異能力バトル ー水楼ー(前編)
名前を呼ばれた3人は、顔を見合わせた。
「引いてください。」
まずカードを引いたのは茶髪に黄色い瞳の桜だった。そしてリンはそのカードを見つめてニヤリと笑った。
「自分の触れた生命の死と生を操ることが出来る。」
桜は驚いた顔でリンを見る。どうやら当たったようだ。
次に引いたのは黒髪ロングの美月だ。またもやリンはカードを見つめて、
「少し先の運命を見破り、変えることが出来る。」
そして最後は紫乃が引いた。
(えっ、どういう事?)
「自分の周りの重力と強さを操ることが出来る。これで全員揃いましたね。さあ!!」
リンはパチンと指を鳴らすと3人の空間は一変した。床は氷のように青く透き通り、壁は青々とした色だ。
“気づきましたか。ここは言っていた爽の塔。この階段を上って行くと、水楼がいますからポケットに入っている『神具』を付けてください。”
リンの声が頭の中に響く。言われた通りポケットに手を入れると、桜は桃色の手袋。美月は黒い眼帯。紫乃は白い手袋が入っていた。
紫乃達は神具を付けて、真ん中の螺旋階段を上って行く。階段を20分ほど上ると頂上に着いた。
青色の龍のような生き物が白い霧のようなものを漂わせながら「ヒューヒュー」と鳴きながら飛んでいる。
“ご存知でしょうが、水楼です。周りに漂わせている白い霧で姿をくらますので気を付けてください。”
「気をつけろって言われても…」
美月が小さく呟いた。
水楼は紫乃達に気がついたのか血相を変えて向かって来た。紫乃は驚いて手を横に振った。すると水楼は何かに弾き飛ばされた。
“言ったでしょう、重力を操れるって。”
(そういうことか。この手袋を付けているから重力の影響で水楼は弾かれたんだ)
紫乃は納得して手をグーパーした。
水楼はむくりと起き上がり、体を横に振って「グワーー」と鳴く。すると、それに反応したのか小さい水色の竜が数匹寄ってきた。
予想以上に長引きました。
今回は紫乃の登場がほとんどでしたが、後編は桜と美月の活躍を増やそうと思います。