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この世界に生きる僕ら  作者: くーる
新たな出会いと成長
30/43


キュイー キュイー


一夜明けて、遠征前日の朝八時。

昨日の疲れからか、未だに眠っているタイヨウを起こそうとキュートがベッドの上で騒いでいる。

「んん……」

寝返りを打つが、起きる気配は無い。


耳元で「キュイー!」と鳴くも、「んー、あと二時間……寝させて……」と甘えた事を抜かすタイヨウに、キュートが強硬手段をとる。


「キュッ!」

軽く突っ突く。

「んんー」

それならばと、キュートは秘伝の奥義をくり出す。

「キュ……キュキュキュキュキュキュ!」

「いででででで?!」

「キュイ!」

誇らしげに翼を広げ、勝利のポーズを決めた。

「キュート、お前いつの間にフー助ラッシュ覚えたんだよ……」

「キュイー♪」


手荒い目覚ましによって無理矢理起こされタイヨウだが、外からは明日に控えた遠征の準備に追われる人々の声が聞こえていた。

「俺も何か手伝わなきゃなっ

起こしてくれてありがとな、キュート」

身体を起こし背伸びをすると、キュートもそれを真似て、短い腕を上に伸ばす。

「キュー……」

「……よしっ!やるか!」

「キュイッ♪」

身支度を済ませ、ベットを整えた。

メイドが清掃するだろうと思いはしたが、好意で泊まらせてもらった事に対する感謝の思いからだ。


「さて、まずはレインズさんにコレ渡さなきゃだな」

昨晩、レインズから預かった情報屋の調査報告書を持って部屋を出て、その足でレインズの部屋のドアをノックして呼びかけた。


「レインズさん、おはようございます

タイヨウです」

返事が無い。

「やっぱもう部屋を出てんのかな」

再度ノックをして呼びかけるも、やはり返事は無い。

「居ないみたいだな……どうしよ」

レインズを探しに行くことも考えたが、屋敷は広いうえに、余所者よそものが勝手に歩き回るのも、どうかと唸るタイヨウ。

「んー」

レインズの部屋のドアの前で、どうするかを考えていると死角から声をかけられた。

「おはようございます、タイヨウさんですね?」


突然名前を呼ばれ、驚きながら声のする方に体を向ける。

すると視線を落とした先に男の子が立っていた。


「あ、おはよう……あれ、君ってもしかして」

タイヨウは、一目で気付いた。

整った顔立ちに綺麗な金髪の男の子。

「フェリアスの弟のルクト君か?」

「はい、姉がいつもお世話になってます」

リップルと近い年齢に見えるが、礼儀正しく落ち着いた印象だ。

「いえいえ、こちらこそ」と軽く頭を下げ、「体の方は大丈夫なのか?」と体調を気にする。


「お陰さまで、今日は調子いいみたいです」

顔色も良く、「なら良かった」と一安心するタイヨウ。


「にしてもルクト君しっかりしてるなぁ」

「家系が家系ですから……あと、呼び捨ててもらっていいですよ」

「了解、でもルクトくらいの子供から家系って言葉が出るとは……」

「もう9歳ですよ?そんな子供じゃありません」

「そうかそうか、ごめんなっ

……所でルクトは何してたんだ?」

タイヨウとルクトは、壁に寄りかかりながら談話を続ける。

「特に用事はありませんが、外には出れないので……

屋敷を散歩していたら、タイヨウさんを見かけたんです」

「そうか……にしても、よくわかったな」

「姉から特徴は聞いていましたので、すぐに分かりました」


「特徴?」

タイヨウが耳がピクッと反応を示す。

「少し癖っ毛の黒髪で、体格は割とーー「わかった、もう何も言うな」

全てを言わせまいと言葉を重ね、ルクトの口を塞ぐ。

「ちなみに俺の名誉の為に言うが、168cmはチビにならないぞ?しかもまだまだ成長期だ、これからだ」

「ぷはぁっ……そうですね、これからですねっ」

「そこまで、はっきり肯定させるとなんか虚しくなるよ……」


二人の乾いた笑い声が廊下に響く。

「そうだ、散歩が楽しくなる物、作ってやろうか?」

「散歩が楽しくなる物……ですか?」

「あぁーー、でもレインズさん探さなきゃ……」

どこに居るかも分からないレインズを、どうやって探そうかと下を向き考えていると「呼んだか?」とレインズが突然現れた。

「レインズさん?!」

「私に何か用事か?タイヨウ」


「昨日預かった紙を返そうと思ってたんですっ」と、紙を手渡す。

「そうだったな、確かに受け取った」

すると、見計らったようにタイヨウの後ろからルクトが顔を出した。

「おはようございます、レインズさん」

「おはよう、ルクト

今日は調子良さそうだな」

「はい、おかげさまで」

相変わらず大人びた会話をするルクトに、タイヨウが感心していると「良かったですね、タイヨウさん」と、笑顔を見せ「そうだな、ありがとうルクト」と笑い返す。


二人の様子を見ていたレインズは、

「なんだ、いつの間に知り合ったんだ?」と、首を傾げる。

「タイヨウさんとは、今さっき知り合いました」

「そうなんです、俺がレインズさんを探しに行こうとしてたら、声をかけてくれたんです」

「ほう、なるほどな……丁度良い」

手を合わせ何かを思い付いたレインズ。

「え"……?何ですか……?」

タイヨウが、面倒事かと警戒する。


「これから私もフェリアス嬢も会議なんだが、他の者も明日の準備で忙しい……そこでなんだが、ルクトの護衛を頼めるか?」

実際問題、明日の準備でタイヨウが手伝える事は無く、タイヨウ自身もそれには気付いていた事もあり 「つまり……子守りですか?」とレインズの意図を図った。

「タイヨウさん、聞き捨てならないですよ」

子供扱いされる事を嫌がる年頃なのか、抗議するも

「そんなところだ」と肯定されてしまった。

「レインズさんまで!!」

「まぁまぁ、さっき言ったの作ってやれるし、いいじゃんか」

「ぐぬぬ……わかりましたっ

タイヨウさん、宜しくお願いします」

「頼んだぞ、私は第一会議室に居るから何かあったらそこに来い」

「わかりました」

「それではルクト、タイヨウを頼んだぞ」

「はい、レインズさん」

「あれ?そんな感じだったっけ?」

レインズは「ふふっ」と小さく笑いながら二人に背を向け歩き出し、軽く手を振って去った。


「ぬぬぬ……まぁいいか

じゃぁ早速だけど、細長い棒が欲しいんだけど何かないか?」

「棒ですか?んー」おそらく、これから作る物に必要なのだろうと察し「長さはどれくらいですか?」と確認する。

「んー、20cmくらいかな」

「それなら……」

少し考えた後、ポンっと手を叩き「僕の部屋にありますっ!」と嬉しそうに笑った。

「よしっ!じゃぁ、ルクトの部屋で作れるか?」

「構いませんけど、散らかってますよ?」

「ん?とりあえず行こうか」


二人がいた場所から少し歩くと、客室用の部屋とは一線を画す扉が見えて来た。

扉の前に立つメイドに軽く会釈をして、二人はルクトの部屋に入る。


アイガールほどでは無いが部屋は広く、定期的に清掃が入る為か清潔感のある部屋だ……一部を除いて。

「なぁ、ルクト……」

「……なんですか?」

「どうしてこうなった?」

「……僕、不器用なんです」

「テーブルの上に折損なった紙細工をそのままにしとくのは、不器用と違うぞ?」

「あ、後で片そうと思ってたんですよ……」


「はぁ、まったく」

テーブルに近付き、散らかった紙を拾い上げる。

「せめて広げてシワ伸ばして、まとめとくとか出来るだろ?」

「……なんか母みたいな事言いますね」

「そこは兄でいいだろっ

とりあえず折損なった紙で作るから、広げてシワ伸ばすの手伝ってくれるか?」

「わかりました」

二人はソファーに腰掛け、作業を開始した。


「にしても簡単にシワが伸びる紙だな」

ルクトが折損なったにも関わらず、紙はすぐに新品のような質感を取り戻す。

「再生紙なんですが、その際に形状記憶繊維を混ぜ込んでるらしいです」

「素晴らしい……でもそれなら、尚更散らかしといたらダメだろ」

「うぅ、はい……」

「わかればよろしい……さて、こんなもんかな

ちなみにルクトは何を作ろうと思ってたんだ?」


「姉から教わった物の他にも、何か作れないかと試行錯誤してましたが……」

「この結果か……よし、俺に任せろっ」

指を鳴らしながら意気込む。

「なにを作るんです?」

「まず最初はルクトの散歩用紙細工と、……なんか作るっ!」

「見切り発車もいいとこですね」


「まぁそう言うなよ

さて、まずは1枚の正方形の紙を用意します」

「はい」

「三角に織って折り目を付けます」

「はい」

「そのまま更に半分に織りましょう……

さっきの半分のサイズの三角になりましたね」

「先生」

「はい、ルクト君」

「姉も同じでしたが、なぜ教える時だけ敬語になるんですか?」


「……なんでだ?」

思いの外考え込んでしまったタイヨウを見て「ノリですか?」と一言。

「……ノリ意外に答えが出ないなっ!

はい、じゃぁ後はコレをこうしてこうやって完成!」

「ずいぶんすっ飛ばしましたね先生」

「折り方を説明するのが難しすぎて、一日考えたけど諦めた……結果です」

「でも、……ほら文面だと難しいですよね」

そっとタイヨウの肩に手を置く。


「語学力の無さを痛感してる今の俺に、優しい言葉は痛みにしかならないよ……」

そんなタイヨウを見ていられなくなったルクトは、

「せ、先生!コレはなんですか?!」と完成した物に話題を切り換える。

「ルクトお前いい奴だなホント……

これは風車デスッ!」

「風車!」

「コレを棒に付けて……!」

タイヨウが指で風車をつつく。


くるくるくる


「おおっ!」


「さらに!……すぅ」

深く息を吸い込み、風車に吹きかける。


くるくるくるくるくるくる


「おぉ!地味にスゴイです先生!」

「地味に、は余計だルクト君」

「スゴイです先生!」

「おまえ出世するタイプだな!

しかしまぁ確かに地味かもな……でもコレを持って歩けばクルクル回って、屋敷の中の散歩も楽しくなるだろ?」

「はい!ありがとうございます!」

「喜んで貰えて良かったよ」

「はいっ!」


よほど気に入ったのか、くるくる回る風車を見つめるルクト。

「あの、タイヨウさん」

「ん?どうした?」

「いい事を思いつきました!」

「なんだなんだ?」



一時間後。

屋敷の廊下には、小粋を通り越してやかましい謎の音がしていた。


カラカラカラ~

くるくるくるくるくる~


カラカラカラ~

くるくるくるくるくる~


「では、失礼する」

「失礼致しますわ」

会議を終えて会議室を後にするレインズとフェリアス。

「ふぅ……では、タイヨウ様とルクトを探しに参りましょうか」

「そうだな」

レインズとフェリアスは、会議の内容を報告する為に、タイヨウとルクトを探しに行こうと歩き出した。


カラカラカラ~


「会議は堪えたかな?フェリアス嬢」

「いえ、大丈夫ですわ……明日、実際に遠征に向かう者達の準備や緊張、その疲れに比べればわたくしなど」


くるくるくるくるくる~


レインズは背後から聞こえている怪音を気にしつつも言葉を続けた。

「こうして率先してサポートをして貰えるだけでも、

我々は励みになるよ」

「わたくし共こそレインズ様には、感謝の念に堪えない所存ですわ」


カラカラカラ~


「本当に、立派になったな……」

「色々な方の支えがあったからこその今ですわ」

「そうした考えが浮かぶ事こそが、フェリアス嬢の成長の証さ」


くるくるくるくるくるくるくる


「ええぇい!いったい何だと言うのだ!先程から背後でくるくるカラカラと!」

業を煮やしたレインズが、堪らず後ろを振り向く。


「やっと気付いてくれたぞ、ルクト」

「そうですね、タイヨウさん」

「ん?タイヨ……んん?!」

タイヨウとルクトの様子を確認するや否や、驚きの様子を隠せないレインズ。

「あら、ルク……とぉ?!」

続けざまにフェリアスが振り向くと、そこには30本もの風車を身に付けたルクトの姿があった。


「ななな、なんだこのあり様は……」

「ルクト……あなたいったい……」

口をあんぐりさせて驚く二人を他所にタイヨウは、「ルクト……」

と、静かにタイヨウが頷く。

それに合わせて「はい」と頷き返すルクト。


「「いざっ」」

二人の掛け声が揃い

「人間」の声と共にタイヨウがルクトの脇の下から持ち上げ、「風車」とルクトが腕を横に広げた。

そして次の瞬間、

「「参る!」」

タイヨウがルクトを持ち上げたまま突然走りだした。

「フハハハハハ」

響き渡るタイヨウの笑い声。

「フハハハハハ」

カララララララララッ!

ルクトの身体に付けられた、いつくのも風車が勢いよく回りだす。

「なんですの?!」

あっという間に居なくなったタイヨウとルクトを見ていたフェリアス。

「くそっ、なにやら楽しそ……じゃないっ、タイヨウの奴め体の弱いルクトに何を!」

「ふふふっ、あっ、置いて行かないでくださいませーー」


数分後。

「アイツらめ、どこへ行ったんだ……」

フハハハハハ

遠くから二人の笑い声と

カラララララララッ

風車の音が聞こえてきた。

「ーーッ?! そこか!」


風のような速さで間合いを詰められたタイヨウ。

「フハハハハはぁ?!」

急停止を余儀なくされ、反動に驚くルクト。

「フハ?!」


カラカラカラ……


「もう逃げれんぞ、タイヨウ」

少し遅れてフェリアスが走って来た。

「れ、レインズ様……は、速いですわ……はぁ、はぁ」


「説明してもらうぞ?タイヨウ」

「ルクト、ここまでだな……よいしょ」

静かにルクトを下ろすタイヨウ。

「そのようですね」

降ろす際の風で、再び回り出す風車。


カラカラカラ~


「とりあえずカラカラくるくる止めろ?!」

不服そうにタイヨウ。

「そんな事言われましても……」

同調してルクト。

「風車は回るのが自然の摂理かと……」

「小一時間でどれだけ仲良くなっているんだ!」


ドヤ顔でタイヨウ。

「男の絆に」

胸を張ってルクト。

「時間という概念は」

「「無いんですよ」」

「なんだそれ打ち合わせしたのか?」


「ふふふ……あははははっ、あーー可笑しいですわっ」

「フェリアス嬢……?」

「ルクト、ずいぶん楽しそうですわねっ」

「姉さん……心の底から、楽しいと思えました!」

便乗してタイヨウ。

「楽しかったです」

「お前は黙っていろ」

「ハイ」


「やはりタイヨウ様は、わたくし達の救世主ですわね」

フェリアスが、優しくルクトに微笑みかける。

「はい!」

しかし、いまいちピンと来ていない様子のタイヨウは、「はい?」と首をかしげる。

「タイヨウ」

「ハイ……」

「まだ体の調子が良くないルクトをこんなに連れ回して……ケガでもしたらどうするんだ?!」

「すいません……」


「あの、レインズ様……」

「フェリアス嬢、ここは私からガツンと言っておかねば!」などと言いつつも、意識は初めからタイヨウでは無く、ルクトの風車にあるレインズ。

「レインズさん、おひとつどうぞ」

ルクトがそれに気付き、一つ手渡す。


「本当か?!実はずっと気になっていてな!

どう言う仕組みを……おぉ、なるほど……」

くるくるくる

「れ、レインズさん?」

「レインズ様……」

「はっ!しまった!……そもそもお前はだな!」

「レインズ様、無理に叱りつけなくても大丈夫ですわっ♪」

「む、そうか……いや、一応大人としての振る舞いをと」


「ありがとうございますわっ」

「しかしだ、タイヨウ……ルクトを抱いて走るのが危険な事に変わりはない」

「……はい」

「ルクトもだぞ?」

「ご心配お掛けしました……」


レインズは、小さく息を吐き「次からはもっと安全を考慮しろよ」と微かに笑った。

「「ッはいっ!」」

ルクトの頭をワシャワシャと撫でながら、楽しげに笑うタイヨウだった。


「……ふふふっ、やっぱり素敵な人ね♪」


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