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訳あり転生  作者: シエルノクス
誤解と脱出
3/12

華奈の過去

今回は、華奈目線のお話です。

3話 華奈の過去


私の名前は山中華奈。お父さんとお母さんがつい先日離婚して、同級生、花梨の母親と結婚した。私はそれが許せなかったから、お母さんのあの笑顔を取り戻すために、お父さんを取り返す事にした。

だから同級生の花梨を徹底的に追い詰めることにした。

わざと転ばせた。

階段から蹴り落とした。

呼び出して殴った。

ランドセルと机に落書きをした。

あいつが休んだ。虐めたかいがあった。

教科書とノート全部捨ててあげた。

ロッカーに閉じ込めてあげた。

家の壁にキモイ落書きをしてあげた。

あいつの体操着を燃やした。


あれ?こんなに楽しかったっけ…


夜に忘れ物を取りに来た。


そしたらあいつが変な儀式をしていた。

異世界に連れて行ってください、とか言ってるし。

せっかくの夜の学校だし、殴りに行こう。

いつもよりマシマシで。


入ったら、白い光に包まれ私たちは謎の場所に飛ばされた。


…視界の端に嫌なものが映った。

花梨「えっほんとに異世界来ちゃった…」

花梨「自由だー!」

逃げようとするから1回苦しめよう。

一緒に行動させよう。


死ぬまで殴ってやりたいとこだけど、ここは異世界。しかもここは公の場。殴れるわけが無い。


───でも、この世界から帰れなかったら?


迷いながらも、私たちは異世界の大きな街にたどり着いた。空気はどこか冷たくて、遠くの塔から鐘の音が響いている。花梨は無邪気そうにきょろきょろして、私の顔なんて見もせずに歩き出した。

「ねえ、華奈。なんか、美味しそうなもの売ってるよ!」

いつもなら、その声にイラッとしたのに──この世界の空気のせいか、あまり感情が動かなかった。私は花梨の後ろから静かに歩く。何も知らず、誰の痛みも気づかず、前を歩く花梨の背中。

(このまま、ずっと一緒にいなきゃいけないのかな)

頭の中がぐるぐるしていた。憎しみと、不安と、空っぽなもの。

……異世界は、不思議な出来事ばかりだった。話をすればどんな願いも叶うという神殿。空を歩く鳥の兵士たち。出会った人はみんな、本当の自分の心を隠しているように見えた。私たちは住んでいた世界とは、ルールも考え方もまるで違うこの場所で、生きていかなければならなくなっていた。

夜、宿屋の小さなベッドで私は眠れずにいた。

(苦しめてやりたい───その気持ちはまだ消えていない。でも、どうしてあんなに執着している?)

ふと、窓から外を見た。月明かりに照らされた街と、暗い森の影。それを見ていたら、胸の奥から何かが溢れてきた。

(私は……本当は何をしたかったんだろう)

次の日、花梨がとつぜん私に声をかけてきた。

「ねえ、一緒に魔法の市場に行こうよ。もしかしたら、元の世界に帰れる方法が見つかるかもしれない」

私は答えない。けれど、花梨の表情には、昨日まで見せたことのない本気の不安と期待が混じっていた。

(こいつだって、本当に幸せなのかわからない)

ほんの一瞬──私は、花梨と同じ景色を見たような気がした。その瞬間だけ。

だから私は決めた。

苦しめるためでも、逃げるためでもなく、本当の理由をこの世界で探してみようと。

歩き始めた二人の距離は、まだすごく遠いままだ。でも、もしかしたら。いつか、お互いの本当の気持ちに近づける日が来るかもしれない。

憎しみから始まった旅。だけど今、私の中には小さな疑問の芽が生まれ始めていた。

──でも、私のプライドはまだ消えていない。

花梨、あんたを許したわけじゃないんだから。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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