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第4話 傷の痛み

 安楽椅子の上で嗚呼琉は眼醒めた。

 大学の超心理学研究室。

 見上げた天井には自分が入った部屋の蛍光灯状のLED発光器がある。

 半身を起こす嗚呼琉は、自分を心配そうに見ている両親と超心理学部顧問の阿部教授、そもそも自分をここに連れてきた刑事の立花に気づいた。後、部屋の中には数人の学生がいる。

 ゆったりと精神を落ち着かせるBGMが流れている。

 自分の手を見る。白い、骨ばった痩せた手だ。

「大丈夫かね」そう話かけてきたのは阿部教授だった。口から甘い香りがする「今かかっている催眠術を完全に解く。怖がる事はない。リラックスして」

 そう言うと教授は右掌で嗚呼琉の眼を覆った。

 まるで活を入れる様な小さな気合を口にし、そして手を放す。

「君」と立花という刑事が訪ねてきた。「催眠術は上手くいったかね。つまり、五年前に君を轢こうとした車のナンバーは思い出せたか」

 嗚呼琉は夢に見た全ての記憶が残っていた。

 セダンのナンバープレートに書かれたものを口に出して教えた。

 立花は、手帳型ケースに警視庁の記章が付いた黒いスマホに、嗚呼琉が言った言葉をゆっくりトグル入力する。

「助かったよ。捜査協力ありがとう。これで君はこの事件に関する事は全て終わりだ」

 立花はそれだけ言うと研究室を出ていった。スマホから捜査本部に情報転送する姿を見られたくなかったのだろうか。どうもスマホの操作に不慣れという雰囲気だった。

 嗚呼琉は安楽椅子を降り、床にそろえられていたスリッパを履いた。

 首に痛みを感じ、手をやる。

 擦り傷があった。

 サブロウという夢の登場人物にミニ・クーパーに押し込められる時、車体とこすって出来た傷と同じ位置だ。

 嗚呼琉はすぐ傍で不安そうに自分を見ている両親に訊いた。

「ただ今、父さん、母さん。……昔、僕にガールフレンドがいた事はあったのか?」

 他人に訊く話題ではないだろう。

 両親はただ笑っていた。

「捜査の為の実験はこれで終わりだが」阿部は嗚呼琉の肌に接触させていた脳波検知用のブロープを回収しながら訊いてきた。「個人的に君との実験は研究続行したい。よろしければ同意を欲しいのだが。書類は後日、作成して届ける」

 嗚呼琉はしばし迷った上で同意した。

 夢の中の登場人物であるはずの慈海に会いたかった。とても。

 夢で作った首の傷がとてもヒリヒリした。


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