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この世界に生きる僕ら  作者: くーる
始まりの街
13/43

そしてこれから


タイヨウに降り掛かった更なる謎。『闇の眷族』

ハードラックの古代文字。キュートの背中にあるアオイの家の家紋。

問題は山積みにされる一方だが、今出来る事をしておくべきだと息巻くタイヨウ。そう、全てが手遅れになる前に…


「ではでは、ひとまずギルドに行ってキミの職業決めて」

「それが終わったら図書資料館だな」

「うんっ、これでキミもやっと正式にギルドから依頼を受けて報酬を貰えるようになるねっ!」

「そうだな、早く一人でも戦えるようにならなきゃな、今のうちに出来る事をやっておきたいし」

「…そだね」

一人と言う言葉を聞く度に寂しそうな表情を見せるレイリー。

「じゃぁ行くか、っとその前にキュート、ちょっとの間リングインしててくれ」

しかし、タイヨウがそれに気付く事は無い。

「じゃぁ、フーちゃんも入っててね」

自らに降り掛かるいくつもの謎。そのせいでほかの事に気を回す余裕がないのだ。

キュー…キュイー♪

「ではでは出発っ!」

そして恐らくレイリーはそれを理解している。故に余計な心配をさせまいと明るく振る舞うのだ。


ホテルのロビーに降りるとフロントに支配人の姿が無く、女性の従業員が代わりを務めていた。

「おはようございます。」

「ども、ってあれ?今日は支配人さんは居ないんですか?」

「本日、支配人は休暇を頂いております、何か御用でしたら私がお伺いしますが?」

「いえ、特に無いです」

「かしこまりました、お気を付けていってっしゃいませ」

「行ってきますっ!」


ホテルを出てギルドに向かう二人。

「なんか拍子抜けだな……」

「にししっ♪なんだかんだでキミと支配人さん、仲良いもんねっ」

「仲良いって…それはまた別だろ」

「つれないなー」

「はいはい、それで?職業決めるにはギルドの本部?本店?じゃなくて支部?支店?でいいのか?」

「混乱してるねぇ、どっちでもジョブは決められるから大丈夫だよっ」

「そっか、…結局呼び方は本部?本店?どっちなんだ?」

「ギルドは複合施設だから利用する人によって変わるかなぁ……クエスト受注とかジョブチェンジでよく来る冒険者とかは本部とか支部って呼ぶし、お金預けたり色んな手続きで来る人は本店、支店って言うね」

「へぇ、なるほどなぁ」

「どっちも間違ってないって事だね、じゃぁその辺の支店に入ろっか」


「そうだな、にしても職業か……何がいいんだろうな」

「んー、自分の好きな職業になるのがやっぱり一番だと思うけど、人によってステータスの上がり方違うし、得手不得手もあるからねっ」

「そうだよな、レイリーの職業は何になるんだ?」

「アタシはハンターだよっ」

「ハンターか、レイリーはなんでハンターになったんだ?」

「アタシはあんまりチカラないし、接近戦は向いてないって思ってたからね」

「なるほど」

「あと風属性だから相性のいいハンターにしたよっ

フーちゃんも風属性で風読みもハンターと相性良いからねっ!」

「なるほどなぁ……どうしよう」

「キミの場合は、んー、ねねっもう1回ステータス見せて?」

「わかった」


レベル 2

体力 112

魔力 105

チカラ 75

防御力 60

スピード 55

知性 75

運 -501

特殊 ハードラック

属性 火(闇)

特殊 火事場の馬鹿力

特殊 闇の眷族

職種 不明

霊獣 ドラゴン


「改めて見るとバランスがいいねっ

大剣とかは難しいけど、ソードとかなスピードも活かせるし……剣士とかいいかも」

「剣士……カッコイイ!」

「知性は普通だから魔法使いはかなり勉強しないと出来ないし、ランサーとかもいいかなぁ」

「色んな職業があるんだな」


などと言いつつタイヨウも年頃の男の子だ。

前の世界では様々なファンタジーゲームで遊び、ジョブというシステムもそこそこ理解してる。

そしてタイヨウが憧れる装備、刀。しかしこの世界にそんなもの無いだろうしなぁ。と諦め半分だ。


「決める時間はたっぷりあるし、無理に今日決めなくてもいいからねっ」

「そうだな、自分に合った職業決めて早く強くならなくちゃな

でもこの街はあんまり武器とか防具を装備してる人見ないな……」

「ここは大きいぶん仕事があるから、外れに行けば酪農してる所とかもあるし、活気があれば魔物も近づかない

自警団に警備隊も居て安心だからねっ」

「なるほどな」

「街とかグラウンドによって風習が違うから、色んな街とかに行くのは楽しいよっ!」

「そっか、それは確かに興味あるな」

そうこうしている間に最寄りのギルドに到着した。

「よっし、到着!」


「いらっしゃいませ!今日はどのようなご要件ですか?」

「ども、えっと職業を決めたいんですけど……」

「かしこまりました!それではあちらのテーブルにある用紙に必要事項ご記入のうえ、受け付けまでお持ちください!」

「ありがとうございます」

入口付近で案内されたテーブルに向かい用紙を手に取り確認する。

「さてと、これが記入用紙か?」

「最終的になりたい職業にマルすればいいんだよっ!」

背後から覗き込ん出来たレイリーに手解きを受ける。

「なるほどなるほど」

記入用紙を見渡すと、様々な種類の職業名とその案内が書いてあった。


---------------


剣士


大剣 大きな剣を扱い前線で活躍する。

チカラ自慢や打たれ強さに自信がある人向け。

主なスキル チャージアタック フルスイング等


ソード スピードを活かして敵の懐に入り戦う。

素早さに自信があり、バシバシ敵を倒したい人向け。

主なスキル 疾風斬り 居合切り等


短剣 手数命の連続攻撃がメイン。双剣も可能。

相手の動きを読む動察力や瞬発力に自信がある人向け。

主なスキル ダブルヒット 急所突き


----------------


「へぇ、剣士だけでも三種類あるのか。」

「職業が剣士ってだけで使う装備で派生していくんだけど、例えば……魔剣士だとソードの派生だね」

「なるほど、奥が深い」

「ちなみにステータス欄はこんな感じになるかな」

テーブルに置いてあるメモ用の紙に書き込む。


職業 剣士

装備 ソード

派生 魔剣士


「……魔剣士ってどんな感じなんだ?」

「魔法を武器に纏わせて攻撃するの

魔法を放って敵に命中させるってね、すごい難しい事だから本職じゃないと出来ないけど、魔法を纏わせて攻撃すれば、物理、魔法両方の攻撃になるってわけっ!」

「じゃぁ…魔法使いさん空気に…」

「なりませんっ!失礼な事は言わないのっ

細かい話になるけど魔法を放つ時ってね、精霊や微精霊の影響を受けないように計算したり、逆に精霊や微精霊のチカラを利用するの」

「ほほぅ」

「魔剣士の場合は精霊や微精霊の影響をモロに受けるから威力、ダメージで言ったら魔法使いの足元にも及ばないんだぞっ!」

「な、なんかスイマセン」

「分かればよろしいっ」

「それにしても職業、装備、派生かぁ、勉強する事が山ほどあるな」

「まぁじっくり考えよっ

職業はたくさんあるからねっ!」

「そうだな、焦って考えても仕方ない

けど悠長にもしてられないから明日には職業決めたいと思う」

「聞きたいことあったら言ってねっ!わかる範囲になるけど、教えてあげるっ!」

「助かるよ、ありがとう

すいません、この紙って持って帰ってもいいですか?」

近くにいたギルドの案内係の女性に確認する。

「大丈夫ですよ!ごゆっくり検討してください!」

「ありがとうございます、

じゃぁレイリー、図書資料館に行くか」

「はーい!」


ギルドを後にして図書資料館へ向かう二人。

「なぁレイリー、キュートが遊べるような所とか知らないか?」

「んー、普通の広場とかだとキューちゃん目立つしなぁ……

街から出ないと難しいかもねぇ」

「そうかぁ、どっかいい場所あればなぁ」

ドラゴンであるが故に人目に着けばあっという間に噂になり、瞬く間に注目の的になる事は目に見えていた。


そんな話をしながら目的地に向かって歩いていると、突然老婆に話をかけられる。

「そこのあんた! ちょいと待ちな!」

「ん?俺の事か?」

「そう!あんただよ!こっち来な!」

「あっ!占いババだ!」

「占いババ?」

「なんだい!馴れ馴れしいね!それよりあんた!ここ座んな!」

明らかに面倒な事になるだろうと、どうにか回避を試みるタイヨウ。

「えぇ……ま、間に合ってますっ」

するとレイリーが耳元で、この老婆に関する情報を話してくれた。

「最近現れたんだけど、占い師なのに占ってくれないって有名なんだよ」

「えー、めんどくさい……」

「なんだい!ぼそぼそ話して!早く早く早く!」

「怖ぇ……お、俺たち急いでるんで……」

その異様なプレッシャーに思わずたじろぐ。

「あんたに降り掛かってる不幸、とんでもない事だよ!

それに……むむ!これは珍しい霊獣を使役してるね!」

「はぁっ?!」

「なっ、なんでッ!キューちゃんリングインしてるのに!?」

その老婆はまるで、全てを見透かしたかの様にタイヨウの秘密を言い当てた。

「占いババを舐めるんじゃないよ!」

「自分でもそう呼んじゃうのかよ……」

そんな事はさておき、タイヨウに降り掛かる不幸と霊獣の秘密を言い当てた事に変わりはなく、話を聞いてみる事にする。


「ねぇねぇ、聞いてみた方が良いかもよ……」

「あ、あぁ……そうだな、お願いします」

「ふんっ!最初からそうすればいいのさ!何も語らず目を閉じて黙って座ってな!」

「は、はい……」

「黙ってなって聞こえなかったかい?!」

若干の理不尽を感じるも、色んな意味で只者ではないと感じたタイヨウは大人しく従った。

「ふんふん、ほーう、なるほど……これはッ!」

二人は緊張しながら結果を待つ。

「ふむふむ……はーん、いやぁ……っハ!」

難航しているのか時間だけが過ぎてゆく。

「ふひひっ……ワロス……ひぁあ~」

「長いわッ!!」

耐えかねたタイヨウが思わず声を張る。

「びっくりしたッ!」

大人しく待っていたレイリーは、その声に驚き身体を跳ねさせていた。

「せっかちな男はモテないよ…… 昼も、夜もね……ねぇお嬢さん」

フヒヒっと意味深に笑うがレイリーにその意味は理解出来なかった。

「んー?晩御飯の事かな?」

「そそそ、それで?!何が分かったんですか?!」

タイヨウはその意味を理解していたようで、レイリーに余計な事を悟られまいと結果を催促する。

「そうだねぇ……何から話すかねぇ

その前にあんた、そこのお嬢さんは一緒に聞いてても問題無いのかい?」

「ッ?!」

占い師のその言葉に、タイヨウは全てを把握されてると確信する。

「ふんふん、わかったわかった

やい、お嬢さんや」

タイヨウの後ろで話を聞いていたレイリーに声をかける占い師。

「はい?」

「少しの間外してくれんかね

ちょっと込み入った話になる……このちんちくりんの個人的な事だ」

レイリーは黙り込んで何かを考えている。

「ごめんな、レイリー

この話にだけ聞いたら、後は一緒に聞いて欲しいからちょっと待っててくれるか?」

少しの沈黙のあと

「……うん、じゃぁフーちゃんと遊んでるね

フーちゃん、行こっ」

フォッホー

「ごめんな」

レイリーはフー助を召喚し、道の反対側の街路樹の下まで離れて行った。


それを見届けた占い師が話を続けた。

「さて、率直に聞くよ……あんたこの世界の人間じゃないね」

「なっ?!」

「あたしにゃ隠さなくていいよ

他言はしないし、これをネタにどうこうなんて考えてないさ

ただ、これからの身の振り方くらいは助言させてもらうよ」

「は、はい」

「まずは、そうだね……あんたの一番気にしてる事だ

この世界に一緒に来たお嬢さん」

「そんな事までわかるんですか?!」

「占いババを舐めるんじゃないよ!っとそれより、そのお嬢さんは無事だよ

と言うより最近夢を見なかったかい?それはあんたと、お嬢さんの絆が生んだ奇跡だ

元気でやってる、それだけ分かればいいだろ?」

「ーーはいっ」

「何処にいるのかは教えないよっ、あんた達は巡り会う運命だ……これ以上は野暮ってもんさ」

「ありがとう、ございます」

少しの間を置いて再び話を続ける占い師。

タイヨウが話を飲み込むのを待っているようだった。

「あとは……あんたには加護が付いてるね

不運を跳ね返す、光の加護」

「光の……加護?」

「夢に出てたお嬢さんの感謝するんだね、あのお嬢さんがこの世界に求めたのはあんたに加護を与えること

それがあんたのチビドラゴンの背中に紋章として現れたのさ」

「アオイが俺に加護を……」

「ふんっ、甘すぎて砂糖を吐きたくなるね!

なんにせよ、あんたは不運じゃ死なない

それはこの世界がお嬢さんの願いに答えた結果だ、まったく……とんでもないバケモンさ、世界の理を変えちまうんだから」

「は、話が唐突すぎて……」

「さて、込み入った話はここまでだ、あっちにいる乙女を呼んできなっ」

「は、はいっ」

((ーーあっちにいる乙女を呼んできなっ))


街路樹の下で待つレイリーを呼びに駆け寄るタイヨウ。

しかし様子が少しおかしかった。

「おーい!レイリー!お待たせっ!」

「ーーッ!」

タイヨウの言葉に身体をビクつかせ黙りこくるレイリー。 「……ごめんね、ちょっと調子悪いからホテル……戻ってるね……」

「え?お、おい大丈夫か?確かに顔色悪いし……ホテルまで送ろうか?」

この時のタイヨウは、ただの体調不良としか考えられなかった。

「大丈夫……じゃぁ、ごめんね」

そう言うとレイリーは、弱々しくホテルに向かって歩いていった。

「あ、あぁ、気を付けてな……」


タイヨウはその場所でレイリーの姿が見えなくなるまで立っていた。もしレイリーが倒れようものなら、すぐに駆けつける為だ。

その後レイリーの姿は見えなくなり占い師の元へ戻るタイヨウ。

「あのお嬢さんどうしたんだい!」

「急に体調が悪くなった見たいでホテルに戻りました」

タイヨウの言葉を聞くやいなや、目を閉じて瞑想する占い師。

「ふむ……うむ、……むむ、むぅ」

「あ、あの……」

「今日はここまでだよ」

「えっ?!」

「どうせまたここに来る事になるさ!」

釈然としなかったが、どちらにせよレイリーを交えて話を聞きたいと思っていたタイヨウはそれを承諾する。

「わかりました……」

「じゃぁ10000シル出しな」

「えぇ?!」

「占いババを舐めるんじゃないよ!

あんたのつっかえを二つも外したんだ!安いもんだろう!」

突然の要求で驚きはしたものの、それ以上の価値があったのは確かだった。

「俺じゃ知りえない事ばかりだったからな……わかりました、ありがとうございます」

占い師に10000シルを支払い、それを受け取った占い師は最後にこう吐き捨てた。

「ふんっ、せいぜい大切にしてやんな!

乙女を泣かすも鳴かすもあんた次第だけどね!」

「ん?どうゆう意味だ?」

ふと気が付くと、今の今までそこに居た占い師の姿は消えていた。

「あれ?!居なくなってる?!

何者なんだあの人……」


タイヨウはそのまま立ち尽くしていた。

様々な事を頭に巡らせながらーー

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