ステータスとスキル
この世界に召喚され四日目の朝。ついに孵化した卵から生まれたのは黒い小さなドラゴンだった。
タイヨウにとって、この世界での本当のスタートになる。
「フーちゃん、キューちゃんおいでー」
フォッホー、キュイー♪
二匹はレイリーとタイヨウが腰掛けるベッドの上に来る。
「それにしてもドラゴンかぁ、とんでもないのが召喚されたねー」
「やっぱり珍しいのか?」
「珍しいなんてもんじゃないよっ!霊獣の活動が特に活発だった大探索時代でも滅多に居なかったっ書いてあったし、今の時代にドラゴンなんて……この街には居ないと思うよっ!」
「そうなのか……ドラゴンなのは嬉しいけど、目立つのを避けたい俺には派手すぎる霊獣だな」
「うん、だからあんまり外で遊ばせられないし、リングインしててもらうしか無いかな……」
キュー?
フォッホー
「やっぱりそうなるか……」
「っていうか『アストクリフ』は基本的に、あんまり霊獣を使役して生活しないから、珍しい霊獣には余計に騒ぎ立てると思うんだよね」
「アストクリフ、ってなんだ?」
「あ、えっとね……この『セルソフィア』はね、この世界の中心にある『リフリルの塔』を中心に東西南北で四つのグラウンドに分かれてるの」
「へぇ……今度調べてみなくちゃな」
「そだねっ、それでアタシ達が今いるのが東のアストクリフなんだよっ」
「なるほど、世界は広いって事はわかった」
「もーっ、あとね、アストクリフにはあんまり居ないけど
他のグラウンドには、人間以外の種族も居るんだよっ」 「まだまだ勉強しないとだめだな……」
「(勉強?)だからアストクリフじゃなければ、普通に外出してても割と平気だと思うんだよねっ」
「そうかぁ……」
タイヨウに出会ってからの数日間、記憶喪失と認識しているレイリーだったがタイヨウの言動を見ていると、色々と違和感を覚えていた。
「しばらくは図書資料館に通い詰めて、調べる事に時間を使いそうだな」
「ところでキミ、ステータス確認した?」
「ん……?あっ!俺の属性!」
「そっ!何が発現してるかなっ?それによってこれからのジョブも決めていかないとだからねっ!」
キュートの件ですっかり忘れてたが、それだけではなく昨晩確認したハードラックの④についても同時に見て見る事にした。
「じゃぁさっそく……リングオン」
ミソラ タイヨウ
レベル 2
体力 112
魔力 105
チカラ 75
防御力 60
スピード 55
知性 75
運 -501
特殊 ハードラック
属性 火(闇)
特殊 火事場の馬鹿力
特殊 闇の眷族
職種 不明
霊獣 ドラゴン
「おぉ……おぉ?!属性、火!! キタッ!しかも特殊スキル!……が二つ?!つかまた運が下がってる!」
「属性は火属性、特殊スキルが火事場の馬鹿力って事は
キューちゃんも火属性だろうけど、闇の眷族って特殊スキルは初めて見たよ……どうゆう事だろう」
「んーーわあーー訳分からん!」
「ねねっ、キミのステータスの隣に霊獣って項目あるからそっち開いて?」
「んー?あっ、これか?はいよっ」
ドラゴン
レベル 1
体力 100
魔力 250
チカラ 50
防御力 50
スピード 200
知性 100
運 -125
特殊 ハードラック
属性 火(闇)(光)
特殊 火事場の馬鹿力
特殊 闇の眷族
「なんだ?!」
「こんな事って……」
「キュートにもハードラックが?!」
「なにこれ……こんなの……霊獣に闇属性が付くなんて……」
「もしかして、俺達のハードラック追加効果、闇属性が主従属性一致して特殊スキルの闇の眷族が発動したのか?」
およそ前代未聞であろう事態に混乱する。
「確かにそれなら、説明はつくけど……霊獣に対してのハードラック発動なんて……霊獣に闇属性の付与……ダメだぁ~アタシの頭じゃ追いつかない……」
キュー? フォッホー…
当事者のキュートは頭の上にハテナを浮かべ首を傾げる。「と、とりあえず特殊スキルの効果を見てみようか……」
火事場の馬鹿力
マスター、霊獣共にピンチの時にステータスが一時的に大幅にアップする
闇の眷族
マスター、霊獣共に世界から魔獣と同じ存在として認識される
「ますますわからん」
「お手上げだねっ」
「でも今、気にするべきはキュートにもハードラックが発動してる事だな、そもそも霊獣って……、その、死ぬのか?」
「うん……、魔獣と近い存在だから属性攻撃とか魔獣からの攻撃で体力がゼロになると消えちゃう……」
「……なら、リングインしてれば俺より死ぬ確率は低いな」
「まぁ…うん、あれ?」
「どうした?」
「キューちゃんの背中に模様があるよ?」
「んん??ここだと見えないな……キュート、ちょっとおいで」
正面に座っていたキュートを膝の上に呼ぶ。
キュー?
ちょこんと膝の上に収まるキュート。
「キューちゃんごめね、ちょっと背中見せてねっ」
キュー♪
「ほんとだ、しかもこれ……卵の時に浮かび上がってた模様と同じだぞ」
「そうだね、なんだろう……」
「見た事あるような……あっ!」
「なになに?どしたの?」
「この模様……アオイの家の家紋だ……」
「アオイ?」
ピクッと反応するレイリーの声のトーンは少し下がっていた。それを感じたタイヨウは正直に話す。
「俺の……幼なじみだよ」
「幼なじみぃ……?」
片方の眉と口角をピクピクさせているレイリーだったが、ある事に気が付く。
「キミ……幼なじみが居るって事覚えてたの?それとも思い出したの?」
「えっ?!えっと……今!今思い出したんだっ」
「……そっか、良かったねっ」
少し乾いた笑顔を見せたレイリーにタイヨウは気付かない。
「そう、だな」
「それで、そのアオイ……さん?の……何?」
「えっと、家紋って言ってな、俺が暮らしてた場所は各家に先祖代々伝わる 家の紋章みたいのがあってだな……」
「ふーん、紋章じゃなくて家紋……そんな風習があるんだね、それでそのアオイさんの家紋がキューちゃんの背中にあるって事だね」
「そうなるな」
アオイの父の家系は神職家だったようでそれが何か関係してるのかと考えるタイヨウ。
「キミは何から何まで不思議だらけだね」
「……ごめんな、」
「まぁキミが謝る事じゃないよっ、ただ……なにか思い出し事とかあったらアタシにも教えて欲しいな
大した事出来ないけどキミのチカラになりたいからさ」
「わかった、ありがとうレイリー」
レイリー 「さて、分からない事は
山のようにあるけど、
まずキミのするべき事が一つあります!
ギルドに行って職業、つまりジョブを決めよう!」
「そう言えばステータスの職業欄は不明だったもんな……言ったら無職?」
「意味合いは違うけどねっ、火属性ならやっぱり剣士かなぁ……でもキミあんまりチカラないから……んー」
タイヨウの為に頭を悩ませるレイリー、そこに更なる追い討ちをかける。
「っと、その前にレイリーさん、もう一つ気になる事が……」
「えーっ、まだあるの?」
「スイマセン…、ほら、前に言ってたハードラックの項目④なんだけどさ、」
「キミの見間違いだったやつ?」
「あの時は消えてたけど、昨日の夜見てたらちゃんとあったんだよ、それで分からない文章だったんだけど…」
にわかに信じられない様子のレイリーだが
「んー、とりあえず見せて?」
「もしまた消えててもメモしたから平気だけど……あ、あったぞ!」
「どれどれー?」
④ 闇がエルクを示した時、カーサスの導きが闇を呪う
「うわぁ」
「ど、どうした?」
「古代文字だよコレ…、古すぎて何にも分からないっ」
「レイリーでも分からないとなると、図書資料館で探してみるしかないか…」
「この街の図書資料館にあればいいけど…」
「そんなに古い文字なのか?」
「グラウンドによって文化が違ったりするし、もしかしたら種族語かもしれない…探してみる価値はあるけど、期待は出来ないかなぁって」
恐らくこれだけ大きな街なら歴史や古代文字を専門に研究している人物はいるだろう。しかし
「やたらめったら他の人に聞くわけにもいかないし、とりあえず調べてみるか」
「そだねっ」
「じゃぁまずギルドに行って職業決めて、それから図書資料館に行こうか」
「りょーかいっ!」
タイヨウとキュートに発動した特殊スキル『闇の眷族』
さらにはハードラックの項目④、そしてキュートの背中にあるアオイの家の家紋。謎が謎を呼ぶ事になってしまったタイヨウ達は、果たして図書資料館で何か手掛かりが見つけられるのか。