中学漫才「野球」
Zombie Nationの『Kernkraft 400』で二人がステージ中央のマイクの前に立つ。
「さっそくだけどさ、野球選手って三振したらバット折るよな」
「うん、まず自己紹介は最低限やろうか。僕が聖沢洋介。急に話し始めたのが本馬快奈さん。二人合わせて『東中の光と影』。オーケー?」
「うん。で、バット折るじゃん?」
「どうしてもバットの話がしたいんだね? 皆が皆そうじゃないけど、折る選手もいるね」
「あれさ、ホームラン打たれたピッチャーはグローブ裂くのかな?」
「……どうしてそう思ったのかから聞かせてもらえる?」
「いやーなんとなく」
「なぜかバファローズのフィガロ投手で想像されたんだけど」
「やめてくれよバファローズ好きなんだから」
「ええ……野球好きの人がグラブ裂くとか言わないと思うんだけど。せいぜい地面に叩きつけるくらいでしょ」
「とにかくこれを俺は『バット折り理論』と名付けた」
「本馬さんってよく名付けたがるよね。本馬さんの理論なら盗塁に失敗したランナーはどうするの?」
「スパイクを噛みちぎるだろーな」
「もはや狂人だね! 本馬さんの中で野球選手ってどんな扱いになってんのかな⁉︎」
「ところで来週から夏の甲子園だな」
「ああうんそうだね」
「よく盗塁とか振り逃げは高校生らしくないって言うよな」
「それはわかる」
「逆に高校生らしいプレーってどんなの?」
「まあ、内野ゴロでも一塁まで走るとかそういう全力プレーのことだと思うよ」
「そうか? ピッチャーが『まっすぐ投げまーす!』って宣言してから投げるとかだと思った」
「それは面白さ半減どころじゃないね!」
「逆にバッターは打つか見逃すかの宣言だな」
「面白さの欠片もなくなったよ!」
「ところで俺は甲子園でのセントラル開催もそろそろ限界だと思うわけ」
「次から次へと言い出すよこの人!」
「とは言えやっぱり甲子園が球児の憧れでもあるわけだし、敗退する場所は甲子園にしてやりたいよな」
「僕らから見れば高校生は先輩なのにこの上から目線」
「だから甲子園を増やすってのはどうかな?」
「きっと大混乱だね!」
「さて、そろそろ終わりにしようか」
「オチも何もなし?」
「だって落としたらエラーじゃん」
「今のがオチだよ! まあバファローズは去年より順位落とさないことは確実だけどね!」
「え?」
「どうもありがとうございましたー」
「……うう……」
「本気で落ち込まないで! きっと今年は大丈夫だから!」