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オーバーラップ  作者: ここたそ
はじまりのホイッスル
2/18

第2話

お時間あるとにでも、読んでいただければ幸いです。


「あっ…あの、ごめんなさい。」


さや沙は、バツが悪そうな表情を浮かべて一生達に目を向けた。



「今日、朝から鴨ネギ蕎麦の気分で過ごしてたんです。それでね、もう完璧、鴨ネギ蕎麦で頭の中、ガッチリと固まっちゃってて…。そしたら、急に鴨ネギ蕎麦ラストって聞こえてきたから…ビックリして…思わず声が…出たと言いますか…。」


さや沙の声のトーンが、話の終盤にかけて急に萎んでしまった。


恐らくは、初対面の相手に対し、熱く語っているのが急に恥ずかしくなったのであろう。



「あー…、いいっすよ。俺の鴨ネギ蕎麦、あなたに譲りますよ。」


「えっ?!いいんですか?」



ここで譲らなかったら、返ってこっちがバツが悪い。


現在、自分が置かれている状況を的確に判断し、一生はそう提案した。


まあ、何がなんでも鴨ネギ蕎麦を食べたかったわけでもあるまいし…。



「あっ!じゃあお礼に、わたしがあなたの分のお昼ご飯おごります!えっと…これでいいかな…親子丼一つお願いします!」



蕎麦屋に食べに来た相手に対し、なぜか親子丼を注文するさや沙に驚きを隠せず、


「何それ、天然?」


「えっ?」


ボソッと呟いた一生の言葉は耳に届いていなかったのか、さや沙は屈託のない笑顔を一生に向けた。



「まあ、立ち話もなんだし〜、こっち座ったら?」


会話が一旦折れたところで、智大がさや沙を同じテーブル席へと促した。


智大は、良くも悪くも、こんな風に他人との距離感が近い。



初対面の相手だろうがお構いなしに、距離を縮められるその術に、一生はまあ感心した。




こうして、一生、智大、さや沙の3人はテーブル卓につき、ランチを共にすることとなった。


「それで、お姉さん、名前は?なんて言うの?」


智大の問いに対し、口に含んでいた鴨ネギ蕎麦をしっかりと喉の奥まで運んでから、さや沙が答えた。



「浅野さや沙です。24歳です。あっ…と、そこのビルで働いてます。」



さや沙は窓越しに見える、高層ビル街を指差した。数多くのビルが立ち並ぶため、彼女の指の先がどのビルを示しているのかは、結局わからなかった。


彼女もまた、お昼休憩でこの店に足を運んだらしい。



「24歳かぁ〜、俺らの2学年下かあ〜いいねぇー!」


何がいいねぇー!だよ…そんな突っ込みを智大に入れることなく、淡々と自己紹介を続けた。


「黒崎一生です、同じく近くのビルで働いています。」


「俺もこいつと一緒の職場、真島智大です。」



さや沙は、それぞれに対し、こくんこくんと頷いた。



ちょうどその時、智大のスマホのバイブレーションが鳴り響いた。


画面に視線を落とした智大が「うげぇっ!」と声を張り上げた。



「どうした?」


「下山係長からメール。さっさと戻ってプレゼン資料仕上げろだとさ。」


やれやれと言った表情を浮かべ、智大は席を外した。



「と、いうことで俺は一足先に戻るから、後はごゆっくり〜!」


相変わらず、余計な一言を残し、智大は去っていった。



こんな調子であっても、誰からでも慕われるのは、智大の役得だ。


現に、何だかんだ言いながらも、下山係長の言いつけ通り社に戻ったりと、肝心なところを外さない。


一生は、そんな智大を、時折羨ましく思うことがあるのだ。



それはさて置き、ひょんなことからさや沙と2人っきりになってしまったこの今の状況をどうするか…。


ーーー久しぶりのミッションに、暫し一生は頭を悩ませた。







最後までお読みくださりありがとうございました!

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