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この世界に生きる僕ら  作者: くーる
始まりの街
16/43

始まりの街 序


食事を済まし足早にホテルに戻ったタイヨウとレイリー。

未だに明確な次の目的を決められていないタイヨウは少しづつ焦りを感じていた。


「ねねっ、そういえばさっき職業って決まったって言ってたけど?」

ホテルに戻った二人はタイヨウの部屋で話をしていた。「あぁ、剣士になってソードを使おうと思う」

「ほほぅ、ランサーとかシーフとか色々あるけど大丈夫?」

「レイリーの助言を参考にしたけど、やっぱり今後ギルドの依頼を受けて戦いになったら俺が前線で戦って、レイリーには後方支援に回ってもらう方が効率がいいかなってさ」

「なるほどね、確かにそうかもっ。

アタシもそんなに強くはないけど……まぁこの街で言ったら戦える方だし、タイヨウ君の火事場の馬鹿力は前線で戦う職業に適してるからねっ」

「背中は預けたぜっ」

「はいはい、任されましたよっ。

あと調べ物の方は?」

「そうだったな……詳しくはまた今度話すけど、占いババによればひとまず俺がハードラックの影響で死ぬ事は無いらしい」

「ーーッ」

レイリーは秘密のスキル、リンクの話していないため初めて聞くリアクションをする必要があった。

「だからハードラックについては追々調べる事にして、今は古代語と闇の眷属について何か分かればって考えてる」

「そ、そうなの?!良かった……ッ!

それならひとまず安心出来るからこれからの事に集中できるねっ!」

「あぁ、そうだな

レイリーや周り人を巻き込む心配も無さそうだから安心したよ」

「ホントに……良かった

じゃ、じゃぁ明日はそんな感じで!」

「ありがとう、おやすみレイリー」

「おやすみ、タイヨウ君」


レイリーが部屋を出た後も、ベッドに横たわり一人考えを巡らせる。

「やっぱり、レイリーには話しておきたいな……

拒絶されたらって考えたら怖いけど、こんなに協力してくれてるレイリーに何も言わないで居るのは失礼っていうか……とにかく近いうちにちゃんと話そう、俺の正体とか本来の目的とかをーー」



キュイー♪ キュイー♪

「ん……んぅ、おはよキュート」

キュイー♪

「昨日はありがとな」

キュイ♪

キュートを頭から背中にかけて撫でているとある事に気が付いた。

「あれ?なんか背中の紋章が薄くなってきてる……のか?」

キュイー?

「気のせいかな?」

キュートを抱っこしながら背中を見ていると、ドアを叩く音と共にレイリーの声が聞こえた。

「おはよーっ、タイヨウ君起きてるー?」

「あー、今開けるから待っててくれー」

「はーい」

ベッドから身体を起こしドアに向かう。

「そういえばいつの間にかタイヨウ君って呼ばれるようになったな」

小さい様な、大きな変化を気にしつつドアを開ける。

「おはよ、レイリー」

「おはよっ!準備出来てる?」

「えっと、ちょっと待っててな」

「はーいっ」

軽く身支度と準備を済ませる。

「手荷物よし、戸締まりよし、おしっじゃぁ行くか」

「おーっ!」


ロビーに降りてくると昨日と同じ女性がフロントに立っていた。

「おはようございます、お出掛けですか?」

「あ、はい、ちょっと出掛けて来ます

今日も支配人さん休みなんですか?」

「はい、ご迷惑おかけします」

「いえいえ!大丈夫ですよっ!」

「何かあれば私にお申し付けください

それではお気を付けて行ってらっしゃいませ」

「行ってきます」


ホテルを出て大通りに向かって歩く二人。

この道なりもだいぶ歩き慣れた様子だ。

「支配人さんが2日もお休みなんてねっ」

「もしかしたら娘さんの所に帰ってるのかもな」

「あぁ!そうかもね!」


ホテルのある路地を抜け大通りに出た。

街は相変わらず朝から賑やかで、たくさんの人々が忙しそうにしている。

「そうだ、昨日は話の途中だったんだ……

占いババどこにいんのかな」

「そうだったんだ、神出鬼没な人ってよく言われてるからねぇ……居るかなぁ」

大通りに出て割とすぐだった。

「あっ」

「何見てんだい!それにしても、やはりこうなったか」

「何のことだ?」

「こんにちはっ」

占いババはタイヨウに見向きもせず、真っ先にレイリーに話しかける。

「お嬢さん、あんたの選んだ道は色んな意味で茨の道だよ……ほんとにいいのかい?」

「ッ?!……はいっ」

「それならよろしい、あたしゃ頑張る乙女の味方だよ!」

「ありがとうございますっ」

まるで話についていけず、おいてけぼりを食らうタイヨウ。

「なんの話だ?」


「このちんちくりんがぁっ!まぁいいさ、昨日の続きだよ!」

「あ、はい」

「その前にひとつ、あんたの光の加護が弱まってる

というかそもそも永続的なものではないんだよ」

「でも、昨日はハードラックじゃ死なないって……」

「人の話は最後まで聞きな!」

「ゴメンナサイ」

「いいかい?!光の加護が永続的なものでないけれども

あんたは不運じゃ死なない

それにはちゃんと理由があるんだよ!

チビドラゴンを召喚した時に発動したスキル、それがあんたを護る」

「ねねっ、もしかして闇の眷属かな?」

「名前なんか知らないよ!とにかくあんたが死なないのはそれのおかげだ!

チビドラゴンが消えたらあんたはすぐに死ぬから気をつけな!」


「えぇ?! は、はいっ、気をつけます……」

「光の加護はね、あんたがチビドラゴンを召喚するまでの間だけ護ってくれてたんだよ!

なんにせよ世界の理を変えるなんてバケモンだよっ!」

「昨日も言ってたなそれ……」

「うるさいよっ!それだけ異常な事なんだ!

それでこれからの事だけどね!あんた達は北に向かう事になるよ!」


「北って言うと……ローグファリスですか?」

「名前なんか知らないよ!とにかく北のどっかに居る耳の長い種族に会う事になる!」

以前レイリーから聞いた話を思い出すタイヨウ。

「耳の長い種族……」

「エルフかな……?」

「なんで北に行くことになるのかはいずれ分かるからね!」

「えっと、ありがとうございます」

「ふんっ、せいぜい精進しなっ!」

「頑張らなきゃねっ!ありがとうございますっ!」

「じゃぁ20000シル出しな」

「ぐっ、は……はい」

「やけに素直じゃないか!気持ち悪いね!」

昨日請求されていた事からある程度予想していたタイヨウと違い、レイリーは困惑する。

「えぇ……」


「最後に一つだけ言っとくよ!」

「あ、はいっ」

「闇に呑まれるな、囚われるな

光ある所に闇はある

でもね、闇がある所に光があるとは限らないんだよ」

「え?」

「さぁ!行きな!あたしゃ帰って韓ドラ見るんだよ!」

「カンドラ?」

「韓ドラ?!ちょっと待ってくださいっ!」

「ふんっ、しっかりやんなっ!アイルの奴め、このあたしをこき使うなんて偉くなったもんだよっ!」

次第に姿が薄くなって行く占い師。

「今アイルって言ったか?!」

そしてまるで孫を見守るような優しい表情で消えていった。

「うそっ、消えちゃった……」

「そっか、そうだったんだな」

「タイヨウ君?」

「アイル……ありがとう」

「アイル?」

「いや、いいんだ……行こう、レイリー!」

「え?え?待ってよーっ!」


占い師との最後の別れを終え、二人は再びギルドに向かって歩き出していた。

「ねーねータイヨウ君っ、占いババの事なんかしってるの?」

「んー、神様からの贈り物だよきっと」

「んー?わかんないなぁ……」

「さて、ギルドに到着だっ

ささっと職業の申請済ますぞ」

「んぁーい」


ギルドに入ると真っ先にカウンターへ向かい、事前に記入を済ませておいた用紙を提出する。

「すいません、職業の申請お願いします」

カウンターの元気な女の子が対応してくれた。

「かしこまりました!それでは登録を致しますので、こちらにリングをかざしてください!」

「はいっ」

カウンター横のスフィアにリングをかざす。

「ありがとうございます!これで登録完了です!

ギルドからの依頼を受ける際には、職業別の依頼もあるので注意してください!」

「わかりました」

「またのお越しをお待ちしております!」


職業の登録を済ませると、近くで待機していたレイリーがやってきた。

「大丈夫だった?」

「大丈夫だよ、でもなんか剣士になった実感は無いなっ」

「まぁねー、まだ装備も無いから無理もないよ

装備はいつ揃えに行く?」

「明日にでも行こうかな、今日は図書資料館に行かなきゃだし」

「図書資料館は今日じゃなきゃダメなの?」

「んーまぁね、そう言う事になるかな」

「んー?」

「ほら、行くぞっ」

「んー!待ってよー!」


「さてさて、そろそろ到着だけど……居たっ!おーい!」

「あっ!タイヨウさん!それにレイリーお姉さんもっ!」

「リップルちゃん!こんにちはっ!」

「こんにちは……です!

あの、レイリーお姉さん具合大丈夫……ですか?」

「えっ?……あっ、うん!

もう元気だよっ!ありがとうリップルちゃんっ」

「良かった……です

タイヨウさんが凄く心配してたんですけど、フューリーを探すの手伝ってくれたので……」


タイヨウが心配していたと言う事を聞き舞い上がるレイリー。

「そうだったんだねっ♪今日はフューリーちゃん逃げてない?」

「はいっ!ちゃんと首輪もして鈴も付けましたっ!」

「おっ、リップル偉いなっ!」

「ほんとだねっ!」

「もうおふたりに迷惑かけたくないので……です」

「そんな事気にしなくていいんだぞ?」

「そうだよっ!また困った事あったら言うんだよ?」

「ありがとうございます…です」

「俺達はちょっと図書資料館に行くんだけど、リップルは何してたんだ?」

「今日は朝市でのお使いを頼まれたので、これから帰える所でした」

よく見るとリップルの手には買い物袋が握られていた。

「そっかそっか!じゃぁまた今度一緒に勉強しようねっ!」

「はいっ!」


その後二人は、ある程度の所までリップルを送った。

「気を付けて帰るんだぞー」

「またねーっ!」

「タイヨウさんもレイリーお姉さんも、気を付けて……ですっ」

二人はリップルの姿が見えなくなるまで見送った。

「リップル、きっとレイリーの事を心配して待ってたんじゃないかな?」

「そうなの?!

んー……いい子すぎるーっ!

今度何かご馳走してあげよっ!」

「そうだなっ、じゃぁ改めて行くかっ」

「あいあいさー!」


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