1.冷たい夜に
初めて投稿させていただきます。
拙い文ではありますが、よろしくおねがいします。
毎日同じ景色を見て、
毎日同じ所に行き、
毎日似たようなことをして、
毎日似たような食事を取り、
毎日同じ所に帰り、
毎日同じように眠る。
もう何年も同じことを繰り返して、人間と言うよりは規則的に動き続ける振り子のような毎日だった。
だがその振り子のような毎日を続けることで、俺は何とか人の形を保ち行き続けられていた。
このまま何日、何ヶ月、何年と繰り返していき、誰かに看取られることなく散っていく。
それが今の唯一の望みだった。
過去は自分を引きずり、夢は呪いのように縛り上げる。
それから逃れる方法はたった一つ。
死ぬことのみだった。
しかし人間の本能は恐ろしく、これだけ本人が死にたいと思っていたとしても自ら命を断つ行為には嫌悪感と恐怖をもたらして来る。これのおかげで俺はかろうじて生かされていると言ってもいい。
だから俺はずっとこうして、この振り子のような毎日を生きていくしかないのであった。
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安物のビニール傘に重たい音が鳴り続け、革靴には水が染み込み感覚がない。
それに加え冬の冷気で濡れたズボンから体温を奪われていく。
メガネは吐息で曇り、耳も千切れそうなほど痛い。
雪が降る化のような温度と雨の中だ。
駅から少し外れれば人影もなくなっていく。
仕事帰りに買った弁当も、もうだいぶ冷めてしまっただろう。外に出たときに発していた湯気は見る影もなく、袋もビショビショに濡れていた。
早く家帰ってシャワーを浴びたい。
そう思い家路を急いだ。
自宅のアパートに着き、鍵を取り出そうと横を向いたときだった。
この雨の中だ、普段は子供も遊んでいるであろう公園
その公園のベンチで傘もささずに座り込んでいる人間がいた。
ベンチの背でよく見えないが、髪の毛は多分肩より長いだろう。
顔や服装は雨でよく見えないが、おそらく女性であることは間違いないだろう。
きっとおおかたクリスマス前に別れたカップルだろう。
あれはどう見てもやばい奴。
触らぬ神に祟り無し。
そう思い、いそいそと部屋の中に入る。
すぐに暖房をつけ、濡れてしまったスーツを拭き、ハンガーにかける。
体が冷え切ってしまった。
いそいそとシャツを脱ぎシャワーを浴びた。
シャワーから上がり、頭を拭く。
ふと先程の女性が気になり、窓から公園を覗いた。
まだいるのかよ...。
いつもより長めにシャワーを浴びたつもりだが、その間もあの女性は土砂降りの中で座っていたのだろう。加えてこの十二月の気温だ。痛いくらいの寒さが体に突き刺さるだろう。
見かねた俺は傘を渡しに行くことに決めた。
スニーカーを履き傘を二本持つ。
外に出てみるがかなり寒い。
湯冷めしてしまう前にこのお節介を終わらしてしまおうと公園に向かった。
公園に近づくに連れて女性の容姿が見えてくる。
黒髪のロングにセーラー服の小柄の少女だった。
多分家の近所の高校のものだろう。
まさか女子高生とは思わなかった。
ならなおさら家に帰ることを勧めたほうがいいのだろう。
傘を渡すべく俺は少女に話しかけた。
「なあアンタ、大丈夫か。」
突然話しかけられた少女はビクッと反応し、俺の顔を見上げた。
ずっと雨にうたれていたからか少女の顔は真っ白になり、前髪と顎からは絶え間なく雨水が溢れていった。
「この真冬の雨の中、ずっと座って何やってんだ。家の人心配してんだろ。傘貸してやるから、早く家に帰れ。」
そう言って傘を差し出すも、少女はじっと俺の顔を見ていた。
さすがに怪しすぎたか、不審者として警察を呼ばれるのではないかと不安が募っていく。段々と自分のお節介に対する後悔の念が生まれ始めた頃。
少女は悲しそうに笑ったあと、
「お兄さん、アタシのこと...買わない?」
と言い寄ってきた。
初めてながら少しづつかけていけたらと思っていますので、コメント等いただけると嬉しいです!