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淵底  作者: 川之一
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4. 小さな橙色の風船


 「知らねえよ! てめぇが勝手に入って来たんだろうがぁ! ふざけた事、言ってんじゃねぇぞ‼︎」


 キョトンとした顔で風船を見ていると、風船が再びこちらに向かって突進して来た。手を離せば毎回攻撃してくるつもりだろうか。次に掴んだ時は割るべきだろう。そう思い、再び手を構えた。


 「お兄ちゃーん‼︎」


 風船の後ろから女の子らしき声が聞こえてくる。

「"フーシィ"⁉︎ く、来るなぁああ‼︎ 兄ちゃんは今、危険な魔生と戦っているんだぁあ‼︎」


 風船の妹……なのだろうか? 


 丸い目をした更に小さな橙色の風船がこちらに向かって来る。自分に攻撃をしようとしていた風船は止まると、小さな風船がいる方へと慌てて駆け寄った。

「フーシィ、早く逃げろ‼︎ あの野郎に近付いちゃダメだ‼︎ 奴は危険な魔生だ‼︎」

風船の背後から、小さな風船はこちらをチラチラと覗いている。


 自分も小さな風船をジッと見ていた。妹は兄と違って落ちついている性格だったら助かるのだが。あまりもの声量の大きさに耳が痛くなってきていた。

「お兄ちゃん、あの人、魔生には見えないよ。人間なんじゃないのかな? ちょっと落ちついて話してみようよ……この洞窟は私達のお家だから静かに出て行ってもらお!」

二つの風船がこちらをジッと見ている。少し疲れた所為か、小さなため息をついた。


 小さな風船も洞窟の天井に付いたままこちらへと近付いて来た。

「フ、フーシィ‼︎ こら‼︎」

慌てて風船もこちらに近寄って来る。二人は自分をかなり警戒しているようだ。

「あ、あの‼︎」

ゆっくりと視線を小さな風船へと向けた。

「はい」

「お、お兄ちゃんがご無礼を働きすみません。私は、風船の魔生のフーシィと申します! あなたは魔生ですか? 私から見たら人間にしか見えないのですが……何で、この洞窟に入って来たのですか? 何も無い洞窟ですよ!」


 魔生とフーシィ達は言っているが、どういう意味なのだろうか。意味が分からないので、とりあえず聞いてみるべきだろう。

「魔生って何だろう?」

フーシィと風船は顔を見合わせると、慌てて奥の方へ戻って行ってしまった。

「?」


 フーシィ達は小声で話し始める。

「お兄ちゃん、魔生を知らない人なんているの……? あの人、どこから来たのかな?」

「分からねぇよ。あの、黒い瞳も何を考えているのか読めなくて不気味だしよぉ! くそぉ、やっぱり叩きのめしてやる‼︎」

こちらに向かおうとしてくる風船をフーシィが慌てて止めている。長くなりそうなので、岩に座って待つ事にした。

「お兄ちゃん、待って! 魔生の説明をしてあげましょ! その後に、どこから来たのか聞きましょうよ。ちょっと、私行ってくる!」


 「フ、フーシィ‼︎」


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