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この世界に生きる僕ら  作者: くーる
始まりの街
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始まりの街 翔


「さて今日調べるのは古代語と歴史だな」

「あれ?歴史も調べるの?」

「占いババが言ってた北に居る、耳の長い種族について何か分かるかなってさ」

「あっ、そっか

じゃぁタイヨウ君が古代語を調べてる間に、アタシが歴史の資料でめぼしいの無いか探してみるねっ!」

「分かった、ありがとう」

ギルドでタイヨウの職業を申請し終わった二人は、図書資料館に訪れていた。


「ねねっ、先に席の予約だけしておこう?」

「そうだな、じゃぁ席を予約っと……これで大丈夫だなっ」

「レッツゴー!」


古代語の棚に訪れたタイヨウ。

「えーっと、古代語……古代語……って、めちゃくちゃ種類がある……ッ!

これじゃぁ何から探せばいいのか……うむ、わからんッ」

古代語の棚を往復して途方に暮れる。

「うーん、どうしたものか……」

「何かお困りですの?」

突然タイヨウに声をかけたのは整った顔立ちで、綺麗なストレートの金髪が印象的な少女だった。

夜に言うお人形さんのよう少女。

「え?……あぁ、ちょっと調べたい事があるんだけど、

何から調べたらいいのかわからなくて」

「あら、そうですの

古代語、古代文字の棚と言うことはそれに関係している事でして?」

上品な赤いワンピースと言葉遣い。

いわゆるお嬢様。

「そうなんだけどさっぱりわからなくて困ってたんだ

もしかして邪魔だったか?」

「いいえ、構いませんわ

ちなみにどんな言葉、文字ですの?」


やけに突っ込んでくるなと思いつつ何か知っているかも知れないと、調べている言葉を伝える。

「んー、エルク?とか、カーサスってふたつの言葉なんだけど……」

「エルク?そうですわね……恐らく、意味としては1000または0を表す言葉かと」

「わかるのか?!」

「それなりの教育は受けておりますわ」


「おっと失礼、えっと……俺はタイヨウ、きみは?」

「フェリアスですわ」

「フェリアスか、可愛い名前だな」

「ふぇ?!……オホン、それでカーサス……とおっしゃいましたか?」

一瞬フェリアスの素が出たが、あえて触れない事にしたタイヨウ。

話の腰を折る訳にも、彼女のキャラを壊す訳にも行かないと判断したのだ。

そして声をかけられた場所で立ち話は続いた。

「あぁ、カーサスってなんだろう……

フェリアスだったら分かるか?」

「わたくしも初めて耳にしますわ……しかし、先程のエルクと同じ文章に出て来た文字なら、恐らく同じ古代語ですわ」

「逆に同じ文章で違う古代語を使う事があるのか?」

「東西南北それぞれの文化に様々な種族、先祖が残した言い伝えや種族間のみでの秘事ひめごとなど記す時には、他者に渡っても分からないよう独自の文字や、他文化の文字を組み合わせる事は珍しくありませんわ」

フェリアスの豊かな教養に感服するタイヨウ。

「はあぁ……勉強になるなぁ

でもなんで俺の調べたい文章には、他の古代語が混じってないって分かったんだ?」


「あなたが調べていた古代語がふたつだけだったからですわ

文章の中で古代語がふたつと言うことは長い文では無い

短い文の中では複数の古代語を用いる事はあまり無いからと思いまして」

「すごいなぁ……」


「ちなみにエルクと言う言葉は、古代エレストニア時代の

エルフ族が使っていた言葉ですわね」

「あの……エルフ族ってどんな種族か教えていただけますか?」

「……ご自分でお調べになったら?

百聞は一見に如かず、

この図書資料館にもそれくらいの事なら分かる物があると思いましてよ?」

「そうだな、ごめん

色々教えてくれてありがとう、ほんとに助かったよ」


気を悪くした様子は無いが、自ら調べる事で身に付くという考えからの言葉のようだ。

「あーっ、タイヨウ君何してるのー?ずっと席で待ってたのにー」

待てど暮らせど戻って来ないタイヨウを心配してレイリーが探しにやって来ていた。

「あら、あなたは……」

「ん?タイヨウ君の知り合いですか?」

「いえ、なんでもありませんわ」

「この子が色々教えてくれてたんだよ、ほんとに助かったんだ」

「この……子?コホン

では、わたくしはこれで失礼致しますわ、ごきげんよう」

「ありがとうな、フェリアス」

「ごきげんよう……んん?なんかどっかで見た事あるような……うーっ思い出せない」


「なぁレイリーすごい事が分かったぞ!

例の古代語は昔のエルフ族が使ってた言葉なんだってさ!」

「そうなの?じゃぁエルフ族の事が書いてる本を探してみようよっ!

占いババが言ってた耳が長いとか色々分かるかもっ」

「そうだなっ」


その頃フェアリスは図書資料館を出た所だった。

「緊張しましたわぁ」

「こちらにいらしたんですね?御勝手をされては困ります、妙な輩が彷徨いていたらどうされるのですか」

「あら、護身術くらいなら心得ておりましてよ?」

「またそのようなお戯れを……お戻りになりましょう」

「まぁ……当初の目的は果たしましたわ、いずれ必ず……」


フェアリスにより大きなヒント得たタイヨウは、この世界の種族について調べる為図書資料館を練り歩いていた。「さて、種族……エルフ……これか?」

タイトルは『エルフ族と人族』

「そだね、これ見てみようっ」

「レイリーは探してた本見つかったのか?」

「とっくに探してありますよーっ

タイヨウ君が女の子と、仲良く楽しくお話してる間にねー」

じと目を送るレイリーから妙なプレッシャーを感じたタイヨウ。

「スイマセンデシタ…でもフェリアスのおかげで古代語のことも分かったんだし、いいだろ?」

「んー、そうゆう事でもないんだけどー……ばか」

「じゃぁ席に戻るかっ」

「はーい」


タイヨウを探しに行く際、レイリーが改めて予約しておいた席に座り本を広げる。

「さてさて」


『エルフ族の歴史と文化


我々人間よりも寿命が長く魔法を得意とするエルフ族。

今回、本誌で記述するのはエルフ族の歴史と文化についてだ。


エルフ族の歴史はとても古く古代エレストニア時代よりも前、アデインスト時代に初めてその存在が確認されている。


当時はエルフ族と言う呼称では無く、また我々人間との意思疎通が出来なかった為

特徴的な長い尖った耳を持つ事から耳長族と呼ばれていた。


しかし互いの文明の発展の為、言語学者のアイリーン コロフスと当時のエルフ族の長 エルリン ラウンによって、少しづつエルフ族の言葉や文字が解明された。


その中でエルフ族が自らをエールスリルフ(森を守る者)

と表している事がわかり、それが現在のエルフと言う呼称になったと言われている。


エルフ族は独自の文化、思想、歴史を後世に残す為

様々な事を記述した物が多く存在したが、どれもエルフ族にしか読む事の出来ない文字や言葉、さらには文脈を用いて記していた為、現在も全てを解読する事は難しいとされている。


その後、森を狩る事が多くなった人間に対し、森を守る存在のエルフ族と衝突する事も続き、関係を断絶する時代もあった。


今でこそ当時のわだかまりは解けてきたものの、一部のエルフ族は人間を敬遠している嫌いがある。


ともかく、同じ世界に生きる者同士互いの文化や思想を尊重出来るよう、歩み寄る努力は必要なのだと私は思う。


著 サルバート ルフォン 』


「どうだった?」

「エルフ族の歴史とかも少し分かったよ……」

「それなら良かった

あたしの見てた本はほとんど関係ない事ばっかで、おとぎ話みたいな内容だったよ」

「おとぎ話?」

「うん……見てみる?」

「そうだな、少し見てみるか」


『世界創造神話


この世界はかつて

創造神 ゼクロスによって創造された。

ゼクロスはこの世界に光と闇をもたらそうと、

それぞれを司る神に全てを託した。


光を司る神 ランディーン

闇を司る神 ローキス


しかし光と闇は相入れる事は無く

どちらがこの世界を導く存在で有るべきかを

争いによって決める事にしてしまう


光のチカラを操り戦う 霊獣

闇のチカラを纏い戦う 魔獣


争いは100年に渡り

ついに見兼ねた創造神ゼクロスによって

終止符は打たれた


ゼクロスは二人の神に罰として

それぞれをスフィアに封じ込めた


そして光のスフィアはこの世界で

最も暗い闇の中に


闇のスフィアをこの世界で

最も明るい光の中に幽閉した


その後ゼクロスはひとりの使いを送る


時を司る神 クロス


クロスは、この世界に眠る二人の神を崇めるために

ふたつの神魂が眠る大地

セル ソフィア グラウンド

と名付けこの世界は再誕したのだ


著 不明』


「なんか……思ってたんとちがう……」

「え?」

「あ、いや……なんか壮大だなぁってさ」

「でも子供に聞かせるようなおとぎ話みたいだったでしょ?」


この話がこの世界の創造にまつわる物だとすれば、

タイヨウが探す闇の宝玉は、この世界の最も明るい場所にあると言う事になる。

「んー……」

取るに足らないおとぎ話にしか感じなかったレイリーをよそに、考え込んでしまったタイヨウを心配する。

「タイヨウ君?大丈夫?」

「あ、あぁ……この世界で最も明るい場所ってどこなんだろうって思ってさ」

「んー、ギルド認定も無い書物だから……真面目に考えるのもなんか……ね?」

「んー……」

「あれっ?真面目に考えてる?」


「決めた、俺エルフ族に会いに行くよ」

「えぇ?!なんで?!」

突然の宣言に思わず大きな声が出てしまい、他の利用者が

ざわめき出してしまう。

「うっ、スイマセンデシタ……」

軽い謝罪の後、声を落とし話を続けた。

「な、なんでいきなりっ」

「占いババが言ってただろ?

北に行くことになる、エルフ族に会うって」

「確かに言ってたし、古代語がエルフ族の言葉って事は分かったけど……」

「今見た本の事も含めて、エルフ族に聞いたら何か分かるかなって思ったんだ」

タイヨウの考えを聞き、黙り込んで何かを考えるレイリー。

「だから俺は、ここで出来る限りの準備をしてエルフ族に会いに行きたいんだ」

「……そっか」

「さて、調べ物はこれくらいにして昼飯でも行かないか?」

ようやく明確な目的が定まったタイヨウだったが、それに反してレイリーは戸惑っていた。

「うん、そだねっ」



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