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この世界に生きる僕ら  作者: くーる
始まりの街
15/43

そしてここから


占いババに支払いを済ませてから俺は、レイリーの事が気になり要点だけ調べに足早に図書資料館に向かった。


「レイリー大丈夫かな……」


あの距離で聞こえていたとは考えにくいけど、今までの一緒に居てくれて、ずっと助けてくれたレイリーを仲間はずれにするような格好になってしまった。


「レイリーにはちゃんと全部言った方がいいのかな……」


怖かった、拒絶させる事が。

怖かった、ひとりになる事が。


ハードラックの事を話した時は俺の心配をよそに、レイリーはぎゅっと抱きしめてくれた。

その時は情けなくも男泣きしたけど。


「柔らかかったなぁ……」


あの時の記憶を鮮明に思い出し惚ける俺をジーッと見つめる小さな視線。


「んっ?」


「鼻の下伸ばして……何を考えてるんですか」

「リップル?!おどかすなよっ!」

「タイヨウさんが勝手に……びっくりしただけ……です」

「あ、あぁ……っと、ごめん」

「それより今日はレイリーお姉さん……一緒じゃないんですか……?」

「なんか調子悪いみたいでさ、ホテルで休んでるよ」

「そうなんですか?心配……です」

「あぁ、だからさっさと用事済ませてホテルに戻ろうかと思ってるんだ」

「そうしてください」


「リップルは何してたんだ?」

「……図書資料館に行けばまたタイヨウさん達に会えるかと思って……

でも、フューリーが……」

「ま、まさかまた逃げたのか?!」

「……です」

「はぁ、じゃぁさっさと探すぞっ」

「でも……タイヨウさんにも用事が……」

「別に今日じゃなくても大丈夫だ

だから早く探そう、また暗くなるぞ」

「はい……ごめんなさい」

「いいよ、気にしなくて

逃げたのはいつだ?」

「……30分くらい前……です」

「結構経ってるな、焼き魚は?」

「まだ昼過ぎなので……焼いてるお店が無くて……」

「そうか、どうやって探すかな」

「あの、やっぱりひとりで……」

「そうはいかないぞっ、遅くなったらまたローレルさんが

心配するだろ?」

「……はい」

「よし!とりあえず聞き込みして、目撃者が多かった所を探そうか!」

「……はいっ!」

「いい返事だっ!褒美にナデナデしてやるっ!」

「はわわわわわっ」


その後聞き込みを続けた俺達は草の生い茂る広場にたどり着いた。

「さて、この広場の草むらが最後の目撃情報の場所だな」

「フューリー……出てきてー……」

「おーい、フューリーっ!……んっ?今なにか動いたな」

音のする方へ向かい草を掻き分ける。

「そこかっ?!」

……ニャァ

「 おいリップル!フューリーが居たぞっ!」

「ほんとですか! フューリー……!」

ニャァ

「悪びれる様子も見せずにコイツは……まぁでも見つかって良かったなっ」

「ありがとう……ございます……ですっ」

「良かった良かった……ん?」

フューリーが隠れていたすぐ近くに良い物を見つけた。「……あっ、四つ葉のクローバー……です」

「ラッキーだな、ほらリップル」

「タイヨウさんが見つけたのに、いいんですか……?」

「最初に見つけたのはきっとフューリーだろうからな、リップルが受け取ってくれるか?」

「あ、ありがとう……ございます」

「俺の故郷じゃ四つ葉のクローバーは幸運の証だからなっ!大切にしてくれよっ」

「……はいっ」


ひと息ついて空を見上げると、もう日が傾きかけてきてた。

「なんだかんだもう夕方か」

「あの、ありがとうございました……です」

「次はもう絶対逃がすなよーっ、

んじゃぁ、またなっ!送ってやれなくてごめんなっ!」

「大丈夫……です

さよなら、タイヨウさん」



「さてさて急いで帰らなきゃな、にしても四つ葉のクローバーとはいい物を見たな……そうだ!

レイリーが元気出るように四つ葉のクローバーを折り紙で折ろう!」


俺は近くの雑貨屋で色紙いろがみを買ってから、そのまま店の近くの広場のテーブルで四つ葉のクローバーを折っていた。

近くを歩く人々チラチラ見られながらも、一生懸命想いを込めて完成させた。


「ふむふむ、これはなかなか……素晴らしい出来ですわ」


何か聞こえたような気がしたけど、早くホテルに帰ろうと思ってたから気に止めなかった。


「よし、出来た、帰るかっ!」


広場からは寄り道しないで、とにかく急いでホテルまで戻った。

「さて、到着っ……ん?

レイリーの部屋の窓が空いてるな……そうだ!」

見たところ周りに人の気配は無い、ちょっとしたサプライズをしてみる。

「キュート、出て来ていいぞっ」

キュー♪ キュイー♪

「この折り紙をレイリーの部屋に届けて貰えるか?あそこの窓から行くんだっ」


キュイー♪ バサバサ


「ちゃんとレイリーに届いたかな……」


キュート……上手くやってくれよ。


「あっ、レイリーだ、だいじょーぶかー??」


ここからだとレイリーの表情はよく見えないな……。

ほんの少しの沈黙は妙に永く感じた。


《タイヨウ君のばーーーかっ!》


「えぇ?!なんでっ?!」


突然の悪口。

でもレイリーの顔は明るくなってる気がする。

それが分かっただけで安心した。


言い終えて何故か満足気のレイリーは、突然姿を消したかと思うとバタバタと音を起てながら勢いよく扉を開けて

ホテルから飛び出して来た。


「タイヨウ君っ!」

「は、はいっ!」

「アタシもう決めたからっ!もう迷わないからっ!」

「えっ?!んんー?!」

「か·く·ご·してねっ♪」

「んんー?」


昼間調子が悪そうだったのに…何が起きたんだ?

「ごはん、行こっ!」

レイリーは俺の手をとって走り出した。

俺もつられて走り出す。

レイリーは俺の手を強く強く握っていたーー。


---- キッチン バー フロスタント ----


「はぁ、はぁ……はぁぁ」

「もう、だらしないぞっ!」

「いやレイリー……早いよ……」

「まったく……ほら!ささっと食べて作戦会議するんだよ!」

「作戦会議?」

「これからどうするのかとか!タイヨウ君の職業も決めて

ギルドの依頼受けたりとか、いざという時に戦闘も慣れとかないと!」

「……そうだな、実は職業はもう決めてあるんだ

それと、少しだけ調べ物したいから明日はギルドに行ってから、今日行けなかった図書資料館に行こうと思う」

「わかったよっ!あっ、今更だけどキューちゃんは?」

「レイリーに引っ張られてる時にリングインさせたぞ?」

「それにしても、歩いてる人にキューちゃん見られてたら大変だったんだよ?」

「ちゃんと周り確認したし、大丈夫だよ」

「それって言ったら逆に悪くなるパターンじゃないの……?」

「だ、だだ大丈夫だって!」

「とにかく早く食べてホテル帰るぞー!」

「りょーかい」

「あ、ねぇタイヨウ君」

「ん?」

「これからも……よろしくねっ」

「……こちらこそ、よろしく」


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