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やったれ魔法少女  作者: 千園参
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誰かがやらなきゃダメなら

先の展開が決まってないとは以前言ったものの、2話ぐらいまではざっくり決まっていたので、間隔開けずに投稿することができました。楽しんでいただけたら嬉しいです。

 つい1週間前の出来事、俺、藤崎綾二は鮮烈な高校生デビューを果たすこととなったのであった。テレビのニュースでは放送されていないが、ネットニュースやSNSでは怪獣や魔法少女の出現で大騒ぎ、そしてその話題は俺の学校でも持ちきりになっていた。なにやら廊下で女子たちが話している。


「ねぇねぇこの子超可愛くない?」


「可愛いよね〜!」


「どんな子が変身してるんだろうね?」


 話題はもちろん噂の魔法少女は誰なのかということだった。どんな子が変身しているんだろうね?俺ですが何か?なんて言えるわけがない。まず信じてもらえないだろう。男が魔法少女に変身しているなんて。仮にそれを証明して信じてもらえたとしても、俺が魔法少女に変身する女装癖の変態と思われ、学校で白い目で見られるのが目に見えている。そしてこのことが委員長の耳に入ったら最後、気を使われるどころかなにを使われるかわからない。言えるはずがない。俺は3年間、なんとしてでも平和に高校生活を送りたいのだ。


 そんなことで頭を抱えていると、知らぬ間に放課後になってしまっていた。


「あれ?藤崎くん今から帰るの?」


 今日もまた1人で颯爽と下校しようとしていると、委員長の川端に出会ってしまった。


「私も今から帰るところなんだけど、もしよかったら一緒に帰らない?」


「え、あ、うん、いいけど」


 どうしてこんなことになってしまったのか。ただでさえ、バレたくない。それ以上にこの人にだけは絶対にバレたくない。そんなことを考えると心臓がバクバクして苦しくなった。


「私、こっちだから」


 委員長はそう言って自分とは別の道を指差し、手を振ってくれた。俺は照れ臭くて手を振り返さなかった。彼女は優しい笑顔のまま振り返って歩き出した。


 それからしばらくして何処かで物が崩れるよな以前にも聞いたことのある音が鳴り響いた。そう化け物が暴れている音だ。

 こういう時、テレビとかで見る普通のスーパーヒーローなら真っ先に駆けつけ、変身して怪獣をやっつけるのがパターンなのだろう。でも、俺はそうは簡単にはいかない。何故なら嫌だからだ。理由はいくつかある。まず怪獣が想像以上に怖い。それに立ち向かわなければならないと考えると足が震えて仕方ないのだ。次に戦っている時だ。普通変身したら受けるダメージは通常よりも鈍く感じるとか痛くないとかなんじゃないのか?普通に痛い。誰だってそうだ、痛い思いはしたくないものである。そして最後にやっぱり恥ずかしいということ。変身して別人になっているとはいえ、あの姿になること自体、抵抗があるのだ。その他諸々の理由を合算すると結果的に行きたくないという結論に至る。


 そうこうしていると、またどこからともなく謎の声が聞こえてきた。


「君は本当にそれでいいのかい?音が聞こえた方をよく見たまえ」


 声の通り、目を向けるとその方角は委員長が帰った方角だった。


「君が戦いたくないというのは自由だが、君が戦わなければ不幸な目に遭う人間が多く現れるということだ。そしてそれは君の身内にだって同じことなのだ。わかるかい?それでも君は戦わないのかい?」


 痛い、怪獣が怖い、恥ずかしい。そんなことを考えて場合じゃなかったな。委員長はこんな俺にいつも見返りを求めない優しさで接してくれていた。守らなければ。今こそ彼女に受けた恩を返す時なのかもしれない。


「あぁー!クソっ!」


 俺は走り出していた。

 到着するとやはり怪獣が暴れ回っていた。

 そこには怯えながらに逃げ遅れたおじいさんを必死に庇おうとしている委員長の、川端真央の姿があった。彼女はやはり誰にでも優しい。そんな彼女を見殺しにしたら一生後悔することになる。彼女の姿を見て俺は覚悟を決めた。戦うための覚悟を―――


「誰かがやらなきゃダメなら、とりあえず今は俺が引き受けるしかねぇじゃねぇか!今助けるぞ!『変身』!!」


 以前同様、光に包まれ俺は魔法少女ブラスターピンクへと変身した。


「俺が相手だ!」


 今になって気づいたけど、声も女の子になっていた。俺の声超絶可愛くないか?いやいや、そんなこと考えてる場合じゃないよな。今は川端を助けなければならない。

 怪獣が鋭い爪で川端に襲い掛かろうとしたところに俺がガードに入った。


「大丈夫か?いいんちょ…っじゃなかった。お姉さんはおじいさんと安全なところへ!早く!」


「わ、わかりました!ありがとう!」


 彼女はそう言っておじいさんと共に避難していった。


「さーてと、勝負だ!化け物さんよ!」


 怪獣が繰り出す攻撃をガードする。

 やっぱり痛い。でも、俺はもうこんなことではめげない。


「今度はこっちの番だ!」


 俺は怪獣に攻撃を打ち込んでいく。怪獣との激しい攻防が続く。一瞬の隙をついて、怪獣の腹にボディブローをかました。怪獣が怯んでいる隙に俺は必殺キックの体勢に入った。


「チェストぉぉぉぁぉぉ!!!」


 もろパクリの必殺キックが見事炸裂し、怪獣は消滅した。


「ふぅーやったぜ」


 人気の無いところで変身を解除して、急いで川端の元へ向かった。


「大丈夫か?」


「あれ?藤崎くん!?なんでここにいるの?」


「あ、いや、えっとぉ……」


 図星を突かれて、言葉に詰まる。


「もしかして、私が心配で助けに来てくれたとか??」


 彼女は俺をからかうような悪戯な笑顔で言った。


「そんなんじゃ……。いや、そうだな。君を助けに来たんだ」


 俺の意外な返答に彼女は思わず頬を赤らめ、言葉を失ってしまっていた。


「あ、え、そ、そうなんだ…ありがとう……」


「お、おう」


 何度も言うが、怪獣の攻撃は痛いし、変身後の姿は恥ずかしい。でも、それを上回るほどに魔法少女として頑張ってよかったと彼女の笑顔を見るとそう素直に思うんだ。


「ねぇねぇ、そういえば噂の魔法少女が助けてくれたの!あの子大丈夫なのかな!?」


「あ、あぁ、あの子なら怪獣を倒して帰っていったよ」


「そうなんだ!どんな子か見た!?」


「いや、俺も必死だったからよく見てないな」


「えぇ〜!そうなんだ、残念だな」


 川端は少しガッカリしている様子であった。

 だからと言って、実は魔法少女は俺なんだよとは言えるわけがないのである。トホホ。

ネタバレを含んでしまうのですが、魔法少女は1人ではないという事は既に考えてあります。ここからどんどん登場させていければと思っております。次回は早速2人目が登場するかも。今になって思えば、魔法少女というよりはプ◯キュアに近いかも。それでは今回も読んでいただきありがとうございました。

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