでるんじゃね?」

 思わずつぶやいた声が、自分のものとも思えない。細く、高い声。

 がばり、と起きて掛け布団を跳ね除けたら、寝巻き代わりの作務衣がずるりと肩からずり落ちた。朝の冷たい空気に、肩がぞくりと震える。

 ぺたぺたと自分の肩から身体を触って確かめる。

 もともとそれほど背が高い方でもなかったし、ガタイがよいわけでもなかったが、今の俺はすっかり縮んでしまっていた。

 ……ルラレラと同じくらい、か?

 ぐるりと部屋を見回す。なんだかとても広くなったように思えた。

 首の辺りがくすぐったくかんじられて、手で触ると、髪の毛が長くなっていた。

 って、髪の毛の色、銀色になってる!?

 レラを踏まないようにそっとベッドから飛び出し、ずり落ちそうになる下衣を引っ張りあげながら洗面所に向かう。まともな姿見は洗面所にしかないのだ。

「……ぐは、ちっこすぎて鏡が見れねえ」

 ぴょん、ぴょんと飛んでみるものの、背が低すぎてよく見えない。姿見と言ったものの、洗面台にあるものは割と高い位置にあって、普段でも肩から上しか写らない。ヒゲを剃ったり髪を整えたりするためのものだから当然と言えば当然であるのだが。

 とはいえユニットバスの風呂場には、踏み台にあるものがいくつもある。俺はフタを閉めた洋式トイレを踏み台にして、よいしょとばかりに洗面台の上によじ登った。

 鏡の前に、顔を映す。

「……って誰だよオイ」

 鏡の中には、銀髪・紅目の非常に整った、中性的な美少年の顔が映っていた。肩まで伸びた銀髪もあいまって、美少女でも十分通用しそうだ。どことなく俺の幼少のころに似ていなくもないけれど、俺がガキのころはこんな女子がキャーキャー騒ぐような美形ではなく鼻タレの悪ガキだった。

 ぺた、ぺたと自分の顔に触れてみるが、確かに鏡に映っているのは俺のようだった。

「何でいきなり、こんな知らない子供の姿になってるんだ……?」

 こんなことをしそうなのは。

 ばたばたと部屋に駆け戻ってレラを揺り起こす。

「おい、レラ、起きてくれ、これどういうことだよっ?」

「……んー、どうしたの、お兄ちゃん……?」

 だぼシャツ幼女のレラは、目をこすりながらむくりと起き上がり、それから俺の姿を見て首を斜めにした。三秒ほどそのまま固まっていて。

「……」

 黙って布団をかぶって横になりやがった。

「いや、夢じゃないから!」

 もう一度揺り起こすと、レラはあくびをしながら起き上がった。

「……ずいぶんかわいくなっちゃったわね? お兄ちゃん」

「お前らの仕業じゃないのか?」

 肩をつかむようにして揺さぶると、レラはがっくんがっくんと首を揺らした。

「め、目が回るから止めて欲しいのー」

 目を回したレラを見て、ちょっとだけ冷静になった。

「すまん、いや、でも、これどういうことだよ?」

「勘違いしてるようだけれど、お兄ちゃん? わたしとわたしは、わたしたちのセカイにおいて万能なのであって、ママの世界においてはそれほど大したことはできないのよ?」

 レラが困ったような顔で笑みを浮かべながら言った。

「……ってことは、これ寧子さんの仕業かっ?」

「たぶんそうだと思うわ」

「電話して聞いてみるか!」

 慌ててスマホを探す。昨夜はどこに置いたんだっけか。

 ここ何日か、俺のスマホはずっとシルヴィが握っていたので咄嗟に思い出せなかった。

 あれ、まさか、シルヴィに貸しっぱなしじゃないだろうな?

 昨日、まおちゃん達と買い物に行った後、みんなでルラレラ世界で宴会みたいなことをして。

 押しかけ女房するにも神殿に筋を通さねば、というりあちゃんと、まおちゃんに迷惑をかけたくないというすらちゃんはルラレラ世界に残った。

 買い物でスマホをゲットしたシルヴィも、領主としての仕事があるのであまり何日もは開けていられないと家に帰った。きっと家でネット三昧してるんだろうけど。

 あのとき、俺のスマホは返してもらっただろうか。ちょっと記憶にない。

 いや、向こうでロアさん達と合流したときに、メンテがどうとか説明するのに寧子さんとなんか電話で話したよな。ってことはちゃんと俺が持ってたはずだ。

 そういや、あのあとリーアが持っていたような。ディエと一緒になにかしてたような気がする。

「リーア、俺のスマホしらないか?」

 寝袋に包まって、ソファーで眠るリーアに尋ねる。しかし、まったく返答がない。

 リーアは割と寝起きはいい方なんだが。寝息すら聞こえないほどぐっすりと、って。なんか死んだようにぴくりとも動いてないような?

「リーア?」

 揺さぶってみるが、まったく反応がない。

「あ」

 そういや寧子さんが言ってたっけ。ルラレラ世界のメンテを始めると、リーアのようなルラレラ世界に属するものは眠りっぱなしになるとか。

 寝かせとけばいいって言ってたけど、ちょっと心配になるほどだ。息をしているかも疑問に思えるくらい。そっと触れた頬が温かいので死んでいるわけではないと分かるけれど。

 それにしても、いつもならこちらから電話する前に、見計らったように向こうから電話かけてくる寧子さんなのに今日はいったいどうしたのだろう。メンテが忙しくてこっちにかまっていられないのだろうか。

 何気に、今まで俺から寧子さんに電話かけたことって無いような気がする。

「あーもう、俺のスマホはどこだー!」

 思わず声を上げた瞬間、ぶるりと身体が震えた。作務衣がずり落ちたあと、着替えずにそのままいたせいですっかり身体が冷えてしまったようだった。

「わたしの携帯電話をつかう? おにいちゃん」

「ああ、うん。ちょっと待て、その前にトイレ行って来る」

 身体が冷えてしまったせいか、尿意が我慢できなくなりつつあった。

 俺は作務衣を引っ張り出して羽織ると、慌ててトイレに駆け込んだ。




「うう、漏れる漏れるっと」

 さっき鏡を見ようと駆け込んだときに済ませておくべきだったな、と思いながら便座を上げ、下衣を下ろして小用を足そうと。洋式便器の前に立ったまま、右手でぱんつの中から引っ張り出そうとしたのだが。

「……あれ」

 何度引っ張り出そうとしても、なぜか右手は宙を掻いた。

 困ったぞ。これじゃ小便ができない。

 つるつると右手の指は下腹部を撫で回すばかりだ。身体が子供になってしまったとはいえ、まさか指でつまめないほどあそこが小さくなるはずもないのだが。

「……んー?」

 まさか寒さで縮こまってるんじゃないだろうな。それにしたっておかしな話だけれど。

 ぱんつごと、下衣を膝までずり下ろして下半身を確認する。


 そこには、あるべきものが――ついていなかった。

 ……と言うわけで第四話は誰得のTSモノデス。

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