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第五話 投げ銭

「まず、画面の説明をしますね。見てもらって頂いている通り、この神庭やお二人を模した人形のような物が映っていて、左上にはそれぞれの顔や名前が表示されていると思います」

「あ、はい」

「これはお二人の現在のステータス、身体情報や健康状態などを表していて、お二人の機嫌や体調などはこちらの顔に表れるようになっています。例を挙げるならば、とても疲れていたり体調が悪かったりすれば顔色が悪くなるので顔の部分を触って頂ければどのような状態であるのかが正確にわかるようになります」

「へえ……それじゃあノドカが無理しながら隠しててもノドカの顔を触れば丸わかりになるのか。まあ俺もそれは同じだけど」

「そうですね。そして画面内の神庭の地面を触ると、四角い枠で一つずつ区切られると思いますが、その枠の中に施設を建設したり山を作り出したりする事が出来るのです。

ただし、施設の大きさによっては枠を多く使う物もありますし、バランスを考えないと片寄った内容になってしまうので気をつけて下さいね」

「わかりました」



 返事をしてから私は画面に集中する。話を聞きながら触って調べた感じでは、画面内の神庭のマスの数はおおよそ81マスであり、思っているよりもマスに余裕はあった。


 けれど、余裕があると思って色々建ててしまったらごちゃごちゃとしてしまうし、この神庭を歩きづらくもなってしまう。だから、色々計算しながら建設なり環境の変化なりをしないといけないのだ。


 画面とにらめっこしながらどんな風にしようかと考えていると、ティアさんがクスクス笑う声が聞こえてきた。



「安心して下さい、発展を進めていけばこの神庭も更に広がり、使えるようになる土地も増えますから」

「……あ、たしかに発展レベルっていう項目がある」

「発展レベルが上がれば、神庭は自動で拡張されていきますし、建設が出来る施設も少しずつ増え、施設のグレードアップも出来るようになっていきますよ」

「発展レベルを上げるにはどうすれば良いんですか?」

「指定された施設や用具などを作る事で上がりますよ。それと……お二人とも、画面内の顔の部分を触ってもらえますか?」



 その言葉に従って揃って顔のアイコンをタップする。すると、私達の状態などが表示されたが、そこには見慣れない言葉もあった。



「絆レベル……?」

「これはお二人の絆の数値を表した物です。お二人が協力やコミュニケーションをする事で経験値が貯まっていき、一定の値になれば絆レベルは上がります。

因みに、コミュニケーションには他にも効果がありまして……和さん、試しにゴドフリーさんの手を軽く握ってもらえますか?」

「あ、はい……それじゃあちょっと握りますね」

「ん、ああ」



 ゴドフリーさんが返事をした後、私はその手を軽く握った。見た目からしてもゴツゴツとはしていたけれど、いざ触れてみるとその感触が直に伝わり、異性の手を握っているのだという事実は私の心臓の鼓動を早くした。そしてドキドキしながら握り続けていたその時だった。



「お……おお? なんかスゴく力が沸いてくるぞ……?」

「え、本当ですか?」

「ああ。しっかりと飯を食べて休憩を取った後みたいにやる気に満ち溢れてる感じだ」

「それがコミュニケーションで得られる効果です。相手の身体に触れたり前向きな言葉を掛けたりする事で気力や体力を回復させる事が出来、より前向きであったり触れる身体の面積が多かったりする事でその効果は増幅されます。加えて、今のように相手の素肌に触れていると、同じように効果は増えます」

「なるほど……あれ、この知り合いっていうのは?」

「それがお二人の現在の関係です。絆レベルが上がったりお互いにこういった関係であると認めたりする事で関係は変わりますが、逆に喧嘩をしたり相手への信頼を損ねたりすればそれに適した関係へと変化します」

「つまり、相棒だと思えば相棒で親友だと思えば親友、恋人だと思えばここが恋人ってなるわけか……」

「こ、恋人……」



 その私にはおおよそ縁がないと思っていた言葉を聞き、少しだけ気恥ずかしくなっていると、ティアさんはクスクス笑いながら頷いた。



「その通りです。私はお二人がそうなっても良いとは思いますが、そこはお二人にお任せします。そして、コミュニケーションの効果は和さんにも出るのですが……和さん、試しに夜になれと言ってみてもらえますか?」

「夜になれ……わかりました。えーと……夜になれ!」



 私は少し恥ずかしさを感じながらもそう口にした。すると、さっきまで明るかった神庭が急に薄暗くなり、驚きながら空を見上げると、そこには綺麗な満月が昇っていた。



「え、ええ!?」

「一瞬で夜になったな……ノドカ、これはお前の力なのか?」

「そ、そんな力を持ってるつもりは……」

「何を仰いますか、和さん。貴女のその姿の事をお忘れですか?」

「この姿の……そういえば、神野和は日本神話の神様がそれぞれの力を集めて作った物だから、様々な力を使える事にしてたんだっけ。それじゃあ、この一瞬で夜にしたのは月読命(つくよみのみこと)様の力なのかな……」

「そうです。そしてその力を使うために必要な神力を回復する術の一つがゴドフリーさんとのコミュニケーションというわけですね。さて、それではそろそろ施設等の建設について説明をしますが、その際に重要となる物があります」

「重要な物……」



 その言葉を聞いて私が喉をゴクリと鳴らす中、ティアさんの口から出てきたのは予想もしなかった言葉だった。



「投げ銭です」

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