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森を抜け草原を越え獣のような小型の魔物や、毒のある植物系の魔物を倒しながら、私たちは道を進んだ。
その道中、ルビーの剣とジーンの魔法は見事な連携を見せた。
私は精々薬を準備するくらいだけど、二人はすごく喜んでくれた。
三人で囲んだ野営の食事は想像以上に美味しくて、ルビーが焼いた謎のキノコが意外とクセになる味だったりもした。
そして二日後の夕方、無事目的地の街へ到着した。
「よし、ギルド行こっか!終了報告しないと〜!」
ルビーが軽快に扉を開けて、ギルドへと入っていく。
私もそのあとに続き、依頼の報告と確認をする。
ギルドで依頼の終了報告を済ませ、報酬を受け取った二人。
一区切りついてほっとした空気の中、ジーンがふと思い出したように口を開いた。
「そうだ、アリア。宿とかもう決めてる?」
「んー全然」
「まだ!?」
ルビーの声に驚いて目を丸くすると、ルビーは腰に手を当てて言う。
「ダメダメダメ! 女の子が一人で野宿なんてだめよ!! ちゃんとしたとこ泊まらなきゃ!」
「う、うん、流石に野宿は不安かな。ギルドで聞いてみようかな」
「そうしなさい!今どき、しっかりした宿なら女性専用フロアとかもあるんだから。ね? ジーン?」
「そうだね。安全第一」
ジーンはやや呆れた顔をしながらも、同意する。
「あとさ、アリア」
ルビーが急に真剣な目になる。
「その服装……もうちょっと考えたほうがいいよ」
「えっ!?変だった?」
「いや、その、別に変ってわけじゃないんだけど」
そう言って私の頭からつま先までをじっくり見回す。
私の格好は、動きやすさを重視したものだった。
膝丈ほどのチュニックに、ふんわりとしたシルエットのズボン。
ズボンはポケットが多くて薬草や道具の持ち運びにも便利だ。
足元は多少のぬかるみでも大丈夫な厚底のブーツ。
色合いはどれも淡く、目立たないくすみ色で割と気に入っている。
ただルビーからはチュニックの裾が軽やかに揺れるたび、柔らかい体の線が思わぬところで目を引いてしまっているらしいと指摘される。
「ほら、ルーティって華奢だし、顔立ちも可愛いし目立つのよ。危ない人もいるから、気をつけなさい?」
確かに女一人旅は危険だと今更ながら実感する。
「私だったら、男装するくらいでちょうどいいと思うな。帽子とかフードも被ってさ、旅人風にね!」
「えっ、ルビーは露出多くないかな?」
ルビーの服装を見て思わず問い返すと、ルビーは大きな胸を張って「私は強いから大丈夫よ!」と笑顔で即答する。
「……僕は、やめてほしいんだけどなー」
ジーンがぼそりと呟くと、ルビーが肘で軽くつつく。
「なによ、それ。やきもち?」
「違うし」
「ふふっ……仲いいですね」
二人は顔を見合わせて、なんだかんだで嬉しそうに笑い合った。
そのあと、ギルドの案内人に紹介された女性旅人向けの宿に、三人で向かうことに。
荷物を預け部屋を確認し、ひと安心した心からお礼を言った。
お礼を込めて自分で調合した回復薬を二人に渡した。
「二人のおかげで楽しい旅になったので。道中薬草採取にも付き合ってもらって、ありがとうございました」
「え、マジ? やった~!」
「ありがとう。道中、これ店で買うより効いてた気がする」
ジーンの言葉が嬉しくて、少し照れたようにうつむく。
「また依頼とかあったら、声かけてよ!あ、ちゃんと服買いに行くんだよ?本当は一緒にいってあげたいんだけど、急な護衛依頼が入って」
報告中にちょうどこの街から出る別の依頼が入っていたようで、その日のうちに出発する予定になったらしい。
「大丈夫です!本当にありがとうございました。お二人に会えてよかったです」
「何言ってるの、こっちこそ。アリアが一緒だったから、楽しかったよ」
「またどこかで会えるさ」
笑顔で別れを告げると、ルビーとジーンは次の依頼に向けて街を発っていった。