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16話 新しい日常



 予鈴が鳴る前から、私は教室の席に座っていた。何をするわけでもない。ただ座って、頬杖をつく。眺めるのは、女子たちがルキノを取り囲んでいる光景。


「ルキノ君、昨日は大丈夫だったの? レストランの爆破事件、巻き込まれたんでしょ⁉」


 それにルキノはいつも通り、爽やかに返答していた。


「大したことはないよ。ちょっと怪我しちゃったけどね」


 苦笑して、頬のかすり傷に触れる。女子たちが黄色い声で騒いでいた。

 おまけ扱いとはいえ、クラスのヒーローが公のニュースに取り上げられたのだ。彼の株はますます上がったことだろう。


「メグちゃんも怖かったね!」

「大丈夫、ルキノくんが守ってくれたもん!」


 その輪の中で、なんともあざとい赤毛の少女を、私は懸命に見ないようにして。


 すると、一際大きな音を立ててタカバが登校した。私が座っているのは、彼が愛用している席。今日もいちゃもんをつけられるのかと思いきや、彼は私を見下ろして一言。


「おう」


そして、今日は大人しく私の隣に座る。

 タカバの顔には細かい傷や痣がたくさんあった。鼻に貼られた肌色の絆創膏が、やけに似合っている。服の下は定かではないが、袖を捲った腕だけでも、絆創膏の数は知れず。


 私はお礼代わりに、タカバを褒めてあげることにした。


「今日は一段と男前ね?」

「ほっとけ」


 そんなタカバは、まだ朝ご飯を食べてなかったらしい。

 鞄の中からパンを取りだした彼に、私はさりげなく切り出した。


「あんたのエアボード、途中で落としちゃったわ。あんな恰好でエアボードに乗るなんて、そもそも間違ってたわね」


 すると、タカバも笑う。


「そりゃそーだろ」

「新しいものは早めに手配するから」

「んなこたいーから、今度うちのパンを買いに来い」


 けっきょく朝ごはんは食べられなかったのだ。味を知っているからこそ、お腹が空いてくる。そんな羨ましさが顔に出ていたのか、見せつけてくるタカバに、私は眉間に力が入った。


 ……私なんかが行ったら、余計に客足が遠のくじゃない。


「お金は出すから、あんたが買ってきてよ」

「そんなパシリみてーなの、ぜってーお断りだ!」


 予鈴が鳴る。


 生徒たちが慌てて席に戻ると同時に、いつも通り無愛想な教師がペタペタと足音を立てて入って来た。ナナシである。


 そんな新担任は、クラスメイトが大事件に巻き込まれたことなど一切気にすることなく、揚々と声を張り上げた。


「それでは、今より授業内容を変更して黒板づくりを開始する!!」


 ……さっぱり意味がわからない。黒板ってなんだろう?

 数々あがる非難と疑問の声をナナシが一蹴している中、私は窓の外を眺める。

 

 今日も、空は嫌みなまでに青かった。

 だけど、いつも輝いていたはずの通信塔が焼け焦げている。


 いつか、このエクア中が黒く染まったなら。

 そんな妄想をしながらも、私はモバイルで『黒板』とやらを検索して、出てきた画像に思わずぼやいた。


「緑じゃん、これ」


ちょっと最終話が短くなってしまいましたが、これにて1章はおしまいです。

ここまでお読みくださいまして、誠にありがとうございます!


本作は「アニセカ大賞」というコンテスト用に書きました。

現在応募期間は終了し、選考中なのですが……続きは1次選考が通ったら書こうかな、と。

読んでのとおり、「なろう」での主な需要ガン無視の「好き」だけ詰めた趣味作品なので、マイペースに進めさせていただけると幸いです。

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