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この世界に生きる僕ら  作者: くーる
決戦の地
36/43

空の向こう


レインズの活躍によって魔獣の気配が無くなり、この気を逃すまいと浸走る遠征隊一行。


次第に雨が強くなる一方、遥か先にストラトスの街が微かに見えて来る。


「レインズさん!あれって!」

「あぁ、あれがストラトスの街だ」

「遠っ!」


降り頻る雨と黒く厚い雲が影響して距離感が鈍る。


「なに、言うほどでもないさ。こーー」

「このまま何事も無く行けば……とか言わないで下さいね?」

「む、何故だ」

「何でもです」


フラグを立てさせまいとタイヨウがレインズの言葉に被せる。

すると後続のレインズ「おーい」と先頭に馬を走らせてきた。


「今更何をしに来た。戦闘はとっくに終わっているぞ」

「またそうやってぇ……」

いい加減タイヨウも慣れて来たようだ。


「マジな方の話なんだが……いいか?」

「ふん、なんだ」


アグルは小さく溜め息を吐き「実際手合わせてみてどうだったんだ?」と、先程の魔獣についての話を始める。


「取るに足らんな。私の気迫を受けて取り乱し、相討ち狙いで挑んで来る程度だ」

「なるほどな……んじゃぁ底は知れたって訳だな」

「所詮当て馬だろうと思うが……」


「あのー……」

タイヨウが発した一言で、今の会話の真意を知りたいんだと感じたレインズ。

「つまりだ、敵は我々の力量を測るために襲撃させ、更に手の内を知ろうとしたんだ」


「え、あ、俺の考えてる事よくわかりましたね……」

「これでもお前の師だからなっ」

フフンっと得意気に鼻を鳴らすレインズ。


「だが、楽観視は出来ない。

やはり高い知能を持ち合わせていて、良く統率されている」

「そうだな……厄介だぜ、こりゃぁ」


「さっきの襲撃を支持したリーダーが居るって事ですよね?」

「そうだ。しかしそうなると敵の目的も見えなくなってくる」

やっこさんが始めっから俺らを殺る気なら、様子見なんかしねーで勝負しに来るだろうからな……。おっと、長居もしてらんねぇな」


後続が少し遅れ始めたのを気にしたアグルは

「とりあえず引き続き警戒態勢を維持するぜっ」と言い残し後退して行った。


「レインズさん、敵は何が目的なんですかね……」

「さてな……。単に我々を甘く見ていただけなら良いが」

「アストフト領地で偵察してたのが敵の仲間だったらって考えると、やっぱりなんかありそうですね……」

「そうだな。何にせよ、これで敵も見方を改めるだろう。

決して油断するなよ」

「はいっ」



先の襲撃以来、敵に目立った動きも無いまま遠征隊一行は順調に進行していた。


街に近付くにつれ舗装された道が続くようになり、ネックだった背の高い茂みも次第に低くなり見通しが良くなる。


しかし、強くなる一方の雨の中を走り続けていた馬にも疲れが目立ち隊が乱れかけていた。


「仕方ない」とレインズは辺りを見渡し敵の気配が無い事を確認した後、道端にそびえ立つ大きな木の下で馬を止めた。


「ここなら敵も襲撃出来まい」

「これだけ周りが見えてれば安心ですね……うわぁ、びしょびしょだ……」


遠征隊が丸々雨宿りできる程の大きな木。

その周囲は茂みや林も無く、大樹は完全に孤立していた。


隊員の霊獣により木の上や枝葉に魔獣が隠れて居ない事も確認し、一行は束の間の休息をとる。


「身体は冷えてないか?」


慣れない遠征と強い雨。

レインズの後ろに居たとは言え、タイヨウも酷く濡れている。


「ホットスフィア?のおかげで大丈夫です。

つかレインズさんこそ大丈夫ですか……?」


遠征隊の隊員には軽い衝撃で熱を発するスフィアが配給されており、紐を付け首から掛けておけば胸元でじんわり温かくなる防寒装備だ。


「なんだ、寒いと言えば抱き締めて温めてくれるのか?」


大樹の幹に背中を預け、片膝を上げながらタイヨウをからかう。


「そ、そそ、そんなん……出来ませんっ!」


タイヨウは知っていた。

レインズの身体は攻撃力が高い事を。

普段、店に居る時のレインズは薄着で居る事が多く、その際に確認済みだったのだ。


「ハハッ、お前をからかうのは本当に楽しいよっ」


ケラケラと笑うレインズを他所に「勘弁してくださいよ……」と項垂れるタイヨウだった。



警戒態勢を維持しつつ、遠征隊一行は三十分程の休憩を終え再び進行を始めようとしていた。


「よし、そろそろ行くか……。

ん?どうしたタイヨウ」


そこには大樹を背に座り込み、フェリアスから譲り受けた剣を支えにして俯いているタイヨウが居た。


「なんだ、具合でも悪いのか?ーーッ?!」


「いえ、大丈夫です……」


レインズは一瞬だったが、タイヨウから滲み出た黒い殺気を微かに感じた。

そう、アストフト家でタイヨウが放ったあの時と同じ殺気を。


「おい、タイヨウ……」

「え?!あ、すいません!ボーッとしてましたッ」


先程の雰囲気がまるで嘘のように、いつもの様子に戻るタイヨウ。


「……本当に大丈夫か?」

「はい!具合悪いとか無いです!」

「んんむ……。具合が悪くなる以外にも、何か変化を感じたらすぐに言うんだぞ……」

「はいっ!」


タイヨウの僅かな異変を気にしつつ、レインズは指揮をとり遠征隊は進行を再開した。



大樹が後方で小さく見えるまで進行した一行。


あれ以来タイヨウに変化は見られなかった。

何よりもあの時、アグルは黒い殺気を感じ取った様子が無い事から、レインズ自身気のせいだったのかと思うようになっていた。


「あの、レインズさん」


元々口数の多い方では無いレインズだったが、大樹からここまでの道程をタイヨウの変化について考え込んでおり、そんな様子を感じたタイヨウが声を掛ける。


「ん、どうした」

「大丈夫……ですか?」

「……少し考え事をしていただけだ」


口にも表情にも出さなかったが、タイヨウにはレインズの背中から不穏な空気を感じていたのだ。


「ならいいんですけど……」

「すまないな、大丈夫だ」

「はいっ」



いよいよストラトスの街まで僅かな距離に差し掛かったときだった。

広い平原を上空から索敵していた霊獣が大きく鳴き警戒を促す。

するとタイヨウ達の後ろの隊員が望遠鏡を取り出し、霊獣が警戒している方向を確認する。


「レインズ様!敵群です!」

「何?!」


報告を受けてレインズが自ら望遠鏡を覗く。


「ちっ、このタイミングで……ッ!」

「レインズさん!敵ですか?!」


レインズは望遠鏡をタイヨウに手渡し「行ける所まで行くぞ!」と馬を加速させた。


加速が落ち着いてからタイヨウが望遠鏡を覗くと、遥か向こうに見えたのは広い平原を走りこちらに向かう魔獣の群れだった。


「うわっ!何だあれヤバイ数ですよ!」


見える範囲だけでも百匹を超える数の魔物。

すると後方から「各自戦闘配置に着け!」とアグルの声が飛んだ。


いつの間にか空からは、光が消えていた。


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