表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この世界に生きる僕ら  作者: くーる
始まりの街
14/43

花言葉


カレの身の上話に興味があった。

ほんの数日前、森の中で偶然に初めて出会ったカレに。

最初に出会った時は、森の中で魔獣に襲われていたから、無我夢中で助けたけど……

森のど真ん中に居たのに服はあまり汚れてないし、その手には霊獣の卵。

更には何も覚えていない、記憶喪失……。

今にしてやっとわかった、覚えていないじゃなくて、知らなかったんだね。


あの時のアタシは、自分だけ仲間はずれにされたような、

心がチクっとした感覚を塗り潰すようにスキルを発動した。


誰にも話してない秘密のスキル『リンク』

アタシはフーちゃんの視覚 聴覚を共有出来る。

人の何倍、何十倍も優れた感覚を。

少し離れたくらいなら普通に見えるし、聞こえる。


最初だけ話を聞いたら、後はカレが自分から話してくれる時が来るのを待とう、そう思ってた。


でもすぐに後悔する事になった。


((さて、率直に聞くよ

あんたこの世界の人間じゃないね))


血の気が一気に引くのがわかった。

胸が押し潰されて、自分が呼吸出来てるかどうかもわからなかった。

そしてカレは否定しなかった。

全てが……自分の中で繋がった。

ちがう、前からもしかしたらって思っていた。

認めたくなかっただけ。逃げてただけ。


呆然とするアタシの耳に流れてくる二人の会話。

それはいつしか、周りの騒音と変わらないものに感じた。

それでもこれだけは聞こえた。

((あんたは不運じゃ死なないよ))

理由なんてどうでもよかった。

カレがハードラックで死ぬ事は無い。

それが分かればいい。


……アタマがくらくらする、寒気がする、立っていられない、消えて……しまいたい。


「おーい!レイリー!お待たせっ!」

今はカレの声を聞きたくなかったから、適当に理由をつけてホテルに戻ろう。

黙ってホテルに戻らなかったのは心配して欲しいから?心配させたくなかったから?

どっちにしてもカレは心配する。優しい人。

自分が死ぬかもしれない、より先に周りを巻き込みたくないって言っちゃう……そうゆう人。


でもやっぱり無理してた。

カレはアタシに弱さを見せてくれた。

嬉しかった。

でも……別の世界の人だった。


ふらふらと歩いてホテルに戻る。

人にぶつからないように歩く。

今、人にぶつかったら倒れてしまう。

倒れたら人が集まる。

人が集まればカレが来るかもしれない、それは困る。

から、頑張って部屋まで戻ってベッドに倒れ込んだ。


「アタシ…どうすればいいんだろう…」


自然と涙が溢れた。


「フーちゃん、アタシ……」


フーちゃんは何も言わずに、アタシの顔に身体を擦り寄せてくれた。

ーーあたたかい。

そう感じた瞬間、アタシは声をあげて泣いた。


ひとしきり泣いて、涙も出なくなって。

いつの間にか眠ってしまっていて。

気付けば空は宵の支度をしていた。

窓をあけて風を吸う。


「はぁ……」


たったの数日……だけど、カレと過ごした時間は楽しくて

、嬉しくて、優しくて、ドキドキして……悲しくて。


初めて出会った時はただの怪しい人だと思った。

でも一緒に居るうちに悪い人じゃないな……とか。

優しい人だな……とか。

カッコイイかも……とか。

可愛い人だな……って。


いつの間にか、カレに惹かれてた。

でも……別の世界の人だった。


いつか居なくなっちゃうのかな、元の世界に……帰っちゃうのかな。


アオイさんと……。


カレが占いババと話してた事はもう、あんまり覚えてないけど

アオイさんがすごい人なんだって事はよく分かった。


「アタシなんかじゃ……」


あけた窓から部屋に風が入ってくる。

金庫の上に敷いたハンカチの上に飾っていた、アタシの宝物が床に落ちる。鶴の紙細工。


愛の象徴か……。


「ばっかみたい……ひとりで舞い上がって……」


自分で言ってて胸が苦しくなる。


「こんな辛い気持ちになるなら……」


握り潰してしまえば全てが終わる、そんな気がした。

だから、いっその事……。

胸が張り裂けそうになる。


キュー キュイー!


「え?! キューちゃん?!どうして?!」


部屋の外から飛び込んで来た突然の訪問者。


「なんで窓から……あれ?キューちゃん何をくわえてるの?」


キュー♪


くわえていたのは、四つ葉のクローバー……の紙細工。


「ーーッ!」


慌てて窓から身を乗り出す。

そこにはこちらに大きく手を振るカレの姿があった。


「だいじょーぶかー?」


なにを呑気に。

誰のせいでこんな……。


でも……それでも嬉しかった。

カレの笑顔を見たら、今までの楽かった思い出も、今までの嬉しかった事も、さっきまでの……気持ちも。


全部キミと出会えたからなんだよねっ。

なんだかそれが嬉しくて、嬉しくなってーー


「……すぅぅ、タイヨウ君のばーーーかっ!」


「えぇ?!なんで?!」


今は、このままでいい。

今は……この気持ちを大切にしたい。

だからいつかちゃんと聞かせてね。

キミの……タイヨウ君の言葉で、聞かせてね。


タイヨウ君の事もっと知りたいから。


あ、ちなみタイヨウ君の世界で四つ葉のクローバーが、

どう言う意味を持つか知らないけど……。

アタシの故郷での四つ葉のクローバーは『運命の人』

だからねっ!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ