9. 兄なら大丈夫
光滅騎士団には、どんな人物達がいるのだろうか。
フーシィもフージンの事が心配のようで、ずっと困った表情のままフージンを見ていた。ふと、考えたら自分一人でも行く方角さえ分かれば、サマケスに辿り着けるだろう。もし、光滅騎士団がフージンを狙って戦う事にでもなったりしたら、人数が多いと自分も苦戦してしまうだろう。
「フージンは無理に行かなくていいよ。方角を教えてくれれば、俺一人で行けるから」
フージンは再びこちらを睨み付けてきた。厳つい顔の所為か、いつも怒っているように見える。
「この! 俺様がぁ! あんな馬鹿共騎士に負けると思ってんのかぁ? お前じゃあ、負けるかもしんねーけどなぁ‼︎ ぶはははは‼︎」
疑問に思っていた事がある。
「フージンって、そんなに強いの?」
フーシィが慌てて駆け寄って来た。何故か焦っているようだ。
「シッー! お兄ちゃんに、強いの? とか聞いちゃダメだよ! お兄ちゃんは、ちょ……超強い魔生なんだから!」
一瞬、言うのを躊躇ったように見えたが。
何か武器があれば、自分は凶悪な魔生とも戦える。武器を貰うことは出来ないのだろうか。尖った石でも戦えないことはなさそうだが、間合いが近くなる為かなり危険だ。
「フーシィ、何か武器は置いてない? もし、あるのなら貰えると助かるんだけど」
「キオゼン……まさか、一人で行くとか言わないで。騎士団の事は気になるけど、お兄ちゃんなら大丈夫だって信じているから。お兄ちゃんに案内してもらって」
……バレてしまった。
武器を貰えたら速攻でフージンを置いて、一人でサマケスに向かうつもりだったのだが……。フーシィにはとても言い難いが、一人の方が静かで落ちつく。
「最強のフージン様が‼︎ 連れて行くって言ってるんだから、大船に乗ったつもりでいてくれよな‼︎」
この大きな声……本当に何とか出来ないものだろうか。何故、こんなにも耳に響くのだろう……。
「あのさ、声量もう少し下げれない?」
フージンは首を横に振っているが、声量ぐらい下げられるだろう。フージンと一緒に行く事を想像したら、ため息をついていた。
「それじゃあ、もう行こうぜ‼︎ フーシィも心配しないで待っていてくれよな‼︎ 騎士団も時々しかいないから、大丈夫、大丈夫‼︎」
フージンはゆっくりと進み始めた。自分が風船の紐を引っ張って進んだ方が速い気もするが……風船で遊ぶような歳でもない。
「お兄ちゃん、キオゼン、気をつけてね。また、必ず帰って来てね! 待ってるから!」
「ああ! またな‼︎」
「行ってきます」