フォルゲン
フォルゲン
「モニカさん、優しかったね〜」「ね〜だって行く時に何個食べ物くれたんだよって感じ」
私たちは今、フォルゲンに向かっている。
フォルゲンは……錬金術がすごいんだっけ。
アリナが地図を広げる。最低でもあと3日位はかかりそう。
するとアリナが「最近武器も鈍ってきましたし、新品に変えませんか?」と聞いてきた。確かに……最近剣がボロッボロ……
このままだと剣を切られて……殺されかねない。想像するだけで鳥肌が立つ……!「変えようっ」と食い気味に私は言った。
今歩いているのはゴブリンの多い大きな森。極力ゴブリンには出会いたくない…剣が……折れる!!
びくびくしながら進んでいくと、残念!ゴブリンの群れ!「やば!」泣きながら剣をゴブリンに向ける。「ヒイイイイイィあぉおおうわあああああ」
「ガァグゴガッガァァァァ!」奇声を発してゴブリンはすぐに全滅した。「あぁ……良かった……剣折れてない……」ビビったァ……「さあ!気を取り直していこー!」みつきが声を上げる。
「……ねぇ、なんか嫌な予感がするんだけど」華奈が目を細めて言う。「一応気をつけた方がいいですね…」
アリナも注意深く辺りを観察する。
「……て」「!?」その場にいる全員が目を見開く。なにかの声がする。
恐る恐る近づくとそこに居たのは…綺麗な赤髪で赤色の瞳。髪はウルフカット。これは…人間の男の子!?「だ、大丈夫!!?」思わず声をかけてしまう。「お母……さ……」
捨て子!?だいぶやつれてる……「アリナ!この子に応急処置をしてくれる?!それと華奈は食料を出して!」まだ8歳位なのに。一体誰がこんなこと…考えるだけで怒りが込み上げてくる。
「どうしたの?お母さん達はいる?」みつきが優しく聞く。「お母さんは……居なくなりました。」
笑顔を作って男の子は答える。「ここにいたのはなぜじゃ?」「お母さんはお前なんかいらないって言っていました。」…酷い。
「ちなみに、名前聞いてもいい?」「……僕に名前はありません。62号って言われてました。」62号……何かの実験体だろうか。この世界にも実験体はあるのかな。最近はそこら辺の子供を捕まえて洗脳……なんていう事も現代ではあるらしい。
「ちょっと行ってくる。」みつきが真剣そうにいう。「えっ?ちょ!」話す暇もなくみつきはどこかに走り去っていった。
それから2日後。私たちは森に拠点を張っていた。だけど一向にみつきは戻ってこない。
みつき大丈夫かな……
「お────────い!」
威勢のいい元気な声が聞こえてきて振り返る。みつきだ!
「みつきー!」私はみつきの元に駆け寄る。「どこ行ってたのじゃ?みつき。」「62号?のいた研究所の噂はホントだったみたいだよ」……研究所に行ってたんだ。
でもどうやって入ったんだろう。するとみつきが、「そういや名前無かったよね?」と思い出したように言う。「はい。それが何か?」
62号が首を傾げる。「じゃあ名前を決めよう!」「62……じゃあロニはどうかな?」「ロニ……」ロニの目からはいつの間にか涙がボロボロ出てきた。「素敵な名前をありがとうございますっ」ロニは涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら微笑んだ。
───ロニ。一般人からすればちょっと普通じゃない名前だけど、彼にとっては嬉しい物だったのかな。
「ロニ…か。」
しばらく休んでいたら、急にロニが目を見開いた。「どうしたの?ロニ?」私がそう聞くと、しばらく間を置いて、
「ぜんぶ……思い出した……」と言う。
「ろ、ロニ?」みんなが困惑する中、ロニはすぐに話し始める。
「僕の親は……あの研究所の奴らに殺されたんだ…あぁ…あ……あ…あぁああああ…」
ロニが叫び出す。久々に何回も名前を呼ばれてフラッシュバックでもしてしまったのだろうか。
それにロニの記憶の共有なのか、私たちの脳内に色々な情報が流れてくる。
「ごめ……なさ……ごめん……さい……」
ロニが何回も何回も連呼する。
私はロニの方へズカズカ歩き出す。そしてロニを抱いて、「大丈夫。大丈夫。大丈夫。」大丈夫、と何回も連呼する。するとロニは安心したのか少し泣き止んだ。そして私の方へと倒れ込んでしまった。
ロニに膝枕をしながら私は明日の計画をみんなで考えていた。明日こそフォルゲンに行けるはず!
そして夜。ご飯を作ってたらロニが起きてきた。そして「手伝いますよ」と言ってきた。「タメでいいよ!」そう私が言うと、「じゃあ…お言葉に甘えて…花梨!手伝うよ!」
ロニは照れくさそうに笑った。
「今日は久しぶりにハンバーグでーす!」脳内で聞き覚えのある料理番組の音楽を流す。
「できたよー!」みんなが目を輝かせている。
食べ終わったらみんなは就寝準備。私は見張り。「おやすみ。」「おやすみなさい」「おやすみー」「花梨も早く寝るのじゃよ」「おやすみ。花梨。」
みんな寝た。私は皿洗いでもしようかな。
……こうやって一人で月を見るのは久々だ。この世界に来る前はずっと見ていたのに。
どこか遠いところに逃げたくて。でも私じゃどうにもできなくて。
辛い苦しい逃げたい。過去の記憶が脳裏をよぎる。考えるだけで頭が痛い。
でも今は─────華奈にももう虐められない。みつきもいる。心強いスズランに、優しいアリナ。そして同じような境遇のロニ。
ここに来て初めて生きててよかったって思えた。
ねぇ、お父さん。空で私の事を見てくれてる?
──────朝だ。
みんなが起きてくる。
「おはよー」みつきが眠そうに言う。私は眠気を覚ますために冷たい水を飲んだ。今の季節はすっかり秋。
そろそろ涼しくなってくる時期だ。
次にロニがあくびをしながら出てくる。アリナは早く行きたいのか、もう寝巻きから着替えて元気よく出てきた。華奈はツインテールを結びながら静かに出てきた。
さて……スズランが起きてこないなぁ……
私はニヤリと笑ってみつきに合図する。
みつきは察してズカズカとスズランの方に歩く。
「起きろ──────────────!!!」
みつきがスズランの耳元で叫ぶ。
「ぎゃああああ!何何?!モンスター!?」スズランがオロオロ動いてる。こんなのもう見慣れた光景だ。
「今日は豚汁だよー」「わーい!私豚汁だいすき!」みつきが無邪気に微笑む。「豚汁なんて久々に食べます!」
ロニと一緒に朝ごはんを作る。「ロニ。今日はねフォルゲンってとこに行くんだよ。」
「フォルゲンかぁ…鉱山と錬金術がすごいんだっけ?」「うんうん!楽しみだね!」
朝ごはんを食べたら出発。「みんないくよー」「はーい」
─────フォルゲンまであともうひと踏ん張り。「やばい…おなかすいたぁ……」みつきが大声で嘆く。
「ここら辺はオーク (Aランク)やサムタウルス (Bランク)などがいるらしいですよ。」「そうなんだ〜!アリナってサムタウルスのステーキ好きだよね?今度作るよ!」
「マジですか!ありがとうございます!」アリナの目が輝く。「あ!サムタウルスいるよ!」ロニが真っ先に見つけて狩りに行く。
そういやロニの固有スキルってなんだっけ。
「光炎心酔!」
この技名的に光と火かな。「わーい今日はステーキだ!」
ロニが笑顔でサムタウルスを狩っていく。よーし!私もやろう!「水龍爆発!」ふぅ。これでたくさん食べられる。
────夜。
「ステーキ♫ステーキ♫」
アリナがるんるんで待っている。「ロニ!早く作ろ!」棒料理番組の音楽を脳内でかける。パッパと胡椒につけてフライパン乗っけてと。香ばしい匂いが鼻に伝わる。完成!
「いただきます──」「おいしい!」
よかった!みんな美味しそうに食べてくれてる。
「今日は結構他の肉もとれたから明日売るか〜」
夜。
「おやすみー」
今日は夜番じゃないから、私は早めに寝た。
──────花梨!
……え?なんで父親モドキがいるの?
いやだ!助けて!逃げなきゃ!
私は必死に走った。
「キャ──────!!!!!!!!!!」「うるさいなぁ……」
「俺の言うことを──────」
「もうやめて!!!!!!」そう言うと父親モドキは倒れていた。「私が殺したの?」生々しい感覚が手に残る。
なんで殺したんだ。人殺しが。人々に批判される声が聞こえる気がする。
──────目覚めるとちゃんと隣にはアリナとロニとみつきがいた。良かった……夢だったのか……
私は気分が悪くなって、朝日を見に外へ出た。「あっ…華奈。」「おはよ…」私たちはいつも通り無言だ。……そこにベルマリエの雑貨屋で買った無限生成スケッチブックがある。「久々に絵でも描こうかな……」
私はスラスラと朝焼けの絵を描いていく。「……できた!華奈にあげる。」「……ありがとう」華奈は目を背ける。「あんたって、絵上手いんだね」「……あぁ……ありがと…?」
「おはよ!」みつきがいつもより早く起きてきた。続いて他のみんなも起きてきた。
「じゃあご飯作るねー」
そうして今日も1日が始まる。




