7. 魔生の占い師
「キオゼン、なるほど」
あまりにも変な名前だとは思っていたが、そんな意味があったとは……。
少し呼びにくい感じもするが、名前が無いよりはマシだろう。今度から自分はキオゼンと名乗ろう。
「まぁ、オレ様に感謝するんだな! こんなカッコいい名前を思い付くんだもんなぁ。じゃあ、とりあえず街へ一緒に行くかぁ!」
小さく頷くと、フージンは逞しい両腕を再び風船の中へ引っ込めた。
風船の中はどうなっているのだろうか……。とても興味があるので、風船を割ってみたい気もする。
「どうやって手を出したの?」
不気味な笑みを浮かべながらフージンはこちらを見る。
「何だぁ、気になんのかぁ? 教えてやってもいいが、有料だ! 金は持ってんのかぁ⁉︎」
金……そういえば、自分は金を持っているのだろうか。ズボンを見回すがポケットは無さそうだ。
着ている白灰色のシャツには不思議な模様が施されていた。
「お金は無いみたい。あのさ、これ何の模様か分かる?」
シャツを引っ張ってフージンに見せる。
「金はねぇわ、急に質問はしてくるわ、お前は本当に失礼な奴だぞ? 分かってんのか? そんな、柄見た事ねぇよ」
怒っていた割には、あっさり答えてくれた。だが、やはり分からないようだ。もしかしたら、この柄を知っている人がいれば、自分が何処から来たのか分かるかもしれない。
この服は、何があっても手放さないようにするべきだろう。
「さぁ、もう行くぞ! サマケスはここから北の方角に真っ直ぐ行けば着く筈だ。確か、有名な魔生の占い師がいて何でも当てれるってフーシィが言っていたなぁ」
何でも当てる占い師……自分がどこから来たか、当てられるのだろうか。
それを聞いたら、居ても立っても居られなくなった。
「俺がどこから来たか占ってもらいたいから、話してないで早く行こう」
「お前……人から嫌われるタイプだろ」
洞窟からフーシィがこちらに顔を覗かせていた。
「フーシィ! オレ、ちょっとサマケスまで行って来る! こいつ……じゃなかった、キオゼンを占い師の所へ連れて行こうと思うんだ」
フーシィはフワフワと浮きながら、こちらに近付いて来た。
「キオゼン……でいいのかな? お兄ちゃん、気をつけて行ってきてね。凶悪な魔生もいるから。心配だけど、お兄ちゃんならきっと倒せるよね」
フージンは再び風船から逞しい両腕を出す。
確かに、一見強そうには見えるが……先程の戦いの時にはとても弱かった。大丈夫なのだろうか。
「俺も戦おう。フージン一人じゃ心配だし」
フージンは指を曲げ挑発する。