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この世界に生きる僕ら  作者: くーる
新たな出会いと成長
24/43

一筋の光と、一筋の闇


昼の十二時を告げる鐘が響き渡り、タイヨウ達は休憩をとる事にした。

「ふぅ……あと少しで切れそうだな」

レインズ曰く棒は、形状記憶再生素材と言う素材で作られており、切っても切っても再生するとの事。

実際、少し切れ目が入ったかと思えば瞬く間に再生してしまい、最初からやり直しになる。

「一撃で切断しないとダメなんだよなぁ」

「気付いたと思うが、ぐにゃん棒は剣速をあげる訓練だ

お前は力任せに戦うよりも、スピードを活かして相手の急所を狙う方が良い」

「相手の急所を……」

「相手の弱点を見抜き、動きを先読みして懐に入る

そして素早い剣さばきで勝負を決める」

「その最初の段階がぐにゃん棒ですか……」

「俊敏性を高めるのはもちろんだが、再生するぐにゃん棒をひたすらに切る

ただの素振りよりも、目標があった方が気持ちも乗るだろう?」

「そうですね、やってやろうってなります」


「ただ素振りは暇な時にしておけよ?

素振りや走り込みはここでやる事じゃないからな」

「わかってます、頑張ります

キュートの方はどうでしたか?」


キュイー…


疲れ果てた様子で、床にへたれ込むキュート。

「まずまずだな

通常よりも広い範囲での訓練だから大変だが、最終的には9匹捕まえている

少しづつ一度に垂れてくるクモの数を増やして、クモが戻っていくスピードを早くするからな」


キュ、キュイ……


「普段外に出れない分大変だけど、一緒に頑張ろうな、キュート」


キュイー


「さて、飯にするか……なんか作ってやろうか?」

「えっ?料理出来るんですか?」

「……どうゆう意味だ?」

レインズの冷たいプレッシャーがタイヨウを襲う。

「あ、いえ、その、お願いします!」

少しムッとした表情のレインズ。

「こう見えて私も女だ、料理の心得ぐらいある」

「どっからどう見ても可憐な女性ですご馳走になります!」

「お前はいちいち一言多いな……まぁいい、ちょっと待ってろ」

そう言い残してレインズは練習場を後にした。


練習場でレインズを待つ間、タイヨウは先ほどのレインズの言葉を思い返す。

「相手の弱点を見抜く……か、

レイリーの風読みの効果だよな」

こんな時でさえ、レイリーを連想させてしまう。


「俺のスキルは火事場の馬鹿力……

確かピンチになるとステータスが上がるってスキルだけど……ピンチって表現曖昧だな」


「なにをぶつぶつ言っている」


いつの間にかレインズが練習場に戻って来ていた。

その手には料理を乗せたお盆。


「出来たぞ、

そこにある木箱を二つに並べてくれ」

「コレですか?分かりました」

言われた通り木箱を並べると、その上にお盆を置く。

「よいしょ、ほら食っていいぞ」

「ありがとうございますっ

いただきます!」

レインズが作ってきたのはサンドイッチだった。

「ん!?うまい!ソースがパンにも野菜にも合いますね!」

「特製のソースだ、うまいだろう?」

「はい!店で食べてるみたいです!」

「そ、そうか?そこまで言われると照れくさいな

まぁ喜んで貰えて良かったよ」

「料理上手なんですね、今度他の料理も食べてみたいです!」

「よし、なら今後また作ってやるよ」

「楽しみだなぁ」

「あ、あんまり期待しすぎるなよ?」

「期待せずにいられませんよ!」

「まったく……そういえば、さっきは何をぶつぶつ言っていたんだ」


「えっと、俺とキュートの主従属性一致で発動する、火事場の馬鹿力について考えてまして」

主従属性一致ユニゾンスキルだな、それがどうした?」

「発動条件とか、効果がどれ位かとか……」

「火事場の馬鹿力は……主に戦闘中、大きなダメージを受けた時やピンチの時に発動するようだな

効果の大きさも、それが続く時間も結構個人差があるみたいだが」

「そうなんですか……」

「あいにく私は水属性だからな

火属性の事に関しては疎いんだ、すまんな」

「いえ、ありがとうございます」


「ちなみにだが、火属性のユニゾンスキルは火事場の馬鹿力の一種類だけでは無いんだぞ」

「そうなんですか?!」

「あぁ、属性攻撃の威力が上がるスキルや、火属性なら体力やチカラ、水属性なら魔力や知性など常にステータスが上がるスキルなど様々だ」


「俺のはピンチの時だけだもんな……

もし闇の眷属が発動して無かったら、常にピンチな俺は、常に火事場の馬鹿力が発動するのか?」

独り言のつもりがレインズにも聞かれてしまっていた。

「そう考えられなくも無いが……

任意で闇の眷属を解除出来るわけでは無いからな

それに闇の眷属が解除されたらお前は……」

「きっとすぐに死ぬんでしょうね」

「ーーッ」

生死に直結する事なのにも関わらず、あっさりと自らの死を揶揄やゆするタイヨウ。

レインズはこの時、タイヨウの中の微かな闇を垣間見た気がした。


「さて、ご馳走様でした!

もう少ししたら再開していいですか?」

「ん?あぁ、お粗末さま

じゃぁもう少ししたら始めよう」

「はいっ

キュートもしっかり休んでおけよ?」


キュイー♪


レインズは危惧していた。

タイヨウを取り巻く尋常では無い異常の数々。

そして微かにだが、確かに感じた心の闇。

何かとてつもない事が起きるのでは無いかと。


「さて、準備運動しとこうかな」

午後の稽古に向けて身体をほぐすタイヨウを遠目に、レインズはつぶやく。

「少なくともタイヨウの存在を目立たせるのは、絶対に避けた方がいいだろうな」


「なぁ、タイヨウ」

「はい?」

「あまり目立つ行動はするなよ?」

「……わかってます

ハードラッカーに、ドラゴンの霊獣

その霊獣にもハードラックが発動してて、極めつけは闇の眷属……ですからね」

「わかっているならいいが……」

準備運動を一旦止めるタイヨウ。

「知り合いにも1人だけ、俺のスキルの事とか知ってる人がいますけど

信頼出来ますし、話さないようにしてくれてます」

「そうか、ならいい

余計な世話だったな」

「いえ、ありがとうございますっ

じゃぁそろそろ始めますね」

タイヨウは剣を手に取り、棒と向かい合う。


「そうだ、悪いが夕方からは予定がある

今日はあと二、三時間くらいしか見てやれないんだ」

「わかりました、お忙しいのにすいません」

「私から言い出した事だ

出来る限りの事はさせて貰うよ」

「……がんばります」


いつの間に懐いたのかレインズは、自らの膝の上で休んでいたキュートを抱き上げる。

「さて、キュートも再開しようか」


キュイー♪


「よしっ、やるぞっ」

「今は連続で切ろうとせずに、一振りづつ集中してやるんだ

切れ目が入った時の一振りと、切れなかった時の違いを見つけろ」

「わかりました」

目を閉じて集中するタイヨウ。

「……ふっ!」


ぐに、にに……にゃん、グワッ

「あーっ!おしい!」

「なかなかの集中力だな

剣筋がブレるから込めた力が逃げていくんだ

瞬間的なチカラの込め方は悪くない、次は剣筋がブレないように意識してみろ」

「は、はい!」

頭の中で思い返す。

レインズが切った時は、光の筋が通ったように見えるくらいにまっすぐ剣が振り抜かれてた事を。

「よしっ」

これまでは、瞬間的に力を込める事に集中しすぎていた。

そのせいで眼前の棒への意識が散漫になっていた。

「目標をよく見て……」

棒に剣筋のイメージを重ねる。

そのイメージを剣でなぞるように振り抜く。

「……まっすぐ、素早く……っは!」

一閃。

とまでは、いかずとも

振り抜かれた剣が棒を断ち切った。


「よくやったな」

「で、出来ました!切れました!」

「見事だった

今の感覚を忘れるな」

「はいっ!」

「連続で切り落とせるようになれば、次の段階に進むからな」

「がんばります!」


「キュートもコツを掴んだみたいだな

なかなかに優秀な弟子達だ」

「そういえばレインズさんって、鍛冶屋?武器屋?なのに、何でこんなに戦闘に詳しいんですか?」

「最初は、自分の打った武器の試し斬りで始めたんだ

そのうちより良い武器を作る為に、素材を集めたりする必要があってな、その過程で旅をしたりするうちに身に付いたんだ」

「それもすごい話しですね」

「最終的には、自分の打った武器の限界を知りたくなってな

自分をひたすら磨いてた時期もあったよ

その時に、ぐにゃん棒やスパイダーフォールを使っての訓練方法を考えたんだ」

「はぁぁ……行動力が半端ないなですね」

「ゆくゆくは、お前もスパイダーフォールで訓練する事になるからな

まぁそれはまたその時に説明する

さぁ、もうあまり時間も無いぞ?」

「えっ?あ、はい!」


その後五回に一回は、棒を切り落とす事が出来るようになったが、時間が来てしまい今日の稽古は終わった。

「次は明後日なら見てやれる

お前の都合が良かったらまた来るといい」

「はい!ありがとうございました!

またよろしくお願いします!」


キュイー♪


レインズとの稽古を終え外を歩くタイヨウ。

「さて、まだ日が暮れるには少し時間があるな」

行く宛も特になく、中途半端な時間帯という事もあり、この後の予定に頭を悩ませる。


「あら?タイヨウさん、こんな所で偶然ですわね」

「ん?お、フェリアスだ」

「ご機嫌いかがかしら?」

「まぁまぁかな、ログレスは一緒じゃないのか?」

「今頃血眼になって、わたくしを探してるんじゃないかしら?」

少し意地悪気な笑顔でクスッと笑うフェリアス。

「まーた勝手に出てきたのか」

「今回はきちんと置き手紙を残しましてよ?

『ちょっと散歩に行って参ります』って」

天真爛漫と言うべきか、天邪鬼あまのじゃくと言うべきか……。

「行き先書かなきゃ、勝手に出てきたのと変わらないだろ……」

「お散歩で行き先を決めるなんて無粋な事は致しませんわ

目的もなくぶらぶらするのが真のお散歩ですわっ」

両手を腰にあてて胸を張る。

「そんなドヤ顔で言われてもだな……

あ、そうだ

この前一緒に作った紙細工、弟さんに渡せたのか?」


「えぇ、おかげさまでルクトも大変喜んでおりましてよ」

「それなら良かったよ

この後はどうするんだ?」


「夜から社交会がありますので、それまでには屋敷に戻りますわ

アストクリフにいくつもある街の領主の方々が、わたくしの屋敷に集まりますの」

「やっぱりフェリアスって、ちゃんとしたお嬢様だったんだな」

「あら、聞き捨てなりませんわねっ

どこから見ても気品溢れるお嬢様では無くて?」

「気品溢れるお嬢様は、勝手に屋敷抜け出さないんだよなぁ」

「こまけー事は、いいんですの」

「気品の欠片も感じなくなったな」


「あ、そうでしたわ」

何かを思い出した様子を見せるフェリアス。

「ん?なんだ?」

「あなたにお会いしたら、伺いしようと思っていましたの」

「ん?」

「以前お会いした時、あなたと一緒にいらした女性の事なのですが、わたくしの見間違いでなければ

『レイリー ストラトス様』

とお見受け致しましたのですがーー」


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