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この世界に生きる僕ら  作者: くーる
決戦の地
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ストラトス中央地区

 

  事実上、南地区の奪還に成功した遠征隊一行はストラトス中央地区の街道を移動する。


  この中央地区にも、サイクロプスのような大型の魔獣が配置されている可能性を考慮し、慎重に行動するも要所要所に少数の魔物が点在しているだけだった。


 「レインズさん、あの……」

 「ん、なんだ?」

 「ストラトスに平和が戻ったら、帰る前に南地区に寄って欲しいんですけど……いいですか?」


  再び降り出した雨に打たれながら、レインズの反応を伺うように話すタイヨウ。


 「すべて終わった後なら構わんが……どうした」

 「実はーー」


  タイヨウはレインズとアグルが交戦中に起きていた事の顛末を話した。


 「なるほどな、それで去り際に助けた女の子と一度遊ぶ約束をしたのか……」

 「はい……」


  何やら抜の悪そうにしているタイヨウを、レインズが気にかける


 「……釈然としないな。言ってみろ」

 「あの、リリィがキュートとも遊びたいって……」

 「……ふむ」


  あの時、やむを得ない状況下ではあったものの、リリィとフィールにキュートの存在を知られた事を気にしているようだった。


 「……すいません」

 「なに、謝る事は無い。そのおかげで負の感情は薄れサイクロプス討伐に至ったのだ」

 「……はい」


  それでもなお気が晴れない様子のタイヨウを見てレインズは「ふぅ、世話の焼ける弟子だ」と少し微笑みながらこぼした。


 「案ずるな、リリィの件は私が何とかしてやる」

 「ホントですか?!」


  何か策があるのかニッコリと微笑むレインズの姿は、つい先程自らの力を持って氷の暴君の通り名を示した鬼神とは思えないほど温かなものだった。


 「任せておけ。さてそれと……」


  レインズは大きく後ろを振り返り、後続を行く隊員に声をかけた。


 「あーー、その……フィールと言ったかな?」

 「は、はい!御用でありまふかレインズ殿ッ!」


(フィールさんが噛んだ……)


  突然の呼び出しに驚いたフィールは、馬を走らせレインズと並走する。


 「弟子が世話になったな」


  レインズの戦闘をその目にして以来、先の偵察でレインズに意見した事を深く悔いていたフィール。


 「い、いえ!自分も勉強させて頂きましたッ!」

 「そんなに畏まらんでくれ……」

 「はひっ!」


  話が中々進まない事で、額に指を当て首を軽く横に振り「まぁ、ともかく」と、話を戻した。


 「話に聞けばタイヨウの霊獣を見たようだが……」

 「えっ、あ……はい。タイヨウ君から他言して欲しくないと言われましたので、隊の仲間にも話をしておりませんっ」


  フィールの真っ直ぐな瞳を見たレインズは「見られたのがキミだったのは不幸中の幸いだな」と、ホッと肩をなでおろした。


 「は、墓場まで持って行く所存……ですので……」

 「ん?」

 「こ、氷漬けにしないでくだしゃい……」

 「い、いや……そんなつもりは初めから無いが……」


  そうこうしている間に遠征隊一行は、ストラトスの街中央部に到着した。


 「時間を取らせたな、戻ってくれ」

 「はひっ」

 「フィールさん、ありがとうございます」


  フィールが持ち場に戻ろうと速度を落とした際にタイヨウが話しかける。


 「あぁ、いやぁ、うん。約束は守るさ。……だからタイヨウ君も頼むよ?」

 「はいっ、約束ですから」


 「何をコソコソと話している、進むぞ」


 「ひゃいっ!失礼致します!」

 「はいっ、レインズさん」


  ストラトスの街、中央部。

  遠征隊一行が進行してきた南地区街道はここが終着となる。

  アストフトのような広場や時計台は無いが、大きな交差点が存在していた。

 

 「やっぱり人はいませんね」


  中央部に住宅地はほとんど無く、他地区の街道を繋ぐ交差点があるだけだ。

  しかし普段であれば馬車や人の往来で賑わうはずのこの場所も、魔獣の影響を受け静まり返っている。


 「そうだな。それにこの場所も争った跡が無い」

 「みんな家の中で避難してるんですね……」

 「……そうある事を祈ろう」


  殺伐とした中央地区は、奪還前の南地区とも異なる気味悪さがあった。


  そんな中、遠征隊一行はストラトス領主の屋敷を目指し進行をする。


 「ここからはどうやって進むんですか?」


  レインズは「うーむ」とわ少し考える。


 「こちらの戦力は万全だが……」


  あれだけの戦いの後にも関わらず万全と言い切るレインズに驚きを隠せないタイヨウ。


 「えっ……疲れてないんですかっ」

 「ん?調子良いくらいだが?むしろあの程度で音を上げていては、冒険や探査調査など出来んぞ」

 「あ……はい」


 「まぁそれはともかく」


  どうやらレインズの考えは、戦力に問題は無いもののこれ以上の戦闘は隊員の士気が下がりかねないとの事。


 「それに南地区と比べると瘴気も濃くなり、雑魚の魔物も手応えが出て来たのでな……。雲の濃い北地区は避けて東地区から向かおうと思う」


  街を覆う雲の影響で時間感覚が狂っているが、時刻は十四時を過ぎたばかり。

  雨で体力を奪われタイヨウや他の隊員にも疲れの色が見える。


 「ここからだと屋敷までどれくらいなんですか?」

 

  東地区方面に進行を始める遠征隊一行。


 「一時間もあれば着くだろう」

 「よし、じゃぁとにかくもうひと踏ん張りですね」

 「そうだな。……変わりはないか?」


  あれ以来、タイヨウから闇の気配は感じていない。しかし、負の感情を糧に再生と強化を繰り返したサイクロプスの事を考えると、タイヨウにも何かしらの影響が出るのではとレインズは危惧しているのだ。


 「ちょっと疲れましたけど、大丈夫です」


  意図していた答えと違うものが返ってきたが、レインズはひとまず問題無いと判断し「そうか」と安堵した。


 「行きましょう、レインズさんお願いします」

 「わかった」




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