医療ミス
「あっ」
「えっ、あ」
えっ
「これ、まずいよな」
「まずい……ですね……」
え、な、なにが?
「だがまぁ、ここをこう、あ、あ、あ」
「あ、余計に、あ」
いや、ちょっと、なにを
「これはもう、あれだな」
「はい……あれ、ですね」
あれってなに!?
「逝かせたほうが」
「安くつきますね」
逝かせる? 安く?
「しまったなぁ。また……まあ、訴えられるとな……」
「ですね。まあ、無駄になるわけじゃないので……」
え、待って。待って、待っ――
「……あ、あれ」
「お目覚めですか」
「あ、先生……あ、あの」
「手術は無事、成功しましたよ」
「そう……ですか……本当に?」
「ええ、本当ですとも。ははは。ご安心を」
「でも、ああ、夢を……見てたみたいです」
「夢?」
「先生の……手術中の……」
「ああ、ふふふふっ。患者さんの中に、よくおられますよ。そういう方」
「……医療ミスの」
「……ああ、それもよくあるケースです。手術の不安が見せる悪夢というね。
でも大丈夫。移植は完璧です。よく馴染むでしょうってははは、わからないですよね。
手を胸にあてて聞いてみたらってははははは! こりゃ中々のジョークだ! ははははは!」
「ええ、その、あははは……」
臓器は夢を見ますか?
あたしがそう訊けずに押し黙ると、心臓はより激しく脈打った。何かを訴えるように、必死に……。