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この世界に生きる僕ら  作者: くーる
決戦の地
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少々の涙


  レインズとアグルがサイクロプスと交戦を始めた直後、タイヨウはアーチャーと共に建物の影で身を潜めていた。


 「レインズさんとアグルさん……あんな化け物相手で大丈夫なのかな……」


  タイヨウが心配そうに一人呟くと


 「レインズ殿も隊長も、アストクリフで五本の指に数えられる剣の使い手。きっと大丈夫!」


 「そうですよねっ。俺も師匠を信じます」


  激しい戦闘を繰り広げ、アグルがサイクロプスに初太刀を浴びせた時だった。


 「……あれ?今なんか……。アーチャーさん、何か聞こえませんでした?」


 「ん?そうかな?僕には聞こえなかったが……。あぁ、あと僕の事はフィールと呼んでくれ」

 「あ、分かりましたフィールさん」


 「タイヨウ君には何が聞こえたんだい?」

 「なんか……泣き声?みたいな……」

 「そうか……。この事態で泣き声が聞こえたとなると、少し心配だね」


  激しさを増す戦闘の最中さなか、レインズが街路樹とサイクロプスの腕を破壊する。


 「グウオオオオオオ!」


  その叫びはタイヨウ達が隠れている建物の窓を大きく揺らした。


 「うおぉっ、ハンパ無いなレインズさん」

 「やはりレインズ殿も隊長も強い……」


  街の中をこだまするサイクロプスの叫びが雨空に吸い込まれ雨音に変わる。

  そして一瞬の静寂の後ーー


 「ーーッ!フィールさん!」

 「タイヨウ君、僕にも聞こえたッ」


  タイヨウとフィールの後方から建物の隙間を吹き抜けた風は、確にその声を運んで来た。


 「俺行ってみます!」

 「え?!あぁなら僕も!」


 

  降りしきる雨の中、建物の隙間を走るタイヨウとフィール。

  通りの多いであろう街道から一本裏に入ると、そこは三階建ての集合住宅が建ち並ぶ住宅地になっていた。


 「フィールさんあそこです!女の子が居ます!」

 「ーーッ!」


  タイヨウが走りながら指さした方向には街路樹が植えてあり、その木の下には小さな女の子が泣きじゃくっていた。


 「うわああああん!」


  少女の下へ急いで駆け寄る二人。

  フィールは周囲の安全を確認しつつ、敵の襲撃に備え弓を構える。

  その間にタイヨウは「なんでこんな所に女の子が!」と声を荒げ、すぐに着ていた雨具を脱ぎ少女に着せた。


 「うわああああん!」

 「ほら、もう大丈夫だぞ」


  泣き止ませようと優しく少女を抱き寄せる。


 「タイヨウ君、周囲に敵は居ないようだ。けど、ここに留まるのは得策では無いよ」

 「分かってます。でも……」


 「ふぇええええん!」


  一向に泣き止む気配の無い少女を見てタイヨウは決死の判断をする。


 「しょうがないよな……。キュート、おいで」


 キュイー♪


 「ふぇっ」

 「ーーッ!?ドラゴン?!」


  これまで女性陣に絶大な人気を得ていたキュートで気を引く作戦に出たタイヨウ。


 「ほら、可愛いだろ?キュートって言うんだ」

 キュイ♪


  タイヨウは屈み目線を少女に合わせ、キュートを抱き上げ少女にそっと差し出す。


 「ふぇっ、ふぇぇ……ひっく、……かわいい」


  なんとか泣き止ませる事に成功し、少女はキュートを抱っこして少し落ち着いた様子を見せる。


 「あったかい……」

 キュイー♪


 「た、た、タイヨウ君……コレは……」


  逆に落ち着きを無くしたフィールに「後で……説明します」と静かに伝えるタイヨウ。


 「……そうだね、今は彼女の保護が最優先だ」


 「俺はタイヨウって言うだ。こっちのお兄さんはフィールさん。君の名前は?」

 「お兄っ……」

 「フィールさん?」

 「いや、何でもないよ……」


 「わたし、リリィ」


  およそ五歳くらいだろうか。

  短いツインテールが弾む少女はリリィと名乗り、これまでの経緯を話してくれた。


 「おそとで……おっきいこわいのが来て……ルルが……」

 「うん、……うん?」


  話によるとサイクロプスの出現に驚いたリリィのペット、犬のルルが逃げ出してしまった事でリリィが慌てて追いかけた結果、迷子になった……らしい。


 「犬も心配だけど、御両親はもっと心配しているだろうね……。リリィちゃん、お家がどっちか分かるかな?」


 「ふぇっ、わから……ない……ふぇぇ」


  迷子を再認識し、混乱してしまったリリィが再び泣きそうになってしまう。


 「あーっと待って泣かないでぇ……あっ!」

 「どうしたんだい、タイヨウ君?」

 「フィールさん!リリィとキュートをお願いします!」

 「え?!ちょっ、まっ……行ってしまった」


  タイヨウは何か策を思い付いたのか、一目散に元の場所へ走って行った。



 「はぁ、はぁ、アレがあれば……きっと!」


  距離にして見れば大した事は無いが、水を吸い重くなった服と雨が体力を余計に奪う。


 「はぁ、はぁ、よし!あった!」


  目当ての物を手に取ったタイヨウ。


 「はぁ、はぁ、大丈夫だよな?レインズさん」


  その流れで街道で戦っているレインズ達の様子を、建物の影から少し顔を出し確認する。


 「えぇっ?!腕四本なってるし劣勢じゃん!」


  序盤の勢いも無く、明らかに攻めあぐねているレインズ達。


 「ーーそうか!」


  何かを確信し、タイヨウはフィールとリリィの下へ走り出した。

  その手にはーー



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