俺、変身
かなり思い付きで書いているので、なかなかぶっ飛んでいるようなどこにでもあるようなと言う感じの作品になっているかと思います。お手柔らかによろしくお願いします。
4月15日、『俺』はこの日、魔法『少女』になりました。
4月15日、この春から賀晴高校に入学し、晴れて高校1年生になった俺、藤崎綾二は高校デビューし、高校生活を謳歌!しているわけではなく、のんびり目立たない普通の高校生活を送っていた。
仲の良い友達も1人ぐらいは多分いる。確実にいる。いる以外考えられない。学業も上の下、運動神経も悪くない、俺的にはとても満足な毎日であった。
休み時間――――
「ねぇ、藤崎君は今日も1人なの?」
今話しかけてくれたこの子は俺に友達が少ないと思っており、いつも気を使って声をかけてくれる学級委員の川端真央。
「1人の方が気楽でいいんだよ」
「ほんとにそれだけ?それに1人ってつまらなくない?」
「そんなことないさ!」
「本当かなぁ」
という具合にいつもこんなやり取りをしている。申し訳ないのでそろそろ友達を作ろうかしら。と言ってできるほど世の中は甘くないのである。いや、そもそも友達いるしな。
放課後の下校時―――友達のいない、もとい友達の少ない俺は基本的に目にも留まらぬ速さで帰宅している。学級委員に気を使われたくないし、正直気を使われすぎてそろそろ恥ずかしくて死にそうなのだ。だから、今日も誰の目にも留まらぬようにまっすぐ帰る―――はずだった。
なにやら街が騒がしい。普段はそんなことは絶対しないし、人だかりがあったとしても、気にならないはずの俺が、ガラにもなく街の様子を見に行ってみることにした。今になって思えば、興味本位で見に行こうなんて考えなければ、これから先に起こることを回避できたのかも―――なんてもう今更遅いよな。
繁華街では俺の短い人生では到底見た事のない、おぞましい化け物が破壊の限りを尽くしていた。そして辺りでは人々の断末魔が響き渡っていた。
「なんだよ、あれ」
化け物の姿はテレビでしか見た事のないような長い尻尾に鋭い牙。いわゆる怪獣という奴なのかもしれない。
俺は初めて見る怪獣に恐怖し、立ちすくんでしまっていた。
早く逃げないと殺されてしまう。そう思ってはいても体が言うことを聞いてくれない。
「お願いだから動いてくれ……!」
その時、逃げ遅れ泣き叫ぶ少女の姿が目に入った。
「ママ、どこ!パパぁ〜!ママぁぁ!!!」
あの子を助けないと何故そんなことを思ったのかはわからない。でも、そう思った時、体が自由に動いてくれた。体育の体力テストでも、叩き出した事のないベストタイムが出たと思う。猛スピードで少女の元へと向かっていた。
「もう大丈夫!」
俺は少女に声をかけた。しかし、状況は、全く大丈夫ではなかったのだ。俺と少女の目の前には既に怪獣がいたのだから。
普段直感力はどちらかというと鈍い方だと思う。そんな俺でも直感的に終わったと思ったのだから、本当にどうしようもないほどに終わっていたのだと思う。
怪獣が長い尻尾を振り上げ、俺たちを叩きつけようとしていた。俺はとっさに少女を庇った。死んだ、本当に死んだ。クソしょうもない人生だったなぁ。こんな事ならもっと思い切った事色々しとくんだったぜ。走馬灯がそろそろ見えそうだった。
容赦なく尻尾が振り下ろされたその時、光が俺の元に飛び込んできた。そう!例えるなら某光の巨人的な展開。
気がつくと、俺は謎の空間に立っていた。
「なんだここ……。俺、死んだのか!?あの子はどうなったんだ!!?」
俺が我に帰り慌てていると、どこからともなく声が聞こえてきた。
「安心してくれ。君はまだ生きている」
「マジか!やった!いやいや、俺のことはいい!あの子はどうなったんだよ!」
「君が助けようとした少女も今のところは無事だ」
「そうか。よかった……ってよくねぇ!」
「あの化け物はどうするんだよ!!」
すると、謎の声は―――
「そう!そこが問題なんです!」
「はい?」
謎の声の呑気さ加減に、思わず気の抜けた声が出てしまった。
謎の声はそんな俺などお構いなしに話を続けた。
「君と少女は私のおかげで一時的には助かったが、このままでは死ぬことになる。君達だけではない。まわりにいた人々もだ」
私のおかげでってちょっと恩着せがましいのが嫌だな。
その言葉に対して俺は深い意味を考えなかった。この先後悔することになるなんて知りもしないで―――
「じゃあ、どうすればいい!どうすればあの子を、街のみんなを助けられる?」
「変身だよ」
謎の声はそう言った。
「変身?えっと一体、何に変身するんだよ」
「決まっているだろ。魔法少女に変身するんだよ。ちょっと考えたらわかるだろ」
いや、わかんねぇだろ。変身しろって言われて魔法少女になるんだと直結できる人間はそうはいないだろ。
「まさかあんた!あの子に魔法少女になって戦わせようってのかよ!ふざけんなよ!あんな幼い子を危険な目に遭わせられるわけないだろ!!」
「いやいや、君は何を勘違いしているんだね?君が変身するんだよ?」
「あ、そうなの?………え?俺ぇぇぇぇぇぇぇぁぁえ!!!?」
「大袈裟だなぁ。そんな驚くことじゃないじゃないか。そもそも君以外に誰がいると言うんだい?君ひょっとして馬鹿なの?馬鹿なのかい?」
謎の声が何故か俺を馬鹿にしてくる。
「馬鹿はどっちだよ!俺が魔法少女になれるわけないだろ!!俺は少年だ!なんなら青年だよ!」
「もういちいちうるさいなぁ」
謎の声がめんどくさそうにそう言った。
いやいや、お前その反応はどう考えてもおかしいだろ。
しかし、どうにかして現状を打破しなければならないのもまた事実だった。俺は覚悟を決めて謎の声に向かって答えた。
「俺が変身すれば、街のみんなもあの子も守れるんだな?」
謎の声もまたさっきまでのふざけた態度から一変して真剣に答えてくれた。
「あぁ、君なら守れる。全てをね」
「わかった。俺に出来る事ならなんでもする。だから、俺を魔法少女の力をくれ!」
「おぉ!いい感じになってきたね!」
茶化すな。すると、謎の空間から光と共に変身に必要だと言う華やかなストップウォッチのような変身アイテムが現れた。
「それでは大きな声で叫びたまえ!『変身』と、そしてアイテムのスイッチを押すのだ」
「よっしゃ!いくぜ!『変身!』」
掛け声と共にスイッチを押した。
これが全ての始まりだった。体が光包まれた。
「では、頑張ってくれたまえ。ブラスターピンクよ!」
気がつくと俺は怪獣の尻尾を受け止めていた。そしてそのまま弾き返した。
「なんだかわからねぇけど、すげぇ力だ」
ふと店の窓ガラスで自分の姿を見ることになった。華やかなピンクのドレスに身を包んだ自分ではない美少女がそこには立っていた。
「これが俺!?マジかよ!ほんとに魔法少女になっちまったのかよ!?いや、驚く前にアイツを倒すのが先か!いや、もうわけわかんねぇんよ!!」
怪獣は口からビームを出してきた。でも、今の俺は体が無重力ってこういう感じなのかと言わんばかりに軽やかな動きで怪獣の攻撃を躱すことができた。
「これはすごいな!今度はこっちの番だぜ!」
怪獣目掛けて連続パンチを繰り出した。怪獣は唸っていた。どうやら俺の攻撃が効いてるみたいだ。
「いける。いけるぞ!」
そして俺はトドメの必殺技を怪獣に向けて放った。空高く飛び上がり―――
「くらえ!ハッピーストライク!」
脚に全ての力を結集して放つ必殺キックはもうもろパクリだけどまぁいいや。怪獣の体を突き破り、怪獣は消滅していった。
「やったのか……やった!勝ったぞ!」
まわりの人からも感謝の声が聞こえてきた。そして助けた少女からも
「ありがと!お姉ちゃんとっても強いんだね!でも、さっき私を助けてくれたお兄ちゃんがいなくなっちゃったの……」
どうやら、誰も男の俺が変身しているなんてことには気づいていない様子だった。だからこう答えた。
「お兄ちゃんならきっと大丈夫だよ」
そして心配そうな少女の頭を撫でた。
4月15日、俺は魔法少女になりました。
前書きでも言ったように、思い付きで書いているので数多くの作者さんのように先の展開が決まっているということはありません。しかし、また思いついたら続きを書きたいと思います。その時はよろしくお願いします。読んでいただき、ありがとうございました。