死体を埋める理由
また此の季節が巡って来た。
ジメジメジトジトな梅雨の季節。
此の季節が俺は1番嫌いだ。
何故なら家の土地の数キロ四方に広がる山に、キノコ狩りに行かなくてはならないからだ。
キノコ狩りって言っても採取した茸は食べられない。
毒キノコでは無いんだが、俺には無理だ。
だって……キノコが養分にした死体の顔そっくりな人面茸だから。
それも死んだ時の形相で生えて来る。
家の家業は死体処理、所属している反社グループの奴らが殺した人の死体を山に埋めて処分。
運ばれてくる死体の殆どが敵対勢力の奴や裏切り者の死体。
だから殺される前にリンチを受けている事が殆どで、その顔は苦痛に歪んでいた。
その苦痛に歪んだ顔そっくりな人面茸が、梅雨の季節の間中次々と生えてくる。
だから毎日山にキノコ狩りに行かなくてはならない。
死体を持って来る奴らにその事を愚痴ると大抵こう言われる。
「死体を直接埋めないで、燃やすなりしてから埋めれば良いだろう」と。
でも焼いた死体では駄目なんだ、だって、死体を埋めたところから梅雨時は人面茸が生えてくるけど、秋になると丸々とした香りが良い松茸が生えてくるからなんだよ。