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橋口さん馬主になる

橋口さんとくるみちゃん

〜橋口さん馬主になる〜


イタリアの跳ね馬

男の夢のひとつにフェラーリのオーナーになるというのがある


「今日こそ当てて、絶対にフェラーリのオーナーになるぞ〜」


そう思っていた6時間前が今では走馬燈の様に巡るのである


残高1000円



とある土曜日

「橋口さん残業ですか?」同僚の井崎がニヤニヤしながら聞いてきた

「残念ながら、先日の案件片付いてないから…

アハハ、俺も早く上がって競馬新聞買い行きたいよ」

「また、競馬ですか?一発当ててフェラーリでしたっけ、いい加減諦めて残業代でフェラーリの方が現実的でしょ!」

「残業なんてしたくてやってるわけじゃ無いんだよ」

「俺はてっきり、橋口さんの趣味は残業だと思ってましたよ!おっと遅れちまう、俺これからデートなんで、お先に失礼します〜」

「コラ〜〜

あ〜ァ、今どき、週一休み、毎日残業、昭和のブラックだな〜早く切り上げてコンビニで新聞買って帰るぞ~」


尊き日曜日、それは夢見る社畜の憩いのひと時、そしてその想いとその日のために、日夜、修行もとい労働に勤しんでいるのである



出会い


「この電車に乗るのも久しぶりだな〜」

つい独り言を放ってしまうほど気分は高揚していた

ここ数年競馬場へは行けなかったので、何もかも新鮮に感じる

駅に着きコンビニで発泡酒を2本買い、いざ出陣!バシュッと開けた発泡酒を呑みながら、長いコンコースを歩いて行けば、イメージソングが聴こえてき、横には歴代の名馬達のポスターにカッコいいポスターなど見つつ入場券購入、券を係の素敵な女性スタッフに渡した時には気分は最高潮!


風が気持ちいい!芝の香りが気持ちいい!

昨日までの澱んだ心が浄化されていく

「軽く死ねる」

目の前に広がる緑のターフ、真っ青な空、巨大空母ような観客席この三つのコントラストの素晴らしさ語り尽くせぬ

気がつけば2本目の缶を空けていた…


「差せ、差せ、差せ、差せ、差せ〜〜」

「あ〜〜〜〜」

残高1000円

残るは最終12レース

「別に携帯から家で買えるけど…その場で当たり馬券を払い戻し機に入れた、あの黄金の輝きを見たかった」

11連敗いや、つまらん見栄張りました他の開催も買ってるから35連敗……

ここは一発勝負!

一番人気からの硬めへの三連単

「よし!決まった!3枠3番から6番9番!筋目でオッズ現時点で46倍!プラス1万円!今日は焼肉だ〜」 


「私を選んで」


「なんだ?空耳?流石に36レース目、幻聴も聴こえてくるか…」

「よし!マークシート記入完了」

アナウンス

「まもなく投票を締めしります」

「いざっ」


実況

各馬枠入完了

スタートしました

おっと!一番人気の3番…出遅れました

「終わった…逃げ馬なのに〜泣」

〜中略〜

残り200メートル外から

2番のクルミチャン

内で粘る6番

すごい脚だ2番クルミチャン

今1着でゴールイン

2着6番、3着、9番

「あ〜1番人気の隣の人気薄って何故だかくる時あるよな〜でもシンガリ人気なんて事故でも無い限り買えないだろ」

馬券を財布から出し最後の確認して、しみじみと今日の反省を…

「あれ…………

!!!!!あれ〜〜〜〜

なんで頭2番!!!!確かに3番に記ししたはずが……」

「当たった〜〜〜〜〜〜〜」

残高180万円


「当たったのですか?」

隣で観戦していた妖麗な女性が声をかけてきた

「なんか〜書き違えたみたいで、当たりましたアハハ」

女性「今日は彼女の引退レースでしたの…なので近くで見たくて…何も最後に勝たなくても…」

橋口「なんでしたっけ名前?アッ!クルミチャンでしたね」

女性「綺麗な娘でしょ…血統もそこそこいいのに…なんで…」

女性の目が少し潤んでるように見えた

橋口「今後は良い馬産んでくれたら嬉しいですね!私にとっては一生忘れられない馬になるでしょうから」

女性「紹介がまだでしたわね…私は野口美智と申します」

橋口「え〜〜〜まさかあの馬主の野口美智さんなんですか⁈」

野口美智、冠名ミッチーで有名な数々のG1馬も所有している名オーナー!!

野口「お恥ずかしながら」

橋口「あれ?クルミチャンの馬主では無いですよね?」

野口「あの娘は、私と彼の馬なのです…ですから馬名は違う名前に…」

橋口「そうだったんですか…」

野口「思いでなのです…彼が一目惚れした馬!

セレクトセールで嫉妬してしまいました…」

橋口「彼氏さんは、今日は観戦なされて無いのですか?」

野口「彼は亡くなりました…先月…癌でした…苦しい治療の中クルミチャンはとあの娘の事ばかり気にしてました…」 

重い……

野口「ま〜死んでしまったもんは仕方ない!このあとクルミチャンも食用まわる予定だしね〜」

突如、吹っ切れたように明るく振る舞う、野口さんであった

橋口「癌に食用ね〜て、クルミチャン!ピンチじゃ無いですか!!」

野口「ならば貴方に譲りたいのですが?」

橋口「ゆ、譲る⁈」

野口「乗馬にどうですか?」

橋口「乗馬は出来ませんしお高いのでは.…⁈」

野口「いま、貴方の当たった額で足りますわよ」

「お願い」

橋口「お願いって!そんなこと言われても」

野口「お願い?その様な事は申しておりません、あくまでも貴方様の意思でお考えいただきたいと」

確かに聞こえた..…


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