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この世界に生きる僕ら  作者: くーる
始まりの街
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1章 この世界の始まり


ぁぁぁぁあああああ!」

「……はっ!?ここは……どこだ?!」

気が付くと、先ほどアイルと対峙していた白い空間とは全く別の場所にいた。

「……森の……中なのか?」

最初に感じたのは土と木の匂い。

辺りを見渡して安全を確認すると、アイルに対する文句が自然と口から出る。

「それにしてもあんにゃろう……

ステータス振りとか宝玉の場所とか、アオイがどこにいるのかとか聞きたいこと山ほどあったのに全っっ然教えてくれねぇ!居ないから言えるけど……余計な話しが多いんだよおおお!」

静寂だった森に突如走る俺の叫び。ひとまず満足して一息で息を整えた。


「ごめんね」

「はぅぁあ?!ね、猫がしゃべってる?!」

「驚かせてごめね、僕だよ、アイルだよ、

神様の事情で君をあれ以上あそこに居させられなくてね……」


猫が喋った事に関してもだけど、なによりアイルに聞かれたかもしれない事に対して胸が鳴り止まない……。

……聞かれたか?タイミングによっては聞こえてないかも……。

「キコエテナイヨ」

しっかり聞かれてたようだ。

「あ、ああ、あの……」

やばい、ばちでも当てられるか?

「イインダヨ、ワルイノハボクダカラ」

あ、めんどくさいかも。

「す、すいませんでした……っ」

つか猫が喋っててその猫に謝る俺って、はたから見たら相当ヤバイやつだよな。

「まぁふざけるのはここまでにしてさっきの話の要点を伝えるね、このヤマネコの身体を借りるのもそんなに長く出来ないからね」



「とりあえず、森を抜け出して近くの街まで歩くか……」

正直、異世界へ訪れた実感は無かった。なんせ森だ。言ったらなんか元の世界の森とそんな変わらない。言うほど森を知ってる訳じゃないけど。

神、アイルによればこの世界の人達は霊獣れいじゅうと呼ばれる存在を使役して生活をしているらしい。

霊獣の種類は様々で下はハムスター、上はライオン(この限りではない)と幅広く癒しのペットだったり、一緒に狩りをしたりとこっちの世界では居て当たり前の存在のようだ。

アイルはこっちの神では無いから曖昧な情報らしいけど……。

そんな俺にも例外無く霊獣が与え?られた。しかも卵からのスタート。


「でも、この大きな卵は……元の世界でもなかなか見れない大きさだ」

ダチョウの卵(テレビでしか見たことないけど)よりひと周りくらい大きい卵。

「何が生まれるんだ……」

この世界の理にはアイルでも干渉出来ないとの事で、卵から何が出るかはお楽しみ!だそうだ……

「落とさないようにしないとな、そんでもって日が暮れる前に街にたどり着かなきゃな」


この世界の神エリウスの信仰が下がって以降、世界中に広がっていた異常な状態によって魔獣という存在が行動を活発化させているらしい。

人々の活気や笑い声、感謝の気持ちとか善に繋がる気配を嫌うようで、たまに街の中や村などに現れる魔獣に対しては、自警団や用心棒など追い払いまたは駆除する人達もいるらしい。

「俺の霊獣……ハムスターだったらどうしよう

つかこのサイズの卵からハムスター……つか卵からハムスター……??ならジャンガリアンがいいなぁ」

どうやらこの事については考えるだけ無駄な気がしてきた。

「この世界の理なんだろうなぁ」

俺はなす術なく遠くを見つめた。

いつ生まれるかもわからないし、早いとこ街に入って状況整理しなくちゃな……


「つか金!」

街にたどり着いたとしても金が無きゃ宿にも泊まれない。

メシも食えない……日の高さを見るとまだ暮れる気配は無い。

ひとまず見通しの良い所で装備を確認するか……

「えーっと、はい、まず卵」

正直これが一番でかい荷物。

「はい、短剣」

とは言っても元の世界だと捕まるサイズ。

「服は一応旅人っぽい感じ」

防御力は期待出来ない……。まぁ学校の制服のままここに居ても怪しまれるだけだからマシと言えばマシだ。

「服のポケット……!!」

服のポケットには小袋が入っていて紐で縛られていた。紐を解くと金貨やら銀貨、銅貨が入ってた。

金貨が1枚

銀貨が3枚

銅貨が5枚

あとなんか葉っぱが3枚…薬草的な?

「神様……ありがとう……色々言ってごめんなさい」

この世界で金貨1枚がどれくらいの価値になるかまだわからないけど、ひとまず宿やメシにはありつけそうだ。

「あと持ち物は……コレは……指輪?」

ボタンの付いたポケットの中にリングが入ってた。左手の人差し指にぴったりハマったけど、それ以降全くびくともしなくなりリングを外す事が出来なくなった。

「血が止まるようなキツさじゃないけど……」

リングには小指の爪ほどのサイズの赤い石が装飾されており、手のひらを地面に向けたままのぞき込んでいるとリングの石からホログラム?のように長方形に映像が投影された。

「びっくりした……な、なんか書いてある……」

読めない。

「ですよね、だって俺この世界初めてだもん」


そうなると街に着いた所で言葉は通じるのか?この世界の人達からしたら訳わかんない言葉を使う怪しい奴だと思われて……逮捕?監禁?……死っ?!

「絶望だ……ん?」

よく見てみると映像の文字にノイズが入ってきた。それどんどん酷くなり映像が乱れる。すると少しずつ見慣れていた文字に書き換えられていく。

「これはまさか!!」

次の瞬間には

「よ、読める!!」

歓喜した瞬間、それはやって来た。すぐ近くの茂みで音がした。

「なんだ?!」

「ごめーん、最後にもう一つ」

「びっくりしたっ!びっくりした!」

茂みから出て来たのはコウモリを憑代よりしろにした

アイルだった。


「一応神様特典でこの世界での読み書き会話は出来るようになってる……はずだよ!」

「また微妙な表現を……」

「あ、だめだこれ以上無理だじゃーねー!」

「ほんとにいちいちノリが軽いんだよな……」

何はともあれとりあえず読めるようになったので映像を細かく見てみる。

「なになに……ステータス?」

キタっ!ステータス!この先冒険?をするにあたって必ず関係してくるのがステータスだ。

「えーっと……」

ミソラ タイヨウ

レベル 1

体力 100

魔力 100

チカラ 50

防御力 50

スピード 50

知性 50

運 -500

特殊 ハードラック

属性 不明

職種 不明

霊獣 不明

「まてーい!おかしいだろ!運-500て!

他のステータスはまぁ初期ステータスだって事で納得出来るけど運-500て!それにこの……特殊 ハードラックってなに?特殊の項目に触れるみたいけど……」


ハードラック

解説

①運が-100を超えると自動的に発動する。運が悪くなる。気を付けないと歩いているだけで死ぬ可能性がある。


②死神が見えるようになる。


③闇属性が強制的に付与される。

(他属性との重複可)


④jnr..r&a&krajX'wopj''


「まてまてまてーい!運が-100で発動?!今すでに-500なんですけど?!

どうなるの?!まさか5倍なの?最後文字化けしてるしっ!こんなんもはや、自分の不幸体質のせいでこんな処遇なのか、こんな処遇を受けるのは不幸体質のせいなのか分からなくなって来た……あれ?同じ事か?……ん?なんだ?」


少し離れた茂みから、何かが動いている音と唸り声が聞こえる。

「近付いて……来てる……よな、またアイルか?

じゃなければ……」

装備は短剣と卵。そもそも卵じゃ戦えないし、短剣なんて持ってても扱いは素人だ。野生の獣やら魔獣が出てきてたら勝ち目なんてまるで無い。

「さっそくハードラックの効果ですかぁ?……クソッ」

これは戦略的撤退……じゃなくて怖いから迷わずガチで逃げるを選択してAボタンで決定。実行。

「音を立てないように……?!!」

案の定と言うかフラグ回収と言うか。足元の枝に気付かず踏み付けて音を起ててしまった。

その音に反応して二匹のデカイ野犬?が現れた。

「クッソー!まんまとテンプレ通りじゃねーか!!」

だいぶ興奮した様子でこちらを威嚇しながら近付いてくる……

「ヤバイヤバイヤバイヤバイ!……んっ!?」

二匹の野犬の後ろに黒いモヤの塊のようなのが見えた。

そんな異変なんかお構い無しに野犬が更に近付く。

「な、なんなんだ?!」

謎の黒いモヤの正体はわかんないけど……ひとつハッキリしてる事は、あいつらが今にも襲いかかろうとしている事だ。

「こんな所で……死ぬわけにいかないんだっ!」

野犬相手では威嚇にもならないとわかってたけど短剣を抜いて構えた。何とかして一匹でも仕留めれば生き残れる可能性が……


「ブレスアロー!」

突如茂みの奥から女の子の声が聞こえた。

「なっ?!」

その声のする方から飛んできた一筋の光は俺の目の前にいた野犬の一匹を貫いた。

「くっ、今しかない!!」

俺は一瞬の隙がうまれたもう一匹に向かって短剣を構えたまま突進する。運良く野犬の喉元に深く刺さった短剣は、抜くまでもなく野犬の肉体はサラサラと消滅していった。

「危なかったね。無事でよかった。ほんと間一髪!」

茂みから現れたのは一人の女の子だった。

恐らく先程の声のヌシだろう。

「アタシの攻撃も急所に当たったみたいだし!ほんとにラッキーだったね、キミ!」

「あ、あの、ありがとう。助かった……よっ?!」

ちょっと待てタイムいまどうなってる?

俺が助けられたのはこの世界の女の子で短パンでへそ出しタンクトップ?ヤバイなにこれ脚とかめちゃくちゃスベスベしてそう。

胸もそこそこ主張があって谷間とかなにあれエロい。髪の毛は後頭部でまとめたポニーテールでこめかみくらいの所から両サイド髪を下ろしてる!

顔も声も可愛いしなにより言葉が通じてる!!(ここまでの思考 約0.5秒)


「な、なに?どうしたの??大丈夫?」

間違いない、理解出来る。この世界の人と会話が出来る!

「だ、大丈夫だっ、ほんとにありがとう!」

「よかったよかった!それにしても、まだ日が暮れてないのに魔獣に襲われるなんて……」

「あれが魔獣だったのか……見た目じゃ判断出来ないな」

無事に危機を脱して肩を撫で下ろしていた俺を、あきらかに怪しむ目で見つめる彼女。

「キミ……旅人?」

「そ、そう……です」

警戒されてる……?よな?

「キミ、名前は?」

「タイヨウ、ミソラ タイヨウ……です」

「ふぅん……珍しい名前だねぇ」

そんな可憐な瞳で僕を見つめないでくれっ!


「アタシはレイリー ストラトス、レイリーって呼んでくれていいからねっ」

「レイリー、改めてほんとにありがとう」

明らかに警戒されてる感じは残るけど、この世界で初めて会った人で命の恩人だ。なにかおっぱい……じゃなくてお礼しなきゃ。

「あの、助けてくれたおっ…れいに街に着いたら食事でもどうかな?」

「(おっれい?お礼かな?)ほんとに?ラッキー!じゃぁご馳走になろうかなぁ!」

よし、これで街までの心強い味方ができt……


「その前に」

「はい?!」

「その卵……なに?もしかして霊獣の卵?」

「そ……そうだけど?」

なんだ……何を疑ってるんだ。

「ふぅん、どこから来たの?」

うぐっ!!答えづらい事を……どうする?!

「エット……ソノ」

(あやしい…。見た感じアタシと同い年くらいなのに、

霊獣の卵持ってるし、くせっ毛だし、この森は魔獣や獣がいるのに軽装備だし……くせっ毛だし、明らかに挙動不審だし。)

ヤバイヤバイヤバイ、一難去ってまた一難とはこの事!ハードラックはどこまで俺を追い込むんだよ!


「ねぇ」

「ハイ」

「スフィアリング……見せて」

スフィアリング?!このリング……だよな?!見せるって何?!もう装備解除出来ません!

「エット……」

(スフィアリングがわからないの?!この人もしかして……)

「キミ、もしかして」

ああああああヤバイヤバイヤバイ不審者だって通報されて身辺調査されて身元不明のこいつヤバイ奴だ!ってなって逮捕監禁拷問されて……死っ?!

「記憶喪失なの?!」

「アッハイ」

セーーーーーーフ!なんなのこの娘女神なの?!いや女神だよ絶対!可愛いもん!脚とかめちゃくちゃスベスベしてそうだもん!


「やっぱりね……かわいそうに、大丈夫!あたしが街までの連れてってあげる!あそこの街そこそこ大きいからきっとキミの事知ってる人居るよ!」

ハイ、女神でした。こんな娘が神様だったらきっと争いなんかないんだ。だって可愛いもん。ポニーテールかすごい似合ってるもん。

「俺……気が付いたらこの森に居て、なにもわからなくて…」(ウソは言ってない)

「よしよし、もう大丈夫だよ」

あ、ダメだコレ、この世界に来てめちゃくちゃ心細くて正直泣きそうだったのに。こんなに優しくされたら……こんなん、こんなん……惚れてm『タイちゃん……』

「うぉぉおおお!!」

「えぇ?!?どうしたの?!なんで地面に頭を打ち付けてるの?!なんかフラッシュバックしたの?!」(ある意味正解)

「はぁ……はぁはぁ……」

危なかった!危なかった!!悪魔の囁きが聞こえた……!

俺にはアオイという心に……決めたっけ?いやまさか、これが死神が見えると言う奴か?!


「ね、ねぇ大丈夫??」

「ごめん、落ち着いた……驚かせてごめん」

「あ、お水あるよ?……飲む?」

可愛らしく水を差し出し首をかしげる仕草は反則だと思います。

「うぉぉおおおお!!」

女神じゃなかった、いや女神なんだけど悪魔だ、小悪魔的な。

「ああもうっ!なんでぇー?!!」

「……はぁ、はぁ」

「だ、大丈夫かな……?」

「……はぁ、はぁ」

もはや動く事も話すことも出来ない。

あ、いや、出来なくもないけどしたく無い。

「あっ、フーちゃん、ダメだよ!」

ツンツンツンツンツン!グサグサグサグサ

「痛だだだだだだ!?なんだなんだ?!」

「ごめんっ!大丈夫?!フーちゃんこっちおいで!メッ!」

フォッホー フォッホー バサバサ

「イテテテ……頭に穴空いたかと思った、ってあれ?そのフクロウは?」

「あっ、この子はアタシの霊獣でフクロウのフーちゃん!」

ネーミングが安直すぎないか?

「鳴き声から名前とったの!」

あ、この娘天然なんだ……。


「ねぇ、ずっと気になってたんだけどそれって霊獣の卵でしょ?フーちゃん行くよー」

フォッホー

「んーたぶん、気付いたら足元に置いてあったんだ、ヨッコイせっと」

「記憶喪失だもんね、わかんないよね」

なんか騙してるみたいで胃が痛くなってきた。

「普通霊獣はね、人が6歳くらいの時に卵の姿で現れて、それからだいたい2~3日で孵化するの、足元気をつけてねっ」

「そうなのか……よっと、サンキュ」

レイリーは卵を抱えているせいで足元が見えずらい俺をサポートしてくれていた。

「聞き方が悪かったら謝るけど……記憶があるのはいつから?あ、卵落とさないように気をつけてね」

「レイリーに助けてもらう2時間くらい前かな……」

「そっかぁ、まぁ、何事にも例外はあるし、ひとまず今は街に行って休もう!もうすぐ着くはずだからねっ」

「レイリー、ありがとな」

「いえいえー!いいって事よー!あっ!街の門が見えて来たよ!」


レイリーが指差す方を見てみると高さ4m程のへいに囲まれた街が見えて来た。遠くに大きな塔も見える。

「あの門を通るのか?」

「そだよ!今は門が開いてるけど夜になると大門は閉まっちゃうの」

「じゃぁの夜は街の出入りができないんだな」

「魔獣の侵入を防ぐためにね、でも魔獣が活動する夜にわざわざ街の外に出る人も居ないし、仮に居てもちゃんと警備が居る小門があるから大丈夫だよ」

「へぇ、警備まで居るのか」

「まぁ人が集まる所は魔獣も嫌がって近付かないし、もしもの為の警備だね」

「なるほどなぁ」

「よしっ、ここまで来れば安心だね!」

「はぁーー、疲れた……」

レイリーにはまだまだ聞きたいことがたくさんあったけど

ひとまず今日は休みたい、なんたって……前の世界で死んでからまだ一日も経ってないんだ。




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