エピソード この世界で生きた僕ら
「タイちゃーん!朝だよー!ガッコーだよー!」
いつもと変わらない朝。
幼馴染みのアオイの声がいつものように外から聞こえてくる。
「おぉー、今行くー」
身支度を済ませ玄関を出る。
「お待たせ」
「おはよ、タイちゃん!」
「おはよ」
いつもの道を、いつものふたりで、いつも通りに歩く
「もー、元気少ないなー
タイちゃんは太陽の申し子なんだから、元気ださなきゃー」
「なら今日は元気無くていい日だな。」
「なんでー」
「あいにくの天気です」
タイヨウとアオイが空を見上げる。
どんよりとした雲が太陽を遮っていた。
「むー」
「お日様だってたまには休みたいさ」
「そんな事言ってるからくせっ毛なんだぞっ!」
「おいまて、それは俺がひねくれてるからって事か?」
「べーっだ!」
「つか、アオイだって毛先くせっ毛じゃん」
肩より少し長いくらいの黒い髪。
タイヨウはその毛先をつまみアオイに見せつける。
「む、コレはいいの!タイちゃんとおそろいなの!」
「俺とおそろいで嬉しいのか?」
「むむ、タイちゃんのばか、ちび!」
「168cmはチビじゃない!それに俺にはまだ無限の可能性があるんだ!」
「はいはい」
「おや、アオイおはよう」
通学路の途中には、アオイの祖父が神主を勤める神社がある。
「あ、おじぃちゃん!おはよー!」
「おはようございます」
「タイヨウ君おはよう
これから学校かい?」
「そだよー!」
「気を付けるんだぞ」
「はい、行ってきます」
「行ってきます!」
二人が幼い頃から面倒を見てくれたアオイの祖父は、タイヨウも孫のように可愛がった。
「また今後遊びにおいで
ふたりの好きないちご大福があるんだよ」
「ほんと?!わかった!帰りに寄るねっ!ばいばーい!」
「失礼します」
「ほっほっほ、元気でよろしい」
祖父と別れ再び通学路を歩く二人。
「おじぃさん元気だな
神社の階段の掃除してたんだろ?」
「元気なのはいい事だ!
でも境内までの階段100段だから大変なんだよね」
「ガキの頃良く遊び行ったけど、あの階段を掃除するのはちょっとな……」
「おじぃちゃん元気だけど、心配だなぁ」
「……じゃぁ今度ふたりで掃除するか?」
「えっ?!手伝ってくれるの?タイちゃん優しいなぁ」
「おじぃさんにはよくお世話になったしな」
「ありがとう、よろしくねっ!」
いつもと変わらない日常は
前触れもなく崩れ去るーー