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この世界に生きる僕ら  作者: くーる
新たな出会いと成長
32/43

決意


職人によるアカヒバキの散布は予定よりも早く終わり、タイヨウ達は準備を進めている遠征隊に、仕上がった風車を手渡しに向かった。


「これ僕達で作ったんです!一つどうぞ!」

普段は外に姿を現さないルクトの出現に加え、今まで見た事も無い紙細工を渡され「おぉ!これはスゴイ!」

や「一枚の紙から風車が……信じられん」と賞賛の声が上がった。


「みんな喜んでくれて良かったな、ルクト」

「はいっ!」

タイヨウとルクトを優しく見守っていたフェリアスが

「最後は……アグル隊長ですわね?」と、言っていると目の前にアグル率いる第三部隊が見えてきた。


「お、ボウズこれまたすげーの作ったな!」

「ルクトと一緒に作ったんですよ」と言いながらルクトを前に誘導する。

「アグルさんも、どうぞ!」

「おぉ〜!手に持って見るとホントに良く出来てんな!」

勢いよく息を吹きかけ遊ぶアグル。


「準備の方はいかがかしら?」

「順調だぜ、フェリアス嬢

もうそんなに時間もかからないはずだ」

「それは何よりですわ」

更に勢いよく息を吹きかけるアグルを見ていたルクトが、思わず「た、大切にしてくださいね」と心配する。


「もちろんだぜっ!

そういやボウズ、レインズ見なかったか?」

アグルが風車を自分の馬に取り付けながらタイヨウに問う。

「あ、レインズさんなら一度戻って支度をして来るみたいですよ」

「あ、そうゆう事か」

取り付け終わり、馬をポンポンと叩いた。

「何か用があったんですか?」

「あぁ、いや別にないんだけどよ……」

頬を掻きながら抜を悪そうにする。

昨晩の一件以降、会議室で顔を合わせたきり会話をしていなかった為、レインズの様子が気になっていたようだ。


そんな事とはつゆ知らず、タイヨウは頭に?を浮かべながらも「明日はよろしくお願いします」と、頭を下げた。

「おう、任されたぜっ」

「タイヨウ様は、ただのお客人ではありませんのでお願いしますわ」

「お?」

「僕からもお願いします」

「おぉ?この二人にここまで言われたら、頑張らない訳には行かねーな」

豪快に笑いながらタイヨウの肩を何度も強く叩く。

「あ、ああ、ありがとうございま、ますっす」


「ふん、貴様の手助けなど無くとも私ひとりで事足りる」

突然背後からやってきたレインズが、タイヨウの肩からアグルの手を払う。

「おっ?」

「あっ、レインズさん、おかえりなさい」

「お早いお戻りで何よりですわ」

「まぁ、必要な物は毎回決まっているのでな」


ざっと辺りを見渡し、準備の進行状況を確認するレインズ。

その際にアグルの馬に風車が飾られているのを見つけ

「風車も無事に手渡せたようだな」とルクトの頭を撫でる。

「はい!」

「アグルさんで最後ですよ」

「そうか、ご苦労だったな」


「へっへーん!いいだろ?」

ここぞとばかりに自慢するアグルだったが「生憎、私はもう頂いているのでな」と一蹴する。

「さいですか……」

アグルは話を膨らませる事が出来ず、肩を落として馬の装備を確認しに戻ってしまった。


その場が一旦落ち着いたのを見計らって、フェリアスがルクトを気に掛ける。

「ルクト、目的も終えた事だしそろそろ部屋で休みなさい」

「うん、わかったよ姉さん」

「一人で戻れるか?」

「大丈夫ですっ

タイヨウさん、また一緒に紙細工作ってくれますか?」

「もちろんだよ、約束する!」

「ありがとうございます!」

「何かあったらすぐ呼びなさい?」

「はーい……、では皆さん、失礼します」

ルクトは風車をかざしながら、ゆっくり歩いて去っていった。


「ルクト嬉しそうだったな」

ルクトを最後まで見送り、タイヨウが呟く。

「はい、本当に良かったですわ」

「頑張って作った甲斐があったよ」

「ありがとうございますわっ」

「ははっ、いいってば」


気が付けば、遠征隊の皆が各々の馬や馬車に風車を飾り、そよ風に吹かれ回る様子を見て一息ついていた。

「さて、我々も最終確認しておこうか」

「そうだな、にしても本気の装備じゃねぇか」

馬の確認を終えたアグルが戻って来ていた。


レインズの腰元には、蒼を基調とした鞘に収まる剣が光っていた。

「弟子の手前、師の実力を示しておくのも務めかと思ってな」

するとアグルが感慨深そうに「露一閃つゆいっせん……か」とつぶやく。

露一閃つゆいっせん?」

タイヨウとフェリアスが顔を合わせ?を浮かべる。

「この剣の名だ

刀身に水属性が付与されいている」

「レインズの異名の由来になった剣だな」


「へ、へぇ……なんかすごそうですね」

「由来も何も、その異名を名付けたのは貴様だろう」

明らかに不服そうなレインズ。

「そうなんですか?!……ッ?!」

ビリビリとレインズから気迫を感じる。


「ボウズ、これ以上この話は広げないでおこう……それがお互いの為だ」

それがレインズからの警告と悟ったタイヨウは「……わかりました」と、それ以上の詮索をやめた。

「賢明な判断だな」

「まぁ言わずとも魔獣と交戦になれば……その意味が分かるさ」

何故か遠くを見つめるアグル。

何かあるとは思ったものの「は、はい……」と素直に返事だけを返した。


「さて、用も無くここに居ることも無いな……タイヨウ、戻るぞ」

「わかりました」

「では、わたくしも貨物品の最終確認をして参りますわ」

「よろしく頼む、フェリアス嬢」

「じゃぁ俺も他の隊の確認行ってくるぜ〜

風車さんきゅー」

「はい、失礼します」


各々が持ち場に戻り、二人はレインズの荷物を下ろす為にレインズの部屋へやって来た。

「ふぅ、久々に装備しているとやはり肩が凝るな」

荷解きを始めるレインズ。

「レインズさんの持ってる剣って、やっぱりレインズさんが作ったんですか?」

ソファーに腰掛けていたタイヨウが何気なく話かける。

「これは……父の形見だ」

「えっ、あ……すいません」

「いや、いいんだ

父は最後まで鍛冶屋としての人生を全うした……悔いはないだろう」

「……はい」


「……持ってみるか?」

「ッ!いいんですか?」

「別に構わんさ、減るものでもない」

おずおずと立ち上がりレインズの近くに寄るタイヨウ。


「そういえば刀身に水属性が付与されてるって言ってましたけど、もしかして昨日の商人さんは闇属性で

同じ事をしようと考えてるんですか?」

「そうだな

剣に関わらず、ほかの装備にも属性を与える事ができる…その為には精霊石が必要になるがな」

「精霊石……魔石とは違うんですね」

「まぁその変の事は今度教える……ほら、持って鞘から抜いてみろ」

「はい」


レインズから剣を受け取り、鞘から剣を抜く。

鞘と剣が擦れ合う音が部屋に響く。

「見た目より重いんですねっ

あ、刀身に蒼い模様が入ってる……すげぇ、綺麗だ」

刀身の根元から半分位までの所にかけて、清流を思わせる筋がいくも走っていた。


「それは模様では無くすじなんだ」

「筋?」

「この剣には蒼龍の眼と言う水の精霊石を使っているんだが、剣を打つ際に一緒に練り込んだ結果、偶然入った筋なんだ」

「やばいカッコイイです」

レインズは目を輝かせるタイヨウを見て「ふふっ」と小さく笑った。

「見た目だけでなく、私の水属性と合わせると効果は跳ね上がるんだぞ?

さらに魔法も同時に発動させれば威力は絶大だ」

「はへぇ〜……ん?て事は……」

「どうした?」


「レインズさんは魔剣士なんですか?」

「そうだな……、私の場合は更に霊獣も同時に使役して戦うスタイルだからなぁ、ギルドが定めた呼び名には当てはまらんかもな」

「そ、そうなんですか……」

間違いなくとんでもない人が自分の師なのだと確信した瞬間だった。


「属性にも優劣があるからその件も含めて今度教えてやる」

「わかりましたっ、ありがとうございます!」

剣を鞘に収めレインズに渡す。


「お前にもいつか自分にあった剣が見つかるさ

さて、そろそろ本題だな

明日の遠征における我々の役割を説明する」

剣を壁に立て掛け、レインズとタイヨウが向かい合ってソファーに座る。

「はい」


「先程大体は説明したが、我々の役割としてまず索敵が優先される

敵をいち早く見つけて可能であれば撃退

後ろの第二部隊、第三部隊の陣形を崩させないのが目的だ」

「特攻隊長みたいですね」

「字面から推測すれば間違っていないかもな……

と言っても交戦するのは私だ

馬を離れなけばならない時はお前に馬を託すぞ」


「う、馬なんて乗った事無いですけど……」

「乗り回す必要は無い、たずなを握ってそのに居ればいい

それに良く訓練された馬だから安心しろ」

「はいぃ」

「乗り手の不安な気持ちは馬にも伝わってしまうからな……堂々としていればいいさ」

「……わかりました」


「そして障害物を排除しつつ、ストラトスまである程度の所まで来たら安全な場所を見つけ、第二、第三部隊は待機させておく」

「俺達が調査隊になるんですね?」

「そうだ、目立たなくする為に我々と、武装隊のひとりが調査隊として動く」

「何があるか分からないですもんね」

「そうだな、交戦が必要であれば第三部隊を呼び寄せ応じ、何事も無ければ隊全てで街に入る……まぁ正直、出たとこ勝負だがな」


「んー……」

レインズとの会話の中で、ふとある事が気になったタイヨウ。

「どうした?」

「あ、いや、その……調査に行くのが俺とレインズさんだけじゃないのは、何でだろうって考えてまして」


「……何故だと思う」

「んー、魔獣とかに襲われた時に応戦する人と、報告に行く人で分かれる為……ですか?」

「まぁ及第点だな

他には何か考えられるか?」


「え、他にも理由があるんですか?

えー、んー……わかんないです!」

「通常の場合であれば正解だが、今回は武装隊と言う所に意味があるんだ」

「んー??」


「ストラトス側が仮に何者かと交戦しているとしよう

その時に見知らぬ者が隠れているのを見つけたら、どうなると思う」


「……そうか、俺達だけだったら敵だと思われるのか」

「そうだ、武装隊はアストフト家の紋章が入った

鎧を装備している

ストラトス側に見つかっても加勢と判断されるし、

敵側に見つかっても一人が報告に走れば済む

まぁ、友好な関係があって初めて意味を成すがな」


「はーっ、凄いですね……なんか感動すらしてきました」

「とまぁ、こんな具合だな

何か質問はあるか?」

「んー、……大丈夫です」


「そうか、なら良い……それとだな」

頬を掻きながら下を俯くレインズ。

「タイヨウに一つ詫びなければならないんだ」

「え?なんですか?」

「……アグルにお前の事を話してしまったんだ……すまない

他言はしないと言っておきながら……」

レインズは頭を深く下げた。


「なんだ、そんな事ですか……」

「し、しかし私は……タイヨウとの約束を破ってしまったんだぞ」

珍しく、しおらしい様子のレインズ。

タイヨウは少し考えた後に「レインズさんが無駄にアグルさんに話したとは思えませんし、何か理由と目的があるんですよね?」と一言。


「……もちろん、アグルは信用出来る奴だ

それにタイヨウの余りにも異質なスキルや追加効果に関して、もっと情報と知識を得る必要があると思ってな……」

「俺はレインズさんを心から信頼してます

そのレインズさんが信頼してる人になら、俺の事を話したって構いませんよ」

「……すまない、ありがとう

だが、これ以上の他言はしないと剣に誓う

アグルも同様に剣に誓ってくれた」


「わかりました、こちらこそありがとうございます

俺なんかを弟子にしてくれて」

レインズは照れくさそうに頬を掻いた。

「……初めての弟子が、タイヨウで本当に良かったよ」

「こちらこそ、師匠がレインズさんで本当に良かったです」

「ははっ、なんか湿っぽくなったな……さて」

レインズは背もたれから身体を起こし「そろそろ決起会の時間だろう

準備をして行ってみるか」と立ち上がる。

「はいっ、そうですね!」



「もう結構集まってますね」

「なかなか良いタイミングだったな」

昨晩、社交会を開いたホールにやって来た二人。

「よぉー、おふたりさん」

「あ、どうも」

人混みの中からアグルがやって来た。

「なんだ貴様、友達いないのか?他所よそに行け」

「ひでーなー、一応隊長だぜ?ここに居るのはみんな俺の部下……あれ?友達居ないかも……」

レインズの悪態をつかれたアグルを、タイヨウが慌ててフォローする。

「ま、まぁほら、ここは友達と来る場所じゃ無いですし……」

「お、それもそうだな、びっくりした」


「おい、いつまで話しているんだ

アイガールさんが壇上に上がっているぞ」

「「あ、ハイ」」

いつの間にか決起会の挨拶が始まろうとしていた。


「ゴホンっ」

アイガールの咳払いで、ホールが静寂に包まれる。


「皆の者、遠征の準備ご苦労であった

急ではあったが我が旧友、ガレリー ストラトスの為に、何が起こるともわからない危険な遠征に参加を表明してくれた事を改めて感謝する……

ささやかだが食事を用意した、楽しんでくれると嬉しい」


タイヨウは、こう言った場での経験が無く、拍手や掛け声を上げるものなのかと、辺りを気にしていた。

するとアイガールの挨拶が続いた。

「……ひとつだけ、約束してくれ!

誰ひとりとして欠けること無く、再びこの場所に帰って来る事を!

そしてここに約束する!皆が無事にこの場所に帰って来た時は、最高の仲間達と共に飲む最高の酒を用意すると!

いよいよ明日だ!士気を高めろ!栄光は我らの手にあり!」


おおおおおおーーー!


耳をつんざく程のときの声がホールを震わす。

日の入りを告げる鐘の音と共に、タイヨウの胸を強く揺らした。



「ふぅ……」

決起会が終わりタイヨウは部屋に戻って来ていた。

早い時間に始まったおかげで、まだ遅い時間では無い。

タイヨウ明日に控えて早めに寝てしまおうと考えていた。


「寝る前に風呂でも入るかな……」と支度を始めようと立ち上がった時だった。

ドアをノックされ応答する。

「ん? はい」

「わたくしですわ」

「フェリアスか?待っててくれ、今開ける」


ドアを開くとフェリアスが手を後ろに組んで立っていた。

「お休みの所に申し訳ありませんわ」と会釈する。

傍らには布に覆われたカートが控えていた。

「大丈夫だよ、どうした?」

「……中に入ってもよろしくて?」

食事を運んできたのかと思ったタイヨウは、フェリアスを部屋に通した。

「ん?あぁ、どうぞ?」


カートと共に部屋に入り、すぐにフェリアスは布を剥いだ。

「タイヨウ、コレ……使って貰える?」

カートの上には一本の剣が置いてあった。

「これは……剣?いいのか?」

「えぇ、タイヨウに使って欲しいの」

派手派手しい装飾は無いが、黒地に赤二本のラインが刻まれた鞘。

素人目で見ても高価な物だと分かった。


「……ありがとうフェリアス、大切にするっ」

剣を手に取り眺める。

「抜いてみて?」

「ん、じゃぁ……」

レインズの持っていた剣に比べると軽く感じる剣。

「すごい、手に馴染む……あ、この刀身の赤い筋って!」

の眼っていう精霊石を使って作られたの

その剣には火属性が付与されてるわ」

刀身にはレインズの剣よりも激しく波打つような筋が入っていた。

「レインズ様から聞いたの、タイヨウの属性の事」


「お、俺なんかにホントにいいのか?!すっごく高価な物だろ?!」

「タイヨウから受けた恩と比べたら安いものだわっ」

「う、嬉しいけど……」

「アストフト家を代表して私が来ているのよ?有難く思いなさい♪」

「あぁ、ありがとう……!大切にするよ!」


「ふふっ」と笑いながらフェリアスが「あっ」と何かを思い出す。

「それとまだその剣には名が無いわ

タイヨウが付けてあげてくれるかしら?」

「わ、わかった……なんか責任重大だなっ」

「そんなに気負わなくていいのよ?明日の朝は見送りに行くから、その時にでも聞かせてくれるかしら?」

「わかった……色々と本当にありがとうな」


「お礼を言うなら……帰って来てからにして欲しいわ

だから絶対、絶対無事に帰ってきて……」

「あぁ、約束する」

「じゃぁ、また明日ね

夜更かししないで寝るのよ?」

「オカンみたいな事言うなっ!

……おやすみフェリアス」

ドアを開け部屋を出るフェリアス。

「ふふっ」と少し笑い「おやすみなさい」と言い残しドアが閉まった。


「剣の名……かぁ」

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