決着
タイヨウがリリィを親元に帰した少し前の事。
アグルの一撃で大きなダメージを与えたのにも関わらず、再び濃い瘴気を纏い損傷箇所を再生したサイクロプス。
しかし、レインズはタイヨウの行動をきっかけに活路を見出していた。
「なぁレインズ、さっき言ってたボウズがなんちゃらってなんだ?」
ダメージを与える度に再生するサイクロプス。
「こいつの再生能力にはカラクリがあるんだっ!」
攻撃を躱せば街に被害が出る為、レインズはそれを受け止め続ける。
「そうなのか?!」
四本腕の攻撃を一人で捌く事は困難を極め、アグルが加勢する。
しかし攻撃によってダメージを与えてしまえば、その度に再生し魔力が強くなる。それにより魔法に対する耐久性が上がる事を懸念したレインズ達は防戦に徹していた。
「説明は後だ!ぐっ、とにかく今は時間を稼ぐぞ!」
ひたすらに叩き付けられ体力を奪われる。
「お、おう!」
反撃されないのをいい事に、サイクロプスは二人に猛打する。
「うぉっ!くっそ!」
「くっ!」
巨体から繰り出される攻撃により二人は片膝を付いた。
「おい!大丈夫か……ーーッ!」
「……許さん」
レインズから放たれる禍々しい殺気。
横に居たのがアグルで無ければ恐怖で気を失う程のものだった。
「半魔人風情が……ッ!こちらが下手に出れば良い気になりおって……ッ!私に膝を付かせるなどぉ!……必ず!必ずッ!原子レベルにまで打ち砕いてやるッ!」
「ま、ままままままて!落ち着け!まだ我慢だ!」
レインズの殺気にあてられたサイクロプスは脅威を感じ、更に追撃をすべく大きく振りかぶった。
その時ーー
「レインズさん!」
レインズの後方からタイヨウの声が聞こえた。
「待ちわびたぞッ!タイヨウッ!」
「ハイごめんなさい!?」
気が付けば雨は弱まり霧も晴れていた。
「フィンブルッ!」
レインズの一声でフィンブルはサイクロプスの目を潰した。
「グウオオオオオオ!」
突然の事に二本の手で目を抑えるサイクロプス。
「アグルッ!」
「へいへい、わーってるよ!ラークス!」
攻撃の手が緩んだ瞬間にアグルが腕を弾き飛ばし、その間にレインズは距離を取った。
「ビリビリしてもらうぜ!」
剣に紫電を纏わせ両足を切りつけると、サイクロプスはその場で動けなくなった。
「蒼の静寂導くは光の雫と青い炎。氷輪映す水面に咲くは汝に手向ける純白の薔薇」
レインズの詠唱と共に髪は白く変色し、サイクロプスの頭上に白い魔法陣が現れる。
「マジかアイツ!俺まだ居んだぞ!」
アグルが決死の表情でその場から退避した。
「行くぞ、フィンブル」
とても静かに呼びかけると、レインズはフィンブルと共に魔法陣の真上に高く飛び上がり、空中で更にもう一つ魔法陣を召喚する。
「森羅万象、白に染まれ」
レインズは魔法陣の上に乗り、その中心に露一閃を突き立てそっと手を放した。
次の瞬間、露一閃は一筋の光となって音も無くサイクロプスを真上から貫いた。
「さぁ、後悔しろ……」
光に貫かれたサイクロプスは断末魔の叫びを上げる間も無く全身を凍らされ、その氷柱はレインズの足下にまで届く程高く伸びた。そして
「私に敵対した事をな」
フィンブルの咆哮によって氷は砕け散り、それは雪の結晶の様に煌めきながら空に舞い上がったーー
「ふぅ、ご苦労だったなフィンブル。下に降りるぞ」
フィンブルの背中に乗ってレインズが地上に降り立つ。
「ん?皆どうした?」
事の顛末を建物の影から見ていたタイヨウとフィールが震えていた。
「れれれ、レインズさん?だ、大丈夫ですか?」
「む?私は無傷だが?」
「いえ、あの、レインズ殿に近付いても大丈夫ですか……と言う意味であ、あります……です」
それは他の隊員も同じ気持ちだった。
本来であれば、割れんばかりの勝鬨を上げるべき状況だったが……初めてレインズの力を目の当たりにしたアグル以外の者全てが怯えている様子だった。
「だーから言ったろ……氷の暴ーーッ?!」
「何か言ったか?」
「いや何も!」
……こうしてレインズやアグル、タイヨウやフィールの活躍によりサイクロプス討伐に成功し南地区一帯の雨は止んだ。
どうやら南地区の負の感情の根源であったサイクロプスを討伐した事により、蔓延っていた魔獣も激減したようだ。
それによって南地区の防衛隊も機能するようになり、この事態に街の人々は窓を開け遠征隊一行に賞賛の声を上げる。
しかし未だにストラトス全体が魔獣の脅威に晒され決着ている事実に揺るぎはなく、レインズとアグルは厳戒態勢の維持と外出の禁止を言い渡した。
「さて、ではストラトス領主の屋敷に向かうぞ」
「おおおお!」
レインズへの恐怖心が治まった一向は、南地区を後にしストラトス領主の屋敷がある北東へ向うのだった。




