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え、いきなり旅立ち?
「カルヴァス、今日からお前は旅に出ろ」
豪華絢爛な宮殿の中に、威厳ある声が響き渡る。
「え、いきなりですか?!」
それに慌てて答えるのは、まだ幼い男の子。
「荷物は纏めてある、直ぐに王宮を出て行くが良い」
「だ、だけど...いくら何でも俺には早す」
「口答えするような息子に育てた憶えは無い!」
部屋の中央に座る、般若の如き面をした王は怒鳴り散らす。
「分かりました...失礼します、父上」
少年は肩を落とし、 王座の間から出て行く。
「死んでくれるなよ、カルヴァス...」
ぽつり、と王がこぼした言葉は誰の耳にも入ることなく静かに消えた。