プロローグ
あらすじを絶対に読んでください。あと、初書きですので至らぬ所も多いと思います。お目汚し申し訳ありません。
やあこんにちは。俺は一般的なサラリーマンである。あえて言うなら今限定でちょっとばかしテンションが高めな、サラリーマンである。ちなみに名前は橋山悠で年齢は35歳。中堅会社でコツコツ働き、頭が良いとは決して言えない俺だがそれなりに良い役職に就かせてもらっていると思っている。犬派猫派か問われれば断然犬派である。結婚は昨日からしていない事となった。つまりは、昨日、離婚してきた。
「みゆ〜俺の何が悪かったんだよおお〜」
「橋山しっかりしろよ…お前太ったか?重てぇんだよ…」
丁度今中学からの友人である最上浩光を呼び出し、離婚話について愚痴り続けやけ酒をした結果最上に介抱されているところである。正直やけ酒をしないとやってられないのだ。
「もがみぃ〜なんでみゆはでていったんだあ?なんで浮気なんかしてたんだぁ…?俺は、家に帰ってたつもりだし、みゆを寂しく、させてなかったのに〜」
「俺が知るかよ…ったく、今回ばかりは仕方ないと思ったがやっぱりお前は酒に弱すぎる、一緒に酔えねえとつまんねーなあ。もう俺を酒飲みに付き合わせんなよ橋山ぁ」
「今回は許してくれよ〜…だってみゆがあ…」
「あーはいはい分かった分かった!酒と俺で良ければ慰めてやるよ!とりあえずお前の家の方が近いしそこで飲みなおそうぜ、こんなに酔ってちゃ店の迷惑になっちまう」
「う〜っ助かるもがみぃ…」
「全体重を俺にかけるなバカ山!!!ほら支えてやるからとっとと歩け!」
最上はかなり口は悪い方だが何だかんだお願いすると俺の要望を通してくれるいい奴だ。良く見なくてもイケメンだし結婚もして可愛い娘さんもいる。こんなにいい奴が友達なのだ。俺はとても恵まれている。最上には日々感謝して生きていこう。
「もがみさまだ…ありがてえ、もがみさま…」
「本気でキモイからその呼び方と謎の思考回路止めろ!時々本気で意味わかんねーんだよ!」
「俺は最上のその暴言好きだからやめるなよ〜」
「俺は金輪際お前に暴言をはかないことにすると決めたぞ。ということでまず最初に慈しむ心を育もうと思う。最上よ俺が快く家まで連れていってやるから安心してくれよ、お姫様抱っこで連れていってやろう」
「アッかんべんしてください」
昔の中学時代を思い出すような下らない言い合いをして俺は段々酔いが冷めてくるのを感じた。丁度家の一番近くのコンビニ付近まで来ていたようだ。思ったよりも近くまで来ていたな。
「コンビニで酒買うか、何がいいかな」
最上は飲み直すためのお酒を買うのにコンビニに寄るらしい。
「やっぱビールだろ〜!あの味は欠かせないな!」
「まあビールは必須だな…おっ、この子新顔じゃないか?胸も申し分ないし可愛いな…」
「相変わらず好きだなあ〜!奥さんにバレても知らねーぞ!」
昔からグラビア雑誌には目がないグラビア大好き男最上は迷わずコンビニによく見るあのコーナーへ一直線していき食入るように雑誌を見ている。悲しき男の性か素晴らしき男の性か。さてどちらなのやら。
相変わらずな最上を見て少し情けないような気分になって最上から視線を外すと俺はガラス窓に光る何かを見つけた。それはどんどん大きくなっていく。それと同時に車の音も、おおきく、
「最上っ!!!!!!」
酔った頭では理解しきれなかった。ただとにかくやばいと思った。俺はとっさに“後ろ“へ逃げるのではなく“前“へ出た。なぜか昔から俺は反射神経ととっさの直感に関しては誰にも負けたことがなかったのである。だからこれこそが、最も、正しい行動であったのだ、と強がりなどなく言える。言い切れるのだ、そうだ、そうなのだ。だから泣くな、泣かないでくれ
「最上…」
「橋山、お前!しっかりしろよ!なんで庇った!馬鹿が!ふざけんな!くそ、なんで、橋山、おい…」
理由はよく分からないが車がコンビニに突っ込んできたらしい。丁度その先に居た最上を突き飛ばして俺がその車に轢かれた、というのが今の状況である。強く跳ね飛ばされただけなら良かったのかもしれないが、前からは車に強く押され後ろからはコンビニの商品棚が壁となって2つから挟まれて正直なところ俺の体は大分やばい状況らしい。ここまで来ると痛いやら熱いやらよく分からない。ただ泣きながら最上がこっちを見ている。罵倒をしている。俺が庇ったのが気に食わないのだろう。
「最上、みゆが出ていって、ヤケになった、わけじゃない…ただ、先に、気付いたのが俺で、助けたいやつが前に、居ただけだ…気にする、な」
「うるさい!!喋るな!くそ、そんなの分かってる!分かってるんだ、諦めるなよ橋山、救急車はすぐ来る、だから頼む、お願いだ、庇われてお前に死なれるなんて俺はまっぴらゴメンだぞ!!死ぬなよ!!」
まあ確かに友人に庇われて自分だけ生き残るのは辛いが、とっさに体が動いたもんは仕方ない。だが医療に疎くとも今の俺の状況はかなりやばいのは分かる。下半身がどうなってるのか俺は全く分からないのだ。まあ感覚が無い。それに先程から喋ろうとすると口からこぼれる血が邪魔してくる。これはやばい。貧血どころの話じゃないな。
「最上、頼むから、気にやまないで、くれ…俺は多分、もう無理だ、だが俺に、申し訳なく、思うな、感謝してくれ」
「諦めるなよ、頼むから…なんで感謝なんぞしなきゃいけねーんだ馬鹿野郎…」
「は、はは…流石最上だな、こんな時でも、罵倒は忘れてない…お前に、気にやまれてちゃ、俺が地縛霊に、なりかねんからな…天国に、行かせてくれよ…」
「…くそ、なんだよそれ…地縛霊とかよお…」
最上はやっと少し笑ってくれた。本気で地縛霊とかになりたくないから言ったのだが気が楽になったなら良かった。確実に俺は死ぬだろう。もう、意識が、
「おい、橋山?橋山っおい!!!」
最上が呼びかけてくれているのは分かるがもう口を動かす元気もない、もう、これまでか。最上、最後にやけ酒に付き合ってくれてありがとうな。本当ならジジイになるまでお前と馬鹿やりたかったよ。父さんも母さんも先に死んじまう親不孝者で悪いな、あの2人なら最上を責めないだろう。馬鹿な奴だと泣いて落ち込んだりするかなあ、するだろうなあ…。弟の拓真にそこは任せよう、あいつは立ち直りは早いはずだからな。
みゆに捨てられたが俺は何だかんだ人に恵まれてたなあ。いい人生だったよ、本当に。
そこで俺の、橋山悠としての意識は完全に途絶えた。