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淵底  作者: 川之一
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5. 洞窟と海


 フーシィが再びこちらへと近寄って来る。だが、やはり自分を警戒しているのか天井から離れようとはしない。

「あなた、魔生が分からないと言っていたよね。魔生というのは、"人間ではない生き物達"を指す言葉。人間と魔生の二つがこの世界"カヌリトーズ"には存在しているの」


 カヌリトーズ……それが世界の名前だと言うが、自分は初めて聞いたように思えた。いや、聞いた事はあるかもしれないが、思い出せない。


 ……今は、何も分からない。


 握っていた残りの石を地面に捨て、俯いたまま黙っていた。何故、自分はこの洞窟にいたのだろうか。洞窟から外に出れば何か思い出すのだろうか。


 「あなたはどこから来たの? この洞窟には見てのとおり、何もないから帰ってほしいの」

座っていた岩から立ち上がり再び歩き出そうとすると、風船が物凄い速さでこちらへと近付いて来た。風船の表情は怒っているように見える。

「おい、オレの! 妹が! 魔生について! 説明してやったんだぞ? 感謝ぐらいしたらどうだぁ⁉︎」

背後でうるさく怒鳴ってくるので、立ち止まりフーシィの方を向いた。フーシィも不安そうな表情でこちらを見ている。


 親切に魔生について教えてくれたのだから、フーシィに感謝はしなければ。

「教えてくれて、ありがとう。俺は、この洞窟から出るよ。どこから来たか分からないけど、出なくちゃいけない気がするんだ」

風船とフーシィは再び顔を見合わせている。


 早く出た方がいいだろう……この洞窟がフーシィ達の家ならば、確かに自分は邪魔者だ。

風船はどうでもいいが、落ちつきながら話してくれたフーシィには迷惑をかけたくない。

反対側を振り向き、歩き出した。たまっている水の中をパシャパシャと音を立てながら風船達から離れていく。


 風船とフーシィは、遠ざかる自分の背中を見ていた。


 ─────


 「お兄ちゃん、何だかあの人不思議な感じがするね。大丈夫なの……かな? 自分のいた街に帰れるのかな?」

ジッと黒髪の青年が行った方向を見ていた。いつもの自分なら不審な者には襲いかかるが、何故だか、そんな気が起こらなかった。自分に攻撃してきたのは、とてもムカつくが……。

「仕方ねぇなぁ〜、少し付いて行ってみるか」

「さすが! フージンお兄ちゃん!」

「あんな奴どーでもいいんだけどよ! まぁ、行ってくるわ」

黒髪の青年に入り口から落ちないように言わなければならない。


 この洞窟から出たら、目の前に広がるのは……。

「"グマノイス海"だからなぁ」


 前を向き、急いで黒髪の青年を追いかけた。


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