精霊の力
6話 精霊の力
王都まであと少しの所。王都の前には、モンスターの多い小さな村があるらしい。
受付嬢の人に渡された地図と、目の前の村を見比べてみた。
どうやらここが村のようだ。
華奈「ここは少し警戒しといた方がいい」
…来た。
花梨「みんな!アラ豚の群れがあそこにいるよ!気をつけて!」
アリナ「お、多すぎますっ…!」
華奈「軽く2000匹はいる…こいつら意外と攻撃力が高いから…この差だとヤバい!」
みつき「豚なのにぃーっ!」
???「汝らに特別な加護を授ける…」
!?! 声が聞こえる?!
アリナ「だ、大精霊様!!?」
大精霊…?
みつき「いや…さっきのキツネが喋ってる…!」
大精霊「我の名は、スズラン。汝らに特別な力を授けよう。これは、さっき助けてくれたお礼じゃ。」
すると、キツネ…いや、大精霊は人間の姿になった。
スズラン「わしも久々に動くとするか…」
スズランは素早く動き始めた。
「一心咲乱!」
「集結地獄!」
すると、スズランの頭上にたくさんの精霊が集まり始めて、スズランがそれを解き放った。すると、今までいたアラ豚が、嘘の様に居なくなっていた。
スズラン「どうじゃ?これが精霊の力じゃ。」
スズランが自慢げに話してきた。
最初に反応したのはアリナだった。
アリナ「ス、スズラン様!とても現実とは思えない精霊魔法でした!かっこよかったです!」
次にみつきが口を開いた。
みつき「さて!王都は目の前!行きましょうか!」
───王都に着いた!ここが王都か。
花梨「とりあえず、大賢者様の場所を聞いて回ろうか!」
花梨「すみません───」
私たちは結構な間、聞き回ってた。
花梨「すみません!」
「は、はい!」
花梨「今、大賢者様に会いたくて、大賢者様がどこにいるか分かりますか?」
「大賢者様なら、あそこの古い家に居ますよ。」
花梨「ありがとうございました!」
早く行かないと!
───大賢者の家。
コンコンコン!
花梨「ごめんくださ───い!!!!!
私、異界の扉の話を聞きに来たんですけど──!!」
ガチャリと音を立て、ドアが開く。
大賢者「なんだい?君たち。」
茶髪で、青い瞳。背は180cmくらいで、目にクマができている。
見た目からして、30歳くらいかな。
花梨「あの、私たち、冒険者なんですけど、このふたりと私は実は違う世界から来たんです!」
大賢者「何?!違う世界だと?!」
大賢者「あぁ…すまない…取り乱してしまったね。中に入ってくれ。」
大賢者は椅子に座ると、3人に順番に視線を移した。
大賢者「まず、君たちが異世界から来た経緯をもう少し詳しく教えてくれないか?」
花梨は少し恥ずかしそうに、けれど真剣に話し始めた。
花梨「実は…魔法の呪文を見つけて、呪文を……唱えてしまったんです。」
華奈「花梨が呪文を唱えた時、私がちょうどそこに来て…突然眩しい光に包まれて、気が付いたらこの世界だった」
みつき「二人がいなくなって私も唱えて見たら、今度は私も妙な夢に引きずり込まれて、目を覚ましたら街にいたんです。正直、現実味がなかったよ……」
大賢者は目を細め、うなずく。
大賢者「なるほど、“意図された者”と“巻き込まれた者”、”呼ばれた者”か…
その関係性も、“扉”が完全に開いた理由かもしれないな」
アリナ「じゃあ、この世界とあっちの世界のどちらにもつながる力が3人にはあるってこと…?」
スズラン「ふむ、花梨には扉を開く才、華奈は引き寄せられ、みつきは残された力に呼ばれたのじゃな。運命のいたずらか、必然か…」
花梨は小さく頷き、
「もし自分のせいでみんなを巻き込んだなら、絶対元の世界に帰る方法を見つけます!」
と固い決意を語る。
華奈「私も花梨を責めたりはしないよ。だって、ここまで来たんだから」
みつき「…もうここまで来たからには、いっそ楽しんで帰ってやるぞーって感じかな!」
大賢者は優しく微笑みながら、重たそうな書物を広げた。
大賢者「“記憶の水晶”が地下迷宮のどこかに眠っている。三人の力、アリナの弓、スズランの加護、それぞれの因果が混ざり合えば、必ず道は開けるはずだよ」
仲間たちが頷き合う中、アリナとスズランも、自分たちの居場所と役割を確かめるように顔を見合わせる。
そして5人は、それぞれの思いを胸に王都地下迷宮への冒険に向かうのだった───。
王都の地下迷宮──それは、かつて王家の守護者が秘密の儀式を行ったと言われる、謎に満ちた場所だった。ギルドの地図にも載っていない隠し扉の先に、その入口があるという。
大賢者からの書き込みが滲んだ古地図を手に、花梨たちは迷宮の入口前に立った。ひんやりとした空気の中、アリナが矢を構え、スズランが杖を握りしめる。
華奈「…本当にここに“記憶の水晶”が…?」
アリナ「そう信じて進もう。私たちはもう、戻らないって決めたんだもの」
スズランは小声で何かを詠唱し、淡い光の加護がパーティを包む。みつきは照れくさそうに「守られてる感じだね」と微笑んだ。
花梨が扉に手を触れると、重々しい石扉が“ゴウン”と音を立てて開く。闇の奥からは、うっすらと青い光が漏れていた。
大賢者の言葉が脳裏をよぎる。「記憶の水晶は、人の心を映す。動揺や迷いが強ければ、迷宮は道を閉ざすだろう」と。
花梨は手を握りしめ、決意を新たにする。 「みんな、絶対一緒に帰ろうね。どんなことが起きても、私……絶対諦めない」
迷宮の奥は、ただの迷路ではなかった。通路ごとに見知らぬ記憶の幻が現れ、五人の心を揺さぶる。アリナには家族への想い、スズランには幼き日の誓い、そして花梨たちには“元の世界”の断片が、次々と現れる。
華奈「これ、みんなの記憶…?」
みつき「見せられてるんだ、この水晶に…」
やがて幾つもの選択肢の通路が現れた。その中央、青白く輝く大きな結晶が滲んで見えていた。
アリナが仲間に声をかける。 「核心に近づいてる……でも、もう一歩進むには、みんなの思いがひとつにならなきゃ無理かもしれないわ」
スズラン「一人ひとりの因果が、ここで交わる。疑念を捨てるのじゃ」
強い想いが重なった瞬間、青い光が炸裂し、記憶の水晶が光を放つ。
───その光の中に、新たな“扉”が現れた。
大賢者の声が遠くから聞こえる。
「この扉をどう使うかは、君たち次第だ。進め、君たちの物語は、ここからだ!」
光の扉の先には、
まだ見ぬ未来が待っている───。
光の扉がまばゆく輝き、五人は一歩踏み出した。
──しかし、踏み込んだその先は「何もない空間」だった。淡い青白い光が漂うだけで、どこまでも地平が続いているように見える。
花梨「え…?ここ、どこ…?」
花梨が戸惑いの声を上げる。
みつき「元の世界……じゃない、よね?感じたことのない空気だ。」
スズランがゆるく首を振った。
「これは、“扉”の間。つまりどこにも属さぬ狭間の空じゃ。選び直すことすらできぬ場所なのじゃろう」
沈黙が落ちる。誰もが、元の世界の景色や、大切な人たちのことを思い出し、胸を締め付けられる感覚に襲われていた。
アリナが歯を食いしばって言う。
アリナ「きっと、大賢者が言ってた“因果”が足りなかったんだね。まだ、みんなの心が、迷っていたのかも」
華奈がゆっくり口を開く。
華奈「帰りたい気持ちは本物だった。でも……今ここにいる自分たちの“思い”も、それと同じくらい強かったんだと思う。」
やがて光が揺らめき、目の前に巨大な扉が現れる。 だが――それは閉ざされたまま、びくともしない。「記憶の水晶」がまた淡く光り、音もなく砕け散った。
みつきがそっとその肩に手を置き、優しく笑った。
「花梨、きっとこれは“終わり”じゃない。今は帰れないだけで、私たちが一緒にいる限り、また道は見つかるはずだよ」
スズランが静かに言う。
「一度閉じた扉も、歩みを止めなければ、いずれまた別の道が拓ける。過去に囚われるばかりでは、未来も見えぬ」
アリナがうなずく。
花梨「この世界の人たちだって、同じように“居場所”を見つけて強く生きてる。私たちも、ここでもう一度始めよう」
───もう一度帰れるその日まで。
私たちはこの世界で、帰れる時がくるまで頑張る。
そしてまた、華奈とも和解できる様に───